前回のブログで、先月の2週間9開庁日における名古屋簡易裁判所の労働関係訴訟の件数を調べてみた、というお話をしました。
あまりにも衝撃的な数値をみてしまったのでちょっともったいぶってみたのですが、予想してみた皆さまいかがだったでしょう?
で、上記期間の訴訟の件数は2件です。
9開庁日で、たったの2件ということです。
過払い金返還請求訴訟は佃煮にするほどあったため、数える気にもならなかったのですが、件数比で少なくとも100対1~200対1の差がありそうです。というわけで。
転業のごあいさつ
これまで労働紛争が専門だった当事務所ですが、明日からは生命保険に関するコンサルティングを基本に、旅行FPすずきしんたろう事務所として再出発します。長らくのご愛顧ありがとうございました。
ってわけにもいかないし…さてこの惨状、どうしたもんなんでしょうね?
ちなみに同期間における名古屋地裁での労働関係訴訟、こちらは労働審判の件数が不明(開廷表に掲載されないため)ので通常訴訟のみですが、こちらは1開庁日平均2件弱、9開庁日で十数件はあることがわかっています。
とにかく名古屋簡裁にゃ仕事がない、これが結論(苦笑)。
思えばこれまで各回の東京出張時に東京簡裁で開廷表をチェックしたかぎりでは、同簡裁でも労働関係訴訟の件数は1日2~4件程度が普通だという感触ではありました。東京都23区の人口870万人に対して名古屋簡裁の管内人口約250万人、ならば名古屋簡裁でも1日1件弱の件数があって、9開庁日調べれば数件~10件程度の事例が収集できるのではないか、と思ってはじめたこの調査、見事にハズレたというわけです。
ところで今日のブログのタイトルにもありますように、この事務所は平成15年8月1日、僕が社会保険労務士として登録を受けたことで誕生しました。司法書士としての登録は翌年3月まで伸びたので、一応今日が創立記念日、ということになっています。創業時点では月に1件以上あった不動産登記の仕事は一昨年から昨年にかけてどんどん減少し、売上としては期待しないほうがいい、という状態まで凋落したのに対して労働関係の裁判事務の仕事は微増しながら、なんとかこの事務所は本業ベースでは『月末のお家賃が支払える』というところまでは持ってこれました。
つまり、ほぼ労働紛争専業、しかも依頼の経路はほぼインターネットから、という形態の司法書士事務所は普通に成立するもんだと呑気に考えていた(だってここに成立してるんだから)し、労働紛争専業の事務所が成り立つ以上、債務整理でも成年後見でもない他分野(たとえば不動産賃貸借や物損交通事故や個人間の金銭貸借)でも成り立つと思っていた…のですが、自分が調べた調査の結果をみるかぎりそうではない、と判断しないといけません。
そういえばなんだか変だよなぁ、とうすうす思ってはいたのです。
- 代書人制度の発足から130年も経ってるのに、みんながやってる分野でない裁判事務の特定分野をものすごく専門的にやりこんでる同業者さんがいる、という話しが全然聞こえてこないこと。
- 毎月当事務所の労働裁判事務統計をまとめていて、この事務所はどうみても関東から関西までで均等に依頼を集めてるようにしか見えないこと。
- そして名古屋を含む地方都市で訴訟を起こすと、労●弁護団にいらっしゃる諸先生方がときおり被告会社側で顔をお見せになること。あれも法的サービスの需給や事務所の経営やいろんなものに影響される均衡状態として、あの状態で安定してるわけなんですね(微笑)。
では僕これからどうしましょう?というのがそれ自体非常に重要な課題になってきます。
何かに絶望して廃業宣言、というのにはちょっと早そうです。
それを安易にやってしまうと今でも当ブログを読んで下さっている解決済みの労働紛争のお客さまが失望しそうな気はします。
ですのでさしあたってはこの形態の事務所を維持するつもりなんですが、何かよっぽど凄い事務所運営体制とマーケティング手法を持たないかぎり、司法書士事務所で裁判事務特定分野の専門化は無理だ、という認識でいたほうがいいようです。経営基盤をほかの仕事(まぁ、債務整理でも不動産登記でも)で確立しておいて儲からない仕事をしたければする、という立場にとどまるか、地方中小都市で頑張っておられる同業者さんのように『依頼が来れば手広く受ける』がその手広さゆえに単一分野での経験の蓄積は望めない、という実情のまま、というところでしょうか。貧困ビジネスや不良労組と結託して法律扶助からお金を引っ張ってくる、という手法なら死ぬほど儲かりそうですが、もちろん論外にします…いずれそうした輩がでてくるとは思いますが。
ところで、先月の同業者団体の会報で裁判事務の業務の報酬について触れた投稿がありました。そこでは、その同業者さんが裁判事務の受託に際して全力で業務にあたるために望ましい、少なくとも5万円という金額と、それでは費用倒れしかねない依頼類型への対処の必要性について述べられており、もちろん確かに同意できるものなんですが…
なんだか、イヤだ(笑)
これは記事の内容が、という意味でもなければ投稿された方が、という意味でもなくて、たとえば10万円の残業代未払い事案を全力で処理するには報酬として少なくとも5万円は欲しい、と僕ならお客さまに言うのはイヤだ、という、非常に情緒的でな~んの根拠もない個人的見解に過ぎません。
ですがその個人的見解を世に問うことができるのが小規模零細事務所のいいところであるはずですので、労働紛争解決支援に関する費用の案内を一つつくって公開してみました。
少なくともこの分野だけはもう、着手金の最低額を設けるのをやめてしまおう、ということで報酬額基準等に関する他のページも逐次修正をかけていくことにします。今回公開したページに書いた扱いをかんたんに言うと、労働紛争に関する裁判事務では書類の枚数で計算する報酬額と請求額や回収額に対する料率で計算した報酬額の、常に安い方を採用する、そのことでお客さまには支払いやすい金額をめざす、というもの。ある特定分野において十分な経験を積み、その結果として依頼人から取りたい報酬の最低額が十分に下がるなら、こうした手法での対処も可能なのではないか、と考えています。もちろん、どんな業務にもこの態度を取ったらきっと労務倒産します。
ところで今回、そのページを作って公開したのには上記の同業者さんの論考に啓発されたのと、もう一つきっかけがあります。
先月労働相談をやっていていつも通りに報酬体系を説明していたところ、この事務所では本案訴訟で訴訟代理の着手金を1回取ったら、関連する仮差押や債権差押の申し立て書類作成時に報酬を取らない、とにかく給料を取り立てるために手続きを行う以上、実際にお金を取るまでは完全勝訴したって成功報酬は取らないんだ、と言った時に、お客さまにひどく驚かれました。ここでふと気づいたのです。
- いつもいつも同じように説明してるよな僕は、と。
- いつもいつも同じように驚かれてるなそこで、と。
で、改めてウェブサイト各所を見たときに気づいたのです。そうした説明をするページが存在しない!
よりによって当事務所最大の注力分野で存在しない!
ということに。
…あらためて思ったんですが、よくこれでやってこれましたね。
最後に僕と面識のある同業者の皆さまと労働紛争のお客さまには、ちょっと予想をしてもらいましょうか。この事務所が3年後、どうなっているのかと、3年後の名古屋簡裁の労働関係訴訟の事件数を。
楽しみではありますね。皆さまにはあらためまして、今後ともよろしくおひきまわしください。この事務所の存続を希望されるお客さまには、ときどき相続登記なんかをご紹介いただけるとなおよいです(笑)
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