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憲法など無きものと思え(上告理由としては)

久しぶりに、新しいご依頼の受付を停めておりました。
提出の遅れが絶対不可な裁判書類作成の仕事がありまして。
そんなときに限って三世代分まとめて出せる相続登記の申請や厚さ6cm分の裁判書類の閲読複写や受託実績のない申立ての準備に関する資料のとりまとめが入ってくるのです。数ヶ月前にやった登記の後始末とか仕事出すから取りに来いという市外の銀行や期日5日前なのに答弁書出さない弁護士の件にも一応の対応をせねばなりません。

さらに。
先月末から補助者さまは長めな病休をとっておられたのです。
このようなことをなさらなくても彼女のありがたみは感じているのに(苦笑)

補助者さまのいない11月、というブログが書けそうな不在がようやく明けた出勤日。玄関を開けると。

Dsc_0535

補助者さまが、だるまさんを抱えて立っています。
まず、だるまさんと目が合いました(゜◇゜)ガーン

快気祝いの受け取り、あるいは先月の新潟出張で買ってきたお土産とのプレゼント交換、といったやりとりを経て片目のだるまさんを冷蔵庫の上に安置します。

こういう状況ならダルマをあしらったヱビスビールの箱、置いておこうかな…
今日はそんな話しです。

先月から今月初めまで取り組んでいたのは、上告理由書と上告受理申立て理由書作成のご依頼でした。

このご依頼が当事務所で第一審・控訴審を終えられたお客さまから来るのは創業以来初めてです。

理由です。まず控訴審で負ける、ということが、よく考えたら少ない。
次に表題の件。我が国民事訴訟は地裁高裁最高裁の三審制、などと言いますが半分ウソだと経験者には思えるはずです。

統計上、控訴審は7割程度が第一審の判決を維持してしかも第一回期日で終わります。

そして上告審に至るには上告または上告受理の申立てをせねばならず、統計上これらが受理される可能性は絶望的に低いのです。

さらに上告できる理由は民事訴訟法で決まっており、考えられる主な理由としては控訴審判決に憲法違反に該当する法解釈がある、などの何点かに限定されており、新たな事実を主張するようなことはできません。

さらにさらに、僕は司法書士に過ぎないので。
上告にあたって独自の憲法論を振りかざす、などという贅沢も当然できません。書面に書けるのは依頼人が指定したことに限られます。

そんな実情があったため昨年まで一件も受託実績がなかった上告関連の申立て書類作成、実はこの夏にご依頼がありました。

これは控訴審までを別の職業代理人に依頼していた人がどうしてもやってみたい、ということで当事務所にたどり着かれた案件。
これ絶対負けるけどいいよね?いいよね?いいんだよね?ね?ね?ね?とにかく憲法違反にこじつけるだけだからね?と意思と方針を確認して受託し、依頼人が送ってきた原稿を編集してまぁ一応カタチにはした、というご依頼はあったのです。

よりわかりやすく当時の経緯を言いますと。
依頼人作成の文案は提出から●分以内にゴミ箱に送られそうな品質だったのでその旨はっきり伝え、当事務所に依頼すればゴミ箱に送られるまでの時間が●時間程度のびるであろう、でも提出から半年か長くても8ヶ月で却下されるからな、これは法的判断じゃなく統計結果の解説だぞ、といった程度の説明を行って受託に至った案件はあったのです。

まぁ僕にいくらか払って書類を整序させることで、上告受理申立ての却下まで何ヶ月か時間が稼げればいい、という状況はあり得ますから。

で、今回のご依頼は第一審から僕が書類を作ってきた案件。
残念ながら地裁高裁と連敗を重ねてきましたがお客さまとの信頼関係が維持されていて、上告に伴う印紙代も出してくださる、というのです。

というわけで。上告可能な要件をおさらいします。

原判決には憲法違反があるあるあると主張して玉砕、というのは実によくあるパターンです。
受理される確率1%以下、ということでこれを試みるのは普通の民事紛争では馬鹿げています。

法律に従って裁判所を構成しないとか(控訴審を合議体で開かなかったとかそういう想定でしょうか?)、口頭弁論を公開しないとか、そういう一応法治国家な我が国ではあり得ない上告理由も考えてはいけません。ムリ。

僕が依頼人にそういう法的判断を出していいかどうかはさておいて(厳密には不可です。内心で上記のような認識は持ってないといけませんが)上記のように言える状況です。

一つだけ、イケそうな上告理由が残っています。ほんとうに一番最後の条文に残っているのです。

民事訴訟法第312条2項に6項目ある上告理由の6つめ、第6号では『判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。』これを採りたいのです。

ただ、これはあくまでも第一審判決と控訴審判決の事実認定がまるごと正しい想定で主張せねばなりません。
自分が主張したい事実の存在を原判決が認めていないから(自分の主張と)判決の理由が食い違う、などと言うのもよくあるこじつけ、と世に公開されている上告理由書たちを見て感じさせられました。

これもダメ。BGMにドナドナを流しながら屠殺場に行く荷車に乗っかるのと同じくらい悲しいことになります。

あくまでも第一審判決と控訴審判決における事実認定法的判断が正しい想定で、両判決を丹念に読み比べます…腹立たしいけど。

本当に食い違っているのではないか、と思える箇所がまず一カ所、食い違っていると指摘したら言い訳に何日か困りそうな箇所がもう一カ所、さらに。ある主張について、当事者双方が全く主張していないのに主張したと書かれている箇所が一カ所出てきました。

ひょっとしたら田舎の高裁って適当に書面読んでる気もしてきましたがそれはさておいて、これらを盛り込む書面が作れます。

作れます、というのは僕が作れるということと、『お客さまと判決の読み合わせを丁寧にすることでお客さま自身も論理的に変だと気づくことができる。このため最終的にはお客さまの指定に基づいて僕が=司法書士が上告理由書を作成できる』という法律上の制限も満たせるわけです。

少なくとも依頼人がなすべき検討作業の範囲が確定している=第一審控訴審の判決が存在している、それに基づいて何かすればいい(可能性がある)、という点で理由不備は憲法違反なんかよりずっと真っ当な上告理由になり得る、というのはまぁ司法書士事務所が何かの間違いで上告理由書作成を受けるときの留意点かもしれません。

これを端的に言うと、表題のとおり、です(゜◇゜)ガーン

そして今回ほんとうに、憲法に全く言及しない上告理由書と上告受理申立て理由書ができました。

この結論が出るのはたぶん来年、梅雨明けぐらいだと思うのです。

それまで写真のだるまさんを置いておくつもりなのですが、写真右側の扉は玄関から面談時にも使う執務室の間にあるのです。
これを見た他の依頼人にどう説明するかは、まだ考えておりません。

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