所有者不明土地調査における電話帳の利用(明日のお酒が美味しいと今日きまったわけ)
某市の林務関係部署から所有者不明森林の調査を直接受託するようになって、もう3年目になります。
報酬額が県内の公共嘱託登記司法書士協会のお値段で決まる、そんな単価契約です。このため同協会が頑張ってくださるとそれに連動して僕の受託報酬も上がってしまう♪ということで公嘱協会に入ってないのに同協会の偉大さを知らされているところです。もちろんそんなことは協会の偉いさんたちは知らないに決まってますし僕は今後も公嘱協会には入りませんが。
そんな業務の性質上、調査対象者は発見できないこともできることもあるのですが今回は成果が挙がりそう、という状況になりました。表題の件。
以下は一般的な調査技法のはなしです。
森林経営管理法にいうところの所有者不明森林に関する所有者の調査手法はまことにチャラいのです。
一般的には登記上の住所氏名への意向調査の実施(宛先不明で返送)、さらに住民票(除票含む)の請求、またはこの住所を一応の本籍地と仮定しての戸籍事項証明書の請求、といった調査を試みます。
そして公的な書類としてはこの程度のものしか使わず、該当がでなければ調査不能としてしまうのが一般的です。
…あほくさ(わらうところ 鼻で)
とまでは林野庁ご一行様が後ろで聞いてる研修でも言い切る度胸はないのですが、僕は別の手法でも調査しています、という程度にはお話ししています。そうすると見つかるからね、と。
そうした手法の一つとして、今回は過去の電話帳を用いました。
とはいえ調査の出発点はやっぱり登記上の住所&氏名の組み合わせです。登記原因日付は読み取れますので、まずその時期の電話帳を図書館で閲覧して該当する住所氏名電話番号の組み合わせを発見します。不動産取得者が電話契約者と同じとは限らないので、名字と住所が同じものは候補になります。
さらに過去の住宅地図があれば、登記上の住所が実は集合住宅の所在地!といった場合も巻末に添付されている居住者一覧(集合ポストにおける氏名の掲示状況。ご時勢の関係で、昔のものほど充実した表示になっている)を参照して号室番号まで特定できたりします。
固定電話の番号は昭和のある時期以降(正確な時期は把握していません…調べればわかるのでしょうけど)、同一の市外局番の区域内で転居しても同じ番号が使えます。つまり契約者に対して一意の番号が付与されたことになり、同姓同名の人がいても相続で契約が承継されても追跡可能になります。
で、時には同一市内で複数回の転居があったりします。
つまり登記上の住所氏名で住民票除票を請求しても、順当に蹴られるパターンです。
さらに。
電話帳の記載で追跡できた住所の変遷が、今回は少し気になったのです。具体的には申しませんが。
そこで今回は、『最後に電話帳から見いだされた住所の、一つ前の住所』で住民票除票の請求をかけてみました。当然ながら登記上の住所ではありません。
今日この結果が帰ってきました。
請求した住所は『前住所』として該当があり、住民票除票の発行を受けられたのです。
ここから教訓を見いだすことができます。住民票や除票には、現住所や死亡当時の住所のほかに、一つ前の住所も記載されています。
市町村によって対応が違う(たまに、前々住所の記載がある住民票を見かける)のかもしれませんが、発行請求書に記載した住所が住民票では『前住所』にあたるデータであっても、該当があればあまり揉めずに住民票や除票の発行を受けられる一方、『前の前の住所や、さらにその前の住所』では発行不能になる=電子化された住民票に記載されず、おそらく役場の中のシステムで検索してもヒットしない、と考えるのが妥当だ、と思えます。
そうすると。調査対象者のデータとして与えられる登記上の住所氏名から『現在の、または死亡時の住所』や『その一つ前の住所』までを結びつけられそうなデータで一般的に入手可能なものがあるとしたら…過去の電話帳が唯一どこでも期待できるものだ、ということにならざるをえません。
ただ、『一般的に』というのは
『最悪でも国会図書館に行けば』という意味なんですが(゜◇゜)ガーン
とりあえず僕はこの案件を調査不能にせずに済み、つまり同市の税金を無駄に使わずに済むことになり、この案件とは全く関係ないけど明日の行政書士さんとの会食に備えて今日はお酒を飲まずにいるところなのです。
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