片足をひたしてみるマイクと音声編集の沼 中編
大揉めな裁判事務のしごとで使うクラウド型音声反訳サービス(Notta)、数年前に発売された電話会議用スピーカーフォンで録った音源と十数年前に買ったICレコーダーの音源を比べたら後者のほうがいいことに気づいた、酒の勢いでちょっといいUSBマイクを調達してみたものの、やっぱりICレコーダーの音源のほうがよいように思えてしまった、さあどうしよう、どうやら僕は表題のとおりの沼に片足をつけたらしい、というお話の続きです。
ところで世の中はゴールデンウィークだと重々自覚しているのですが、まさに上記の沼に踏み込むきっかけになった大揉めな訴訟で作る書類は第一次文案提示を4月30日、納期を5月7日、とする契約を締結しておりまして。想定作業時間30時間報酬上限税別18万円として契約したところ実作業時間が本職補助者合計70時間を超えてしまいまして(報酬上限設定特約がかかっているため、僕の報酬はもう増えないのです)。
灰色だよ
そんな黄金週間の狭間に、ブログを書ける程度に手が空きました。
当初の問題意識。
今後も必ず、Nottaを使った相談や陳述書作成のための聴取、尋問演習を文字化する需要はある、と考えたのです。
したがって、この録音内容の反訳=文字化の精度に直結する良好な録音は実現したい、と考えたのです。
そのために1万円から2万円の予算をマイクに割くことにし、まずオーディオテクニカのAT2020シリーズのUSBマイクでコケた、のです。これが前回までのあらすじです。
このマイクを運用して気づいたこと。ゲーム実況などの動画配信者からの好意的なレビューに注目して導入した機材ではありましたが、単一指向性である点を少々甘くみておりました。
当事務所では、まだ来訪者との対人距離を1.5メートルほど開けて相談等にあたっているのです。この距離を開けて向かい合う、その真ん中にこのマイクを置く、という運用にはそもそも適さない(指向性の高い範囲の両端に音源があることになる)とわかりました。
それと、本機はどんな音も平等に高感度に拾うものである=広範囲にフラットな周波数特性を持っている、それがウリだ、ということだったようです。ですので一人でのゲーム実況や音楽演奏の録音に使い、その音源を動画配信ソフトや音声編集ソフトで処理すればなるほど綺麗な声が撮れる、ということは理解しました。
参考になったのはこの、いかにもそれらしいルックスの男性が嬉々としてゲーム実況における音声品質の重要さと配信ソフトの設定を説く動画でありました。僕のところではまだOBSを導入していないので、この動画で解説していた手順でAudacityのエフェクトを付与していったところ、なるほど効果はある、ただし狭い部屋は部屋鳴りが残るほか、若干ながら声がボワボワした感じである、と思えたのです。
-部屋鳴りとかボワボワ(を、イコライザをいじってなんとかする)などと口にした時点で僕はさらに深く沼にはまっていた、らしいのです-
ついでにもう一つ告白しますと。
マイクや音声録音の基礎知識をgoogleであれこれ調べたところ、しばしば現れたのは僕が司法書士開業してからかなり早い時期に、九州にある2つの簡易裁判所に書類を提出することになったあの会社、のウェブサイトでした。
決してこの会社の通販サイトから物やソフトを買ってはならぬ、ということでその点だけは守りましたが、いまでも当ブログを閲覧しているお客さまにはまぁちょっと笑ってやってくれ、と申し上げます。
AT2020シリーズは相応の編集をかければ高音質の音が撮れる、それは理解したのですが元々は『PCにUSBケーブル刺しゃ適当に使える程度の設備であること』を理想としていたのです。
僕もゲーム実況の人の動画を何時間も見て音声録音の品質向上を目指したいとは思っていません。
今となってはきっちりそうなった、などとは認めたくないものですが。
とにかくAT2020シリーズは僕が用いるものではない、これはきっと、依頼と依頼人ごとに当たり外れが大きすぎる代書人のようなものだ、ということで。転売差損2000円ほど発生しましたが、本機は早々に放出を決定いたしました。自分の技量や態度を棚に上げてこの製品に星一つのレビューをあげて喜ぶような愚劣かつ反社会的なことは当然しません。そのようなことは人として、してはならないのです(と、googleマップに投じられたいくつかのレビューを意識して言ってみる)。
さて。Amazonを眺めなおします。
運用簡単、実売価格1万円台、音声録音向け、そんなUSBマイクがあるとしたら…と。
もう一つ、ブランドにはこだわらない、という条件をつけたところにちょっと個性的な、でも理屈では納得できる製品が発見できました。
聞いたこともないメーカー、それどころかどう見たって全く同じ製品が関連性不明な二つのブランドで売られているそのマイクは、8個のマイクから構成されるマイクロホンアレイとAIを用いたノイズキャンセリング機能を実装している、のだとか。
画像左側:https://amzn.to/3UGFbw0
画像右側:https://amzn.to/3UHPlg8
で、☆一つのレビューには気になる、というより看過できないことが書いてあります。
- 最初は大丈夫だが数十分するとロボ見たいな声になり、酷くなると聞き取り不可レベルになる
- マイクを接続して数十分程度で音質がゴミになり「ロボットの声みたい」と通話相手に言われる
…当たり外れの激しい何かに惹かれる悪癖を自覚せずにはいられませんが、これがよさそうには思えたのです。理想的に機能するならば。
PCにつないでみた分には普通に動作します。ノイズキャンセリングの機能には好感が持てました。
ところで本機には、本体側面にリセットスイッチが装備されています。
ふつうのUSBマイクには必要でない装置が、ついているのです。このことの重要性、というより陥穽に気づくべきだ、という展開に当然なるのです。
本品到着の翌日、ちょうど2時間の相談がありました。さっそく投入してみたところ、NottaではICレコーダーを用いたときより少し良好な反訳精度を示したのです。これでようやく、Nottaによるリアルタイム録音+文字化に対応できる機材が手に入った、つもりでした。
その翌日。今回の大揉めな事案の打ち合わせがありました。前日に引き続いて投入してみたところ。
開始後1時間33分を過ぎたあたりで音質がゴミになりました。
簡単にいえば僕も依頼人も、ロボットの声になっています。
録音そのものはバックアップとして運用していたICレコーダーで実行していましたのでこの破綻は業務に影響を及ぼしません。
むしろブログの記事を一回増やして、次回に続きます。
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