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(それでも)裁判書類の添削のご依頼をお受けしています

当事務所にあってよその同業者事務所さんにない、いくつかの業務。

訴訟費用額確定処分の申立書作成もその一つですが(今年も2件ありました)、もう一つは裁判書類の添削です。

業法第3条1項5号=裁判所に提出する書類の作成に関する相談(であるから地裁家裁に出す書類についても相談対象となる、が法律相談に該当しないように凄い注意を要する)で可能なこの業務、具体的には依頼人が自分で作った訴状ほか各種裁判書類に僕が手を入れてなんとか提出可能にする、というものです。基本的な法的主張と事実関係は依頼人が作成した文案に載っており、僕はこれを尊重すればいいため実は法律相談に踏み込みにくい、という面があったりします。

この業務を同業他事務所さんで扱わないのは事務所経営上、まことに賢明な判断です。
儲からず、面倒で、しかも危険だから。

●儲からないのは当然です。
この業務の依頼人はそもそも自分で書類を作ることによって費用の節約を目指しているのです。つまり費用面では他士業ではなく依頼人と競合しており、投じた時間なりに利益があがる報酬設定にすれば直ちに依頼がなくなります。

面倒で危険、というのが当事務所でだけ発生する特殊事情なのかどうかは不明です。
残念ながら当事務所に持ち込まれる通常訴訟と労働審判(こちらの意図を妨害してくる相手がいて、それを排除できなければ負けるタイプの手続き)では経験上、8割以上の依頼人作成文案は『原案では、裁判所に受理されることさえ不可能』な水準です。題名は訴状になっているけれど、請求の趣旨に余計な記載があってその記載と訴訟物の価額が対応していなくって、請求の原因を読んでも何が起きてどうなったか不明、そういう文案を携えて皆さんやってくるわけです。

●これらを指摘しつつ直すのは、僕が訴状を作るより面倒なのです。
もちろんそれ自体は受けいれ可能なのです。僕にとっては=当事務所では。

ではあっても危険は残るではないか、というのは補助者さまからのご指摘です。
この業務、依頼人との関係が悪くなる可能性が特に高い点に特徴があります。

言い換えます。

  • 依頼人は『これで訴状が出来たぞ!』という認識でいます。
  • 僕はそれをみて『これは提出してはいけないものだ』という内心でいます。

…不吉な予言をした予言者や凶報を伝えた伝令がそれを聞いた人から殺される故事をいくつか思い出してしまうのですよ(苦笑)

本宮ひろ志の漫画『赤龍王』は秦帝国の崩壊・項羽と劉邦の角逐を描いています。
その後半で、始皇帝の死を隠蔽して秦帝国を事実上乗っ取った宦官趙高の行動を…各地で起きた秦への反乱と反乱軍の侵攻を首都咸陽に告げにきた伝令を、片っ端から殺害していた描写を思い起こしてしまうのです。

今にして思えば、昭和時代の漫画では切られた首が宙を舞い血しぶきが飛び散るようなページが載っていてもよかったらしいのです。

報告を正確にする組織人は短命に終わることがあるらしい、
と床屋の待合室で教えられた子供時代でしたが
それはさておいて。

つまり、依頼人にとって信じたくないことを伝えるのが裁判所ではなく僕になりまして。
その結果依頼人の恨みが僕に向くのです(゚◇゚)ガーン

●ここで依頼人が作った裁判書類の添削は、危険な業務になります。
あくまで一般論ですが、文章が意味不明だったり法的主張に根拠を欠いていたり、そんな手直しの必要が大きい文案を持ってくる方ほど自分の紛争に関する思い入れが強いようです。正当性の主張や自己顕示欲や他罰性向が気になるな、と思える案件も日常的に見かけます。

有償の業務として文案を検討しそういう問題箇所の是正を求める=依頼人からカネ取った上に不愉快にさせる、そんな立場に立つ僕は、業界団体に対する苦情や紛議調停懲戒請求などの不祥事につながる可能性に常にさらされる、ともいえます。

以上のとおり、この業務が法的に可能でも。
世の同業者さん&上位互換な他士業さんたちが対応しないことはもう凄く適切、としかいいようがありません。

だからだと思うのですが、このご依頼は大部分が他県からくるのです。

…その県の業界団体、わりと本人訴訟に注力してるって言ってますし連合会でそういうこと言ってる役付の人もいますし業界誌にもそんな人が出てきますが…

違うんですか?
などと依頼人に聞くこともあるのですが(一昨日もありましたが)。

どうも実情は違う、当該業界団体の常設相談や個別の事務所の相談はそうではない、らしいのです。

主たる業務は登記だ、訴訟じゃない、と相談希望者に言ってのけた常設相談機関も他県にはあるようです(゚◇゚)ガーン

で、表題の件。

そういう事実関係があることを確認してしまうと…
当事務所が創業20年経ってなお全然儲からない(その代わりに、補助者さまからは一定の評価を得ているらしい)重要な理由となっている発言に至るのです。

じゃぁ依頼を受けるよ、と(゚◇゚)ガーン


こうした説明を直接されることは大なり小なり依頼人にはショックなわけで(上記のように認識されてタライ回しされた結果、数十キロから数百キロ遠くにある愛知県名古屋市所在の当事務所まで流れ着きました、ということになるので)、信頼関係が構築できたところを見計らってそっと打ち明けるより、先にブログでこういう話しをしておいたほうがいいように思っているところなのです。

僕はここ数年、本人訴訟を否定的に評価する弁護士さんたちの主張にも見るべきところがある、と考えるようになりました。
負けて当然な訴訟や反訴を起こして見当違いな主張を読めない書類に書いてきて期日では不規則なことをいい続けて和解も拒否して裁判官の訴訟指揮がちょっと間違ったらいちいち謝罪を求めたり忌避の申立を出したりしてでも実質的な訴訟活動は無いも同然のまま敗訴まで粘るようなことをされてもとにかく迷惑だし、業務として相手側に着いたってだけでこっちを懲戒請求してくるのはどうにかならんのか…いろんな媒体に出てくる寄稿論考不満戯言を総合するとそんな主張なんですが。

今となってはそうした弁護士さんたちの言い分はそれぞれごもっともだ、個別具体的には僕も同情する、としか言いようがないのです。

集団として見た弁護士さんのうち、当事務所で担当する案件に限れば相手側代理人の過半数が準備書面提出の締め切りを守らない=約束なんて破るためにある、と彼らが本当は考えているし彼らも相当なレベルで依頼を選んでる、つまり少額案件を中心に大規模かつ継続的なタライ回し運動に参加してることは、ここでは脇においておきます。おいておきます。彼らが民事訴訟において、本人訴訟とは全く別種の迷惑を及ぼしている、なんて考えてもいけない、ということにします本稿でだけは(遠い目)

ともかく弁護士側の本人訴訟否定論にも五分の理はあります。ここでの五分は100分の5、ですが。

このように考えると。
単に権利として、あるいは費用面で妥当な選択として、本人訴訟を漫然と推奨するような同業者の主張(なぜか関東関西所在の事務所のウェブサイトで増えてる気がする)にも与することはできない、と考えています。

そうではあっても、または、そうだから、かもしれませんが。

当事務所には今後も裁判書類添削・編集のサービスを置いておこう、と思っているところです。

周りに迷惑をかけない範囲で自分で訴訟をやってみる、それくらいの多様性は世の中にあってしかるべきだ、と思うから。

依頼人が言うところの正義や人助けには共感できないけれど、そういう主張が整序され適切な審理を経た結果ほんの少しでも認められることがあるならば、それを通じて僕も世の中も考え方が変わるかもしれない、という程度には僕も思考の柔軟さを維持していたいから。

基本的にはこのサービス、労働紛争労働側では標準1時間3千~6千円、その他の案件では1時間6千~1万2千円の作業時間単価を定めてタイムチャージ制でご依頼をお受けしています。重篤な問題を起こしている方向けには2万4千円、という上限を定めていますがまだこの単価の適用実績はありません。

ここ数年で『慰謝料の請求をするもの』は単価高めにしています。
これははっきり言うと、依頼人の考え方に同意できない案件が多いからです。その事実関係で慰謝料100万円は無理無理無理!それどころか10万だって無理!!とは地裁案件では言えないので(事務所で運用する判例検索サービスから原告敗訴の裁判例をそっとお出しすることはしています。参考として)、これについては若干ながら依頼制限的に振る舞っているところです。

ではありますが。

先日来た慰謝料請求訴訟の添削案件、文案は添削案件としては平均的なレベルです。
つまり添削作業の終了時期が見切れないほどの指摘箇所があります。

他県の方ではありましたが、やりとりを電話とメールに限定するより一度事務所に来てもらったほうがいいな、と思えたのです。

とりあえず初回の相談は2時間5千円とするので来所されたい、と依頼人に要請したあとで気づいたのです。

Skypeでなら、2時間の相談で6千円×2時間分を
もらってよかったじゃん、と(゚◇゚)ガーン

裁判書類の添削、本当は好きでやってるんじゃないか、というのは邪推です。たぶん。

 

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