公式な森林所有者探索フローの脇で(電話帳記載の住所情報の変遷に関する備忘)
少しずつ少しずつではありますが、県市町村から直接ご依頼をいただく山林関係の仕事が増えてきました。
今は報酬の発生に至っていない、という問い合わせについても自治体担当者さんが示してきた案件が興味深い場合は関与しています。
無料で(笑)ではありますがこれは特別と考えましょう。少なくとも一般顧客誘致目的の無料相談で消耗させられるよりよほど有意義な知見を僕のほうでも集積できます。僕のほうでもこうした事実上の行政協力をおこなうことで、行政の裏側を見られる価値があるのです。
…貴県じゃ守秘義務ってのはどうなってんですか?
などと聞いたりはしないようにしています(遠い目)
さてこの手の案件、規模がでかくなって怪しいコンサル会社が間に挟まったりすると大抵ロクでもないことになる=オブラートにくるんで言えば税金というものの使い方について考えさせられる(全件そうなるかそうなる可能性を見る)のです。一方、自治体担当者さんと僕とで直接やりとりできる契約形態の場合はそうした理不尽を目にすることが少なく、安心して仕事していられます。
そんなことやったって公費の無駄だよ、
と電話口で担当者さんに説教して
依頼回避した案件はいくつかあります(遠い目)
そんな継続的案件の一つが表題の件。意向調査協定締結林地台帳整備組合解散などなど、とにかくいろんな理由で『森林所有者の探索』を試みたい、というニーズが市町村林政担当者さんたちに発生しています。財源は最近SNSでバズッた(炎上した?)らしい森林環境譲与税、という構造。
…業界団体や公嘱協会、頑張って各市町村に食い込めばいいのにね…と思ったりするのですが僕もそこまで会の偉い人とつながりはありません。
で、僕は公嘱協会が決めたお値段にしたがって直接ご依頼をうけることができています…年度が替わって公嘱協会の価格も上がったために協会に所属してない僕の報酬も自動的に賃上げされてしまった(公嘱の価格でご依頼を受ける、というのが条件だから)、そんな案件があるのです。
まさか公嘱協会の偉大さを開業19年後に協会外で感じることができるとは思ってみませんでしたが。
主に土地台帳・登記簿記載の情報を起点とする森林所有者あるいはその相続人の調査に関しては、下記のチャラいフローが山林行政の管轄官庁から公開されています(出典:https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/keieikanri/attach/pdf/sinrinkeieikanriseido-23.pdf
)。
ご覧のとおり、どなたでもかんたんに所有者不明の結論を導けるフローが(冷笑)
もちろん当事務所でも、ご指定いただければそうした品質で調査する…いえ、調査を打ち切ることはできます。
そうではありますがこの調査方針部分は記録に残さず契約書に書かず電話口頭での合意だけで確認しておきたい部分ではあります。
上記のフローは言ってしまえばチャラっと調査し片っ端から所有者不明を宣言し次から次へと強制的な権利設定=所有者からみれば剥奪、に向かうことを可能にするものなので怪しいコンサルが取り組む調査には最適です。
過払いばっかりやって大きくなった体の大きさを持て余し気味な大規模弁護士司法書士法人、なんかが受託するにも大変よろしいであろう、とも思えます。
僕が好きなのはもちろん、そうでない場合です。
森林所有者の調査はするが、できるだけちゃんと探していい、時間は若干かかっていい、費用は自制する、そうした振る舞いをする旨の合意がなりたっている案件があるのです。その市の人はまぁよかったネ、ということになるでしょうか。
で、そんな調査のある局面でどうしても過去の電話帳が見たくなりました。一般化します。
森林所有者調査の出発点として示されるのは主に土地台帳=『過去の一時点で不動産登記を経た、土地所有者の住所氏名』です。
当然ながら僕に調査が発注された以上、現時点でそこに調査対象者は住んでいません。
で、この国では平成26年以前の住民票データはあらかた捨てた♪根拠法に基づいて捨てたんだ文句あるか!という市町村が多いです。
ですので別にそうしたデータがあればそっちを使いたい、ということになります。
僕の見るところ、辛うじて世帯主について過去の記録をとどめるのが固定電話の電話帳、です。これは、都市によっては戦前、昭和40年代以降なら全国のものが国立国会図書館で閲覧可能状態にあり、僕は必要に応じて過去の住宅地図も併用します。住宅地図も昭和40年代以降のものが閲覧可能になってきます。ゼンリンとは別の発行体が単発で出していた、昭和30年代以前の名簿や地図を探すことは当然可能です。
そうした電話帳、森林所有者調査で重要なのは氏名と並んで住所の表記です。
より具体的には今回『住所のうち、部屋番号』が調査の出発点たる不動産登記データに載ってない、そんな案件がありました。
ちなみに、敷地権化済みなそのマンションの居室数、100戸超(゚◇゚)ガーン
各居室について片っ端から登記情報の請求かけて請求1件あたり千数百円の加算をせしめる、などということは当然やってはならないのです。別の調査も試みましたが奏功しません。
仕方がないのでこの案件、調査不能を宣言するまえに東京出張のタスクに載せました。
で、期せずして僕は昭和50~60年代の埼玉県の個人別電話帳の閲覧請求を乱打し、住所の記載の変遷をみることになったのです。
今回見たかった『集合住宅に住んでいる人の、居室番号』は昭和50年代後半まで表示されません。
※さらに前=昭和40年代は、番地も表示されません
ひょっとしたら地区によって異なるのかもしれませんが、昭和58年あたりに出た版から居室の番号が表示される、という事例を確認することになりました。
それと。この電話帳調査は随意契約に付随するオマケとして実施した、という認識なので報酬を発注者に請求することはないのですが『作業やった記録』は出したいと思っておりました。
で、国会図書館の複写担当者さんに聞いてみたのです。「複写申し込み書の控えを貰えますか?」と。前々から気になっていたのですが、同館の即日複写申込書は一部が控えになっているように思えます。
控えではなく複写申込書のコピーは、複写資料と同時に無料で貰える、ということを確認しまして。
作業やった感を演出するために、この申込書コピーも送って作業終了、といたしました。
登記簿の記載を出発点とする現在の所有者・相続人の調査は、自治体からの随意契約でも当然お受けしますが一般の個人・団体の方からもご依頼をお受けしています。ただし職務上請求書の使用は、法律で許容される調査目的があると確認できた場合のみ行います。
…市から発注された業務を丸投げ、いえ下請け、ではなく適切な基準に基づいて再委託、できるかという質問もありましたが、それは今後も『イヤだ』と回答させていただきます(笑)
自治体さんの場合は同県内の公嘱協会=公共嘱託登記司法書士協会さんの報酬額設定に従うのが価格決定の根拠としてわかりやすいようですが、調整を求めることがあります。なぜか公嘱の報酬体系に、『登記上の所有者の調査に、別の登記簿データを使わない』前提で設定されたと思われるものがあり、ここは僕の調査方法と齟齬が生じるのです。僕のところでは登記簿図書館の名寄せ機能を所有者調査に多用している(上記のチャラい調査フローとは大きく異なる)ため、戸籍住民票データよりは登記データを所有者調査に活用していることになります。
一般の方からのご依頼については作業時間制または成功報酬制でお受けしています。
ご興味のある方は当事務所ウェブサイト備え付けのフォームからお問い合わせください。
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