反対尋問者に必要な要素に関する、依頼人からの指摘(東京出張2泊3日 2日目)
当事務所においても地裁通常訴訟での反対尋問対策を要する事案は多くないのです。せいぜい年に1~2件といったところ。
今回もそんな事案がありまして、東京までやってきました。
今日の打ち合わせはホテルの一室で10時半から始まり13時40分まで、14時45分から再開して…
お客さまが不思議なことを言い出したのです。表題の件。
反対尋問をする者には求められる要素がある、そうおっしゃるのです。
反対尋問者には優しさが必要だ、と。
執念深さ狡猾さ陰惨さ、サディズムフェチズムニヒリズム、じゃなかったんだー(遠い目)
冗談です。発言意図を伺いました。
※この時点で相手の発言に対する対処方法は一通りの説明と基礎演習が済んでいるとご理解ください
主尋問や、それに先行する陳述書の段階で敵性証人がどんなに事実に反することを言っていても、反対尋問者はそれをまず丁寧に最後まで聞き届けねばならないのだと理解した、そんなことをお客さまが言うのです。
そうしてようやく、さらに敵性証人がいうことがなんであれ、決してウソだと決めつけず、時にはそのウソらしき発言をさらに促進してしゃべらせるようにし、反対尋問の目標達成を目指さねばならぬのか、と。
そういう要素は優しさに他ならない、というようなことを言うのです。
…なるほど。考えてもみなかった。
ちなみに、この発言までに僕は以下のように説明しております。
太陽が西から昇るのをみた、という陳述が敵性証人からあっても、それをただちに否定する必要はありません。
ああそうなんですねわかりましたー(棒読み)と肯定したうえで
ならば伊豆半島から昇る朝日が相模湾や江ノ島を照らして美しかった様子をその証人に丁寧に丁寧にしゃべらせてあげればよく(←現在地は東京です)、そうやって敵性証人がウソの大伽藍を築き上げるのを手伝ってあげればよいのです、と。
そこに堂々たるウソが…第三者が決して信用できない物語が完成したのを鑑賞するのは尋問調書ができあがってからでよいではないか、決して昭和時代の時代劇ふうに綺麗な勧善懲悪的展開が1時間で終了することを期待してはならない、と。
そうやって僕が反対尋問者になったり敵性証人を演じたりするうちに、お客さまは独自によき反対尋問者とは何ぞや、という点への理解にたどり着いた、らしいのです。
これは僕も学ぶべきだ、と感じました。
直後の小休止のとき、僕も優しさを持って敵性証人の陳述書を読み返してみたのです。
そこに書かれていることはいったん真実だとして受け止め、そうしたらナニが起きたはずか、さらに説明していただくとしたらどこを聞けばよいか、と。
そうしたところが。
全く気づいていなかった事実を…権利の行使を妨げる事実を見いだすことになりました。
アタマが過熱するほどの議論をへて方針を転換することとなり、当初の想定を超過して20時前に打ち合わせが終了しました。
疲れはしましたが気分よく、一杯飲める店を探して歩きます。地下鉄の別路線の駅にあるアーケード街のたもとに、なぜか浜田港(ええ、島根です)の魚を売りにする店が目についたのです。
このあたりで接待に使えるお店も一つ増えて、今回も実りある出張になりました。
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