何かを踏みつけるとシアワセになれそうな反訳書作成のはなし(ちょっと意外な機材編)
この週末は林業雑誌への寄稿を準備しておりました。通常は3~4ヶ月周期で依頼される本件、おそらくはオトナの事情なのでしょうが2ヶ月連載のご注文をいただいていたのです。
そんな今週の凶事。中華プロジェクターが故障しました。
丸い黒いシミが画面左側で成長し、他の小さなシミを吸収合併しながら少しずつ移動しています。
3日後には画面右下にももう一個、仲間のシミが生まれました。
むかしむかし、Basicで作ったライフゲームを連想してしまいましたがこれは40代以上の、しかもコンピュータがお好きな方にしかご理解いただけないはずです。
いつもはこの投影画面を左右に分割して、右はテキストエディタ左はPDFその他の資料を表示しているところ、もうやりにくくてしょうがない(苦笑)
このプロジェクター、新品での導入から1年8ヶ月ほどしか経っておりません。調べたところ、液晶プロジェクターやノートPCの液晶パネルにこうした故障が出ることはあり、しかも中華プロジェクターの場合は1年弱で出る人もいる…言ってしまえばハズレ多めのクジ引き、ではあるらしいのです。
そんなこともあって、反訳書作成業務の話題を続けた今回は、最後に機材の話です。
複数の話者が録音なんか意識せず適当に言い合い、録音そのものもそのへんのスマホなど適当な機材と適当な環境でなされる、でもそれを文字化して提出しないと裁判所は証拠として採ってくれない、業者に出すと1分300~400円超の報酬を要求し依頼人自身がやろうとすると録音時間の10倍以上の時間投入を要する。そんなステキな裁判書類、反訳書。
もちろん素敵というのは皮肉です。
うっかり関与すると泥沼にはまる裁判書類作成業務の筆頭がこれだ、よって本件のみタイムチャージ制とする、とお客さまにも断言しています。
この作成をクラウド型の自動反訳サービスで行うと少しは不幸から遠ざかれそうだ、当事務所では一応Nottaを用いたい、という話の続き。
当事務所でも、昨年までは録音内容の反訳を完全にスタンドアロンなシステムで行っておりました。再生ソフトはこの世界ではおなじみのOkoshiyasu2を使い、キーボードに割り当てたショートカットキーで再生と停止と巻き戻しを定義して、聴き取った結果は表計算ソフトに入力していたのです。
これに対してNottaを使う場合は、ブラウザ経由で音声の再生と文字の編集ができます。あとは通信回線とPCの能力が十分であればいい。
見ているとHDDが律速段階になり、SSD搭載機はあまり影響を受けにくいように思えます。
うちのPCは全部SSDなんですが、HDD装備機を運用するお客さまがときに悪戦苦闘なさることがあるようで…必要なら費用をもらって介入するようにはしているところ。たぶん代書人と電器店は兼業できるのです(冗談)
で、本題。ブラウザ版Nottaにもショートカットキーが一応あります。カスタマイズはできないようです。再生/停止、3秒進む、3秒戻る、検索、この4動作はショートカットキーが決められています。このほかHomeで文頭、Endで文末へカーソルジャンプし、文中でEnterキーを押下すると文章が分離され、分離箇所に録音時間が表示されます。
反訳結果を例示します。冒頭にはNottaが付与する発言時間が示されています。
01:05
この労働契約ではバナナはおやつになりますよね。そうです。ならばバナナの規則は就業規則違反になりません。
上記の例で(←いったいどんな労働相談なんだろう)、『そうです』という部分は依頼人、これ以外の部分は代書人がしゃべっているのですが自動反訳サービスが認識を誤って1行にまとめてくることは結構あるのです。
このほか赤字の部分は誤認識箇所です。『なります』→『入ります』、『規則は』→『喫食は』と修正を要する、としましょうか。
※録音してるとわかってる話者は、変わった言葉を使わない・明朗にゆっくりしゃべる・できるだけ標準語を話す・自分から相手の会話に割り込まない、といった配慮をしたいものですが、そうすると『なんだか妙にお行儀のいいひと』になってしまいます。何年か前にそういう意識をして同業者さんと話した結果を補助者さまに反訳していただいたとき、彼女には見破られました(苦笑)
お話しを戻します。上記反訳例で編集作業としては、赤字の箇所周辺の再生停止巻き戻しをしつつ
- なり→入り との修正
- ますよね。|そうです。 の箇所で改行
- そうです。|ならば の箇所で改行
- 規則は→喫食は との修正
をサクサク行う必要があります。できるだけ停止や巻き戻しを減らし、他の再生箇所が正しく文字化されているのを見ながら編集作業をするのが時間短縮のコツです。
ここで、キーボードから手を離したくない、複雑なショートカットキーを押したくない、という発想がでてくるのです。
実は昨年末、中華な機材がもう一個壊れておりました。ペダル1個のUSB接続フットスイッチです。お値段千円ちょっとで5年は使ったでしょうか。
説明します。これは言ってみれば、マウスのボタンだけが足で踏めるスイッチになったもの、です。ボタンには希望のキーストローク(右クリックとかAlt+Ctrl+Delとか。『バナナハオヤツニハイラナイ』といった定型語句も可)を割り当てておくことができます。
このフットスイッチ、当事務所では図書館で借りてきた本1冊まるごとスキャンして電子化するのに使う重要機材なのです(みみっちい重要機材ではありますが)。フラットベッドスキャナに本を置いたあと、マウスに手を動かす時間が節約できます。で、これが壊れたのをきっかけに
国内メーカーが出してる、ちょっとお高いフットスイッチに買い換えておりました。今回は2ペダルを装備しています。
気がつけば電子化した図書が百冊を超えておりまして…本を買わずに済んだ差益をほんのちょっぴり投じたら買えた、ということです。
このペダルに普段は左クリックを割り当てていますが、反訳作業時は『Shift+Space』と『Enter』を割り当てます。
Nottaでは前者は再生・停止、後者は改行、つまりNottaが自動ではできなかった複数話者の分離に使います。
Enterはキー1回押下なんだから割り当てる必要ないか、とも思いましたが、ブラウザ版Nottaでは別の認識箇所を再生・確認中に別の箇所をマウスクリックしてカーソルを移動させ、改行その他の編集を行うことができます。そうすると、マウスに手を置いたままフットスイッチで改行を連打するのは悪くない、ということになりました。三秒巻き戻しのコマンドを割り当てるよりよさそうだったのです。
それと、漢字変換して修正した文字入力を確定させるときもEnterキーは使います。右と左のペダルを連打すれば入力確定→再生再開、を文字のキーから手を離さずに行えます。これでもう少し、作業速度が上がりました。
そうは言いつつも。
壊れたほうのフットスイッチの修復を終えました。二つのフットスイッチは全然別のメーカー製なので、別のキーを割りあてて計3つのペダルを利用できることになっています。
これで3秒巻き戻しのショートカットキーも、押さずに済むようになりました。
反訳書作成業務で幸せになれる気配はまだ気配だけですが、少なくとも不幸から遠ざかった、とはいえます。
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