人間用3万円、ペット用15万円という○○信託のふしぎ
僕から見ても変に思える同業者、というのは何人かいます。
ならば僕はどうか、というのは本稿では論じないこととさせてください。
そうした変な同業者の一人は僕が持ってる資格とおなじパターンのダブルライセンスで、ひところは企業支援で活動したりそのあとは家族信託®(←登録商標であることを明示しておくのは、例によって皮肉です)の腐朽いえ普及に尽力したり隠居したり、そんな方がおられたことは皆様ご記憶のことと思います。
あの人のご主張が凄かった、もっと言えば信託制度の普及に関連して害悪を及ぼしたのは、信託契約で定めた条項が民法の遺留分の規定に優越するかのような言論を(マイナーな業界誌とはいえ)商業誌で散々ばら撒いたことだと思っています。
一方で、これをきっちり粉砕する判決が出るちょっと前の2018年2月を最後に雑誌からはパッタリとその足跡を消していることが国会図書館OPACの検索結果からわかります。
ヤリ逃げ、という語を想起させ(苦笑)非常に興味深いところでもあります。
紛争あるいは訴訟の進行状況を見ながら寄稿可否を決めていたんじゃないか、などとゲスな勘ぐりをもしてしまいたい。
そんなこともあって家族信託®を標榜する一派に対しては眉毛に凄い唾をつけて眺めていたところではあるのです。上記のような主張を漫然と掲載し続けた○○○○ガイド別冊はカネ出して読むまでもないため国会図書館で定点観測してはいるものの、相変わらず○○書士と××書士と商標登録だけはしてある名称のアドバイザーから成る怪しげな楽園、という雰囲気は保たれている模様。
民事、のほうを標榜する諸先生方がどうお考えなのかは存じません、ということにしておきます(信託に限ったわけではありませんが、司法書士さんの関与の成果を依頼人の都合に応じて破壊するのは時として僕の仕事になります。したがいまして公式には=業界団体建物内と地裁家裁の庁舎内では、僕なんかとは面識がない、ということにしておいたほうがよろしいかと存じます。実は先月も一件、証人尋問の記録にしっかり残った事務所さんがありました。信託ではありません)が、とにかく用語として世間に広まっているのは家族信託®のほうらしいのです。
で、表題の件。最近の週刊誌、特に週刊現代と週刊ポストは競うように相続に関する特集を組んでいます。もはや特集ですら無くただの連載だ、という印象すら受けます。
そうした記事の想定読者層の年代は、確かにだいぶ高いらしい、ということはこれらの雑誌に載ってる官能小説の登場人物および語調からも明らかなのであります。
※冗談です
ただ、これらの特集の情報の質は徐々に下がりつつある気がしています。
専門家がちゃんと監修しなくなったというか、記事を使い回しているというか。手抜きの気配を感じるのです。当ブログの今日のネタはこれ。
週刊現代10月23・30日号にもこうした特集記事がありました。配偶者が認知症になったときには云々、ということで対処法として最も優れるのは家族信託®だ、といいたいらしいのです。引用。
『こうした事態(筆者注:配偶者の認知症発症による預金口座凍結)に備えるには、子供と家族信託契約を結んでおけばいい。公証役場で家族信託契約書を作成し、信託口座を作成する。公証人報酬の3万円ほどで作成できる』(43ページ)
ふーんなるほど家族信託®って3万円で組成できちゃうんだー(ものすごい棒読み&ものすごい遠い目)
記事は続きます。ここでは行政書士がコメントしています。
愛玩動物の飼養とその費用の保全に関して、さらに引用。
『ペット信託を利用するのもよいでしょう。飼い主がペットとその養育費を信託財産として受託者(知人や家族)と信託契約を結ぶのです。ほかに契約書作成の費用として15万円ほどの費用がかかります』(47ページ)
ふーんなるほど家族信託®では、人間さま用に信託を組成するよりお犬さま用のほうが高く付くんだー(冷笑)
なんかもうどうだっていいからそれでいいよ、という意思決定に誘引したいならこの記事でいいんだろう、とは思います。きっとそうではないはずです。
上記2件の情報は同じ特集記事のなかで提供されていることに誰か気づかなかったのでしょうか?
それとも本当に、ペット信託のほうが組成に高額な費用を要するのでしょうか?
そしてもし本当に信託組成の費用体系が、上記のようなものであるならば。
世にあれこれ生えている、信託契約組成(あるいはコンサルティング報酬でもアドバイザリーフィーでもいいですが)費用は財産額の1%ただし最低50万、とかいうあの専門士やらあのアドバイザーやらのウェブサイトは、一体なんなのでしょうか(怒)
もっともこの疑問に関しては、いつぞや離婚協議書作成に取り組んでいる行政書士さんとの会食で達した結論が参考になるかもしれません。
曰く、『実は離婚協議書の作成にちゃんと取り組んでる奴なんかそんなにいない。単にウェブサイトがあるだけだ』
今回もこの結論に座布団1枚分くらいの賛意を表したい、とは思っています。
まぁレディメードな信託条項案がいくつか公証役場に常備されていて適当な民事信託契約書が数万円で作成できる、という未来はなかなか悪くないとも思うのですが、そうであるならあるで信託受託者に課せられる義務の厳しい部分=財産の分別保管とか毎年の計算とか、そして何より誠実義務を一言も述べないのはコンテンツとして危険だ、禁書にして焼き払うべきだと僕は思ってしまうのです。
※禁書云々以降は冗談です。人の信託よりペットの信託のほうが費用が高い、という情報は娯楽としては読まれるべきでしょうから
ちなみに僕は、といいますと。
一冊だけある著書(2018年3月刊)のなかで民事信託を『委託者とその財産を囲い込んで長期に拘束するようにも設計でき、特に相続に関する部分で不利になる相続人たちと対立が発生する可能性がある』として弁護士への相談を推奨しておりました。
家族信託®を世に広めたい人からすればとってもイヤな言い方なのでしょうが…
同時期に注目を浴びてたあの同業者のこと、もちろん意識して書いてましたよ(笑)
でもなぁ。
今週末に福島県で入ってる出張相談、たぶん信託使うのがいいんだよなー
※ご同業の方には恐れいりますが、こういうオチでした。
実際に必要が発生しましたら、民事信託士の諸先生方にはご支援を仰ぐかもしれません。非公式なところでよろしくお願いします。
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