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本人訴訟の最果てで、人が強くなるところを、みた

安定しない依頼人、自由奔放な相手方、辛めな訴訟指揮の裁判官。

居酒屋で『代書人 秋の心配事三点盛り』を頼んだらそんな盛り合わせが出てきそうな事案が佳境を迎えておりました。

場所はヒミツな今日の宿の滞在は2泊目、日曜日に67kgあった体重は64kgを割っています。
当事務所には準備書面ダイエットというダイエット手法がありまして、ムリな日程で裁判書類を作る仕事をすると体重が落ちるのです(苦笑)

刑事民事併せて年間数百件の利用にとどまるはずのビデオリンク利用による遮蔽措置が採用されてしまった証人尋問を含め、10時半から17時までまる一日を裁判所で…主尋問と反対尋問で過ごし、どうにか危地を脱し、ひょっとしたら成果が挙がっており、さらに表題のなにかをみた、今日はそんな事案のはなしです。

この証人尋問、僕にはちょっとした敗北感がありました。
ビデオリンクによる遮へい措置の扱いは、相手方から希望→当方から反対の意見書提出→意見書不採用(がーん!)、という流れで実施が決まっていたのです。

これまでのお客さまからの報告では、なにやら裁判官の訴訟指揮が自分たちのほうに厳しいようだ(どうしてくれるんだ)、といったことを言われていた経緯もありまして。少々あるいは多々頭をかかえたこともあったのですが、この点は期日前に仮説をひとつ提示しておりました。

裁判所、たぶんビデオリンク設備の虫干しをしたいに違いない。秋だし天気もいいし。
でなければ●mazonとか●天で、機材を1個余計に買っちゃって会計検査院に言い訳しなきゃならないとか、そういう展開だ、きっと。

3割冗談7割本気で提示した可能性ではありますが、このたびの証人尋問では音声と書画カメラ画像のやりとりがそれぞれ複数回途切れ、証人の背後では青色の服を着た女のひと(もちろん職員)が行ったり来たりしており、証人がいる部屋と法廷との電話連絡が若干活発に行われていたことなどから…尋問後のほうが上記の可能性は高く思えているところです。

まぁビデオリンクのほうは当事務所にまた1つ経験が蓄積されたということで(書画カメラの解像度と撮影範囲がわかったのはよかったですよと虚勢をはってみたい)…本文冒頭の件。

聞いても聞いても情報提供が安定しない、前日に演習やってもやっぱり安定しない、蓄積されている記憶と出力される音声のあいだにrand関数が存在しているとしか思えない、そんな当事者が当方側にいたのです。

守秘義務に反しないことを言わせてもらえれば、この人のおかげで何度か徹夜した、陳述書の準備と陳述書の作成と尋問の演習と尋問事項書の作成と(以下略)そういう人が。

懸念とともに始まった主尋問はまぁ何箇所か僕が期待する回答(事前に何度か回答されたもののうち、バラツキがある出力のなかで最も望ましいものの1つ)と一致しなかった箇所があったのですが、それでもなんとか致命傷を負わずに終了できたのです。

自滅は免れたねこっちも、というくらいの感じで主尋問はクリアして。

とはいえ、この証言者に対する主尋問は当初はこちらの希望時間60分、これが裁判官から、時間が長いと一回蹴られ変更後の=正確にはリストラ後の尋問事項書(2)をもう一回蹴られて尋問事項書(3)が採用されて予定時間35分、という経過をたどっています。

主尋問は僕さえ苦労すれば尋問事項を調整できる、つまり依頼人が自滅から免れられる可能性は高まるわけですが、、反対尋問は当然そうはいきません。

今回は反対尋問者が弁護士ではないのです。つまり向こう側も本人訴訟、ということ。

いろいろと酷いことになるよな、という予想はしっかりと当たりました。

別の証言者に対する反対尋問では、証人席から証言者自身が異議を出し、それが片っ端から通っていく尋問がありました。なかなか見られないものだったと思います。

要するにそういう品質の尋問が相手からなされました、ということ。
予想していたので対策した、というだけですが。

傍聴席から見ていた僕の観測では、その証言者(当方側)に対する相手側からの反対尋問実施時に証言者が自分で出した異議は20分で十数件にわたり、その3分の2は採用された、そんな印象があります。

最後は裁判官、もう目線だけで異議に対応してた気配があります(笑)

こちらも向こうも本人訴訟である本件、こちらは当事者席に複数の人が座れます。ですので対応能力の高い人に弾幕を張ってもらうという表現がふさわしい=異議を派手に飛ばして他の証言者を守ってもらえます。そういう作戦を採りました。

そんな援護射撃に助けられつつ、失礼ながらよろよろと反対尋問に対処していたお客さまの態度が、反対尋問開始後20分ほどしたところからなにやら変わりだしたのです。

最初逃げ腰だったのが、受けて立つ感じに変貌したといいましょうか。

そうなると。上手ではない反対尋問はよくある『業界団体の研修で出てくる例=反対尋問しているつもりが、相手が主尋問で言いたかったことを補完してしまっている例』に変化します。なんと今回もそうなりました。

つまり僕が削った25分の主尋問時間は、向こうからの反対尋問によってほぼ補完された、と(わお!)

その方の反対尋問はラスト20分、聞けば聞くほど当方側証言者が雄弁に回答する、僕が望んだ以上の回答が出る、そんな展開になって終わったのです。

そんなことができるなら依頼当時からやってくれよ(笑)
というのは冗談ではなく心からの叫びだとして(苦笑)

そのお客さまの一番肝心な変化が、弁論終結ギリギリのタイミングで訪れたのを僕は見ることができたのです。

できれば主尋問のときに訪れてほしかったんだけどさ(苦笑)

ウェブサイトを熟読して訪れた志操堅固知識十分な依頼人と共に相手方弁護士に挑み、正々堂々巧緻の限りを尽くして勝利するのは、当事務所裁判書類作成業務のいちばんやりがいのある部分、ではあるのです。

今回の事案はその対極といいますか…最果て、というイメージを持ってはいたのです。
紹介でやってきた、ちょっとどうかなと思える依頼人と共に、かなりどうかなと思える相手方と対峙する双方本人訴訟、巧緻というより清掃作業兼廃品回収(ばら撒かれた邪魔なものをとりのけて、使える素材をもらってくる)みたいな反対尋問準備をおこなってきたものですから。

そうではありましたが、一番脆弱と見ていた証言者が訴訟の最後の20分だけ、強靱な証言者に変わったのを見た、ようなのです。

とは申しましてもその証言者のおかげで僕の仕事はとても増えており、実は月曜日から水曜日まで晩ご飯抜き睡眠2時間、という状況にあり、したがって今日は少し高い酒飲んで飯食って熟睡してもよかろう、ということで。

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最果て、をうたった梅酒を土産物売り場から仕入れてきました。

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