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非代理案件で用いるQRコード付き商業登記申請書作成代行に関する考察

当ブログにはここ15年間で2900件余の記事を公開していますが、商業登記に関するものは初めてかもしれません。なにしろカテゴリーにも、『不動産登記』は設けていますが商業登記はない(苦笑)

今年は創業以来初めて、年間の商業登記申請書類作成受託件数が4件に達することになった(まだ到達していない)ことでもありますし、商業登記の話題です。

同業者さんを呆れさせるか困惑させるであろう、表題の件。まずオンライン申請を常用されておられる諸先生方は読者層からはずれます。

書面申請に徹する古風な諸先生方も、実は読者層からはずれます。実はこの記事、同業者向けにはならないだろうと考えているところです。

さて、先頃受託した今年3件目の商業登記申請では、お客さまは管轄法務局と同じ区内に住んでおりました。

僕はその法務局から350kmほど離れたところに住んでおります。

原本還付を要する添付書類はなく、いくらなんでも(僕でも)補正にはなるまい、という申請類型。ただ、少し申請を急ぎたい、というご意向が示されています。

あと、僕のところでは登記申請にオンラインは使っていません。司法書士さん用の電子証明書、持ってません。

その点では僕も書面申請を旨とする一派に属するものの、コンピュータを扱うのは好きだ、というところにゆがみが生じています。そこで。

このご依頼、僕が代理してしまったら委任状の動きはお客さま→当事務所→法務局、という流れになります。

なら代理なんてしなきゃいい(暴論)

えぇ司法書士法第3条を久しぶりに眺めますと、同条第2項では『法務局に提出し、または提供する書類または電磁的記録(中略)を作成すること』が司法書士の業務として挙げられています。代理じゃなくて。

ちなみに登記供託の代理は第1項、ということでこれは普通の司法書士さんの関心順に並んでいる条文なのかもしれません。

紙の登記申請書も、登記申請に関しては電磁的記録も作っていい、ということを確認してさらに考えます。

司法書士さん用の電子証明書を持たずオンラインで登記申請しない僕でも、法務省謹製の申請用総合ソフトでQRコード付きの登記申請書を作れることは承知も活用もしています。

これは申請データを申請用総合ソフトから電子的に送ってしまい、でも電子署名は付与しない代わりに法務局にデータを送ったことがわかるQRコードの付与を受け、それと申請事項を印刷した登記申請書をオンラインではなく紙での申請の一種として提出する、というもの。法務局側ではQRコードの方を読んで送信済みのデータにアクセスし、たぶん登記申請の処理はオンライン申請(申請に供するデータは電磁的記録として法務局に送られている状態)と同様にやっていく、ということなのだろうと推測しています。

言ってしまえば法務局側は便利なんだろうねよかったね申請の処理もちょっとだけ速くなるかもね、というもの。

申請人側にはメリットがあるかどうかはさておきます。
同業者さんのなかにはちょっと辛辣なご意見をお書きのかたもいらっしゃるようです(笑)

このQRコード付き申請書、司法書士が登記申請を代理しない状況下で当該司法書士が付与されたアカウントから作成提出していいのかよくわからない面がありました。

ソフトとしては作成可能なのです。代理人欄を空白にし、申請人欄で代表者さんに会社印を押してもらえばよいわけですから。

司法書士法上も、条文上は問題ないことは確認できています。

あとは申請用総合ソフトと法務省様のオンラインシステムの利用に関する規約で、『他人の登記申請のために自分のアカウントを使わせてはならない/自分が申請人にならない登記申請書を作成してはならない』などといった規制がないかどうかですが…

ない、ようなのです。

より具体的にいいます。A株式会社が僕に目的変更の登記申請書の作成を依頼しました。僕は登記申請を代理せずにA株式会社(の代表者)が申請手続きを進める想定で、登記申請書と付属書類の作成のみを受託します。この際、登記申請書はQRコード付きのものを僕のアカウントで僕が作ってよい、ということです。

当然ながら、作った登記申請書の2ページ目には僕の職名を記して職印を押すことはするのです。アナログばんざーい(笑)

で、そうすると。

お客さま=会社代表者はそうした申請書一式を、あくまでも本人申請というかたちをとって法務局に持ち込みます。法務局は特になにかいうでもなくこれを受理します。

つまり、お客さまから当事務所への委任状の流れをカットできます。
僕が作成した(法務局へは送信済みの)登記申請書類をいきなりお客さまのところに送り、お客さまはそれを法務局にハンドキャリーすればいいわけです。

で、翌日。登記申請が完了になった旨のメールは、僕のところに入ってきます。お客さまが知るよりも早く。

※ちなみに、同時期の通常の商業登記完了予定日は申請提出から1週間後。ちょっと凄い処理速度ではありました。

この手続終了の連絡を僕が受けてはいけない、という規定も関連法令にはないので、あとはお客さまとの業務委託契約書に『申請完了および補正の指示は当事務所が受けることがあり、依頼人はそれに異議を唱えてはならない』といった文言を加えておけばこの問題も完全にクリアできる、ということになりましょう。

今回は商業登記での話ですが、不動産登記のほうでも全く同じ論理でQRコード付きの登記申請書の利用が、登記申請を代理しない案件でも可能、ということになるはずです。というより論理上、そうならねばなりません。

なんでこんなことをやって嬉しいのか、といいますと。

いま関わっている山林・林業界への相続登記義務化の影響の最小化を視野においています。上記のやり方が可能だと、たとえば森林組合が一つ申請用総合ソフトのアカウントをとっておけば組合員によるアカウントの使い回しは可能だ、ということになります。

ただし森林組合さんは登記申請書の作成代行は不可、あくまでも申請データは各組合員が森林組合備え付けのPCから入力することになりますが。

もう一つは、この申請を僕が=当事務所が受ける場合。なんらかのRPAのシステムと組み合わせたら相続登記申請書作成が1件5千円ぐらいで受けられるのではないか、と思ってしまったのです。先行する同様類似のサービスと同額かそれより安くでき、さらに司法書士事務所がサービス提供者なら依頼人のほうで支障が発生してもただちに相談なり書類作成なりで介入してしまえばよいわけで。

もう少し過激な言い方をすると、あの相続人申告登記(仮称)ってやつも申請データが申請用総合ソフトから送れるようになるはずだから、そうなったら一ロット最低100筆くらいでの受託を条件にして1件1000円、とかそういった価格設定にできないもんかな、と思っているところなのです。

そういう状況で受託する場合、いちいち電子証明なんて付与するのは作業行程として馬鹿臭い(申請の真偽や迅速さを争う人がいない場合、この工程は純粋に時間がかかるだけ=不要と思える。ならPythonで制御するロボットアームを使って紙の申請書に職印押させたほうがまだよさそう)、別の方法で本人確認さえちゃんとできていれば委任を受けるまでもない、と思えてしまうのです。

でもシステム上、代理はしない僕のところに申請完了のメールがくるなら、それはとっても丁度いい、ということになりそうな…気が、するのです。

以上、発想として未整理ですが技術的に代理するまでもない登記申請を迅速簡便大量に実行できるとしたら、特に添付書類の郵送が不可避な状況下においては、実はQRコード付登記申請書による紙申請の活用が最適なのではないか、というお話でした。

では最後にもう一度。

アナログばんざーい。印鑑ばんざーい(失笑)

 

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