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債権差押命令申立:2度目の補正指示のわけ

意味不明理解不能なローカルルールの使い手が蟠踞し、時に何の罪もない利用者に立ちはだかる謎の役所。この国が法治国家か否かについて時折クビをかしげたくなる場所。

裁判所はそういう役所だと思うのです。今日は少し、そういう話しです。

あの地裁本庁でだけやる金属探知や中のひとが他庁との違いを楽しんでるとしか思えない予納郵券額の違いは都度都度ブログのネタにさせてもらうとして(一般読者の皆さまには、この国では訴状を出すときに裁判所に納める郵便切手の金額や組み合わせが裁判所ごとに異なり同じ県内の裁判所でも異なり同じ庁舎内にある地裁と簡裁と家裁で異なり地方の支部に書類出すときにはもう電話で聞かなきゃわかんない、という素敵な実情のみお伝えします。ボディチェックのほうはさらに酷く、導入から5年も経たないうちに労働訴訟の当事者の女性が庁舎内で裁判官を襲ってケガさせた(尖らせた木の棒が武器でしたっけ?)のは知ってる人は知ってる話しです)。

要するにこの国の無意味なことのいくつかは僕が属する業界の周りにあるんですが、それはどんな業界でも同じだとして、今日の話題。

先日のこと。ある地裁本庁に、債権差押命令の申立書類を作って出したのです。隣県の地裁本庁はその前月まで平常運転=申し立て後の翌翌開庁日には発令していたのを別のお客さまから聞いており、少々油断がありました。今回提出した裁判所では週間単位の遅れが発生したとのことで、僕がお客さまに『もう補正がないから大丈夫です』と言ったずっと後になってお客さまに補正指示が転がり込みます。

曰く、当事者目録記載の第三債務者の郵便番号が違います、と(愕然)

えーと下4桁8600番台は事業所の郵便番号です、ということでその補正指示はパスし、担当者さんから次の疑問が呈されました。

なぜ判決主文第2項の金員のほうは判決記載の起算日から遅延損害金を記載しないんですか?と。

実は本件、利率が異なる2種類の請求が認容されておりました。判決主文第1項では10万円に対して年6%、第2項では3万円に対して年3%、とか。

さらに、一部のお金が自発的に支払われてもおりました。上記の例では遅延損害金の全額と、元本を1万円くらい減らせる程度の。

そうした支払いがあったのはわかるが、ならば遅延損害金の高い第1項のほうに全額が支払われたものとして(充当して)利率の低い主文第2項のほうには弁済があったものとしないのが妥当では?と担当者さんはいうのです。

なるほど、民法第488条4項2号では

全ての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。

としています。判決が出てる=全ての債務は弁済期にある、というより年単位の彼方に過ぎ去ったんで(苦笑)債務者のために弁済の利益が多いものは本件では『遅延損害金の高いもの』が該当する、と考えれば担当者さんの考え方になります。

それは承知してるんですが本件では、相手方が計算した遅延損害金額が示されていて、その計算には主文第1項・第2項とも遅延損害金額が計算してあるので、それに従いました。と答えます。

同条1項では

(略)弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。

としています。計算書を作って送ってきた以上、その計算書に従って充当する=支払ったことにすると読むべきなんだろう、と。

そうですねぇ、そんな書面が来てたんですか、と担当者さん、少し考えます。

だったらそれ請求債権目録に書いてくれませんか、と指示が降ってきました。
ローカルルール発動(笑)

脊髄反射でつぶやいたような文案が採用され(僕が法的判断をしたわけではなく、もう10年ほども前に札幌地裁に出したときの記載事項を思い出して口にしただけです。今回の提出先は南関東の裁判所ですが)、お客さまから裁判所へ連絡書をだした次の日(訂正申立書のまえに書面を出してくれれば訂正申立書の記載予定事項を事前チェックしてあげる、というありがたいローカルルールがここでも発動しています)。

補正指示がでました。

遅延損害金の計算が違います、1日分違うようです、と。

ああそれは相手方代理人が計算してきた…と説明しかけて、付け加えました。

でも間違ってるわけですね!
つまり訂正をこちらでする、と?

そうしてほしい、日数を1日プラスして計算すると正解が出るから、と担当者さんはいい、さらに付け加えます。

遅延損害金が多かったわけですから充当できる元本が減りますよね

がーん

僕の真情としては上記の一語で十分だと思います(涙)

裁判事務に興味の無い読者の皆さまには、これまで僕が作った書類4ページのうち1ページの訂正で済んだのが要修正箇所が2ページに拡大した、と考えてください。

僕とお客さまとの裁判書類作成業務委託契約の債務不履行率が25%から50%に上がった気にさせられます(苦笑)

僕は今回、相手方の代理人が一部弁済のときに作ってきた計算書が正しいとしてそのとおりに遅延損害金が払われたものと考え、遅延損害金として受け取ったのこりの金額は元本が減るものとして残りの元本と、一部弁済の日から債権差押命令申し立ての日までの遅延損害金を請求する書類を書いたわけです。

でも、支払われたお金の内訳として遅延損害金として受け取ることになる金額が増えれば、その分未払いということになる元本が増えるわけで。

ま、10円ちょっとなんだけど

お客さまが裁判所にファクス送るのには、1ページ50円かかるんだけど(泣)

文句があるなら相手方代理人に言ってやってください(なにしろ僕には代理権がありません)、とお客さまに伝えて、検算を続けます。

なるほど相手の代理人、支払いに際して主文第1項のほうの遅延損害金は初日算入とする一方、第2項のほうだけ初日不算入にして不正解をたたき出しておりました。

ちなみに僕はその計算書、主文第1項の日数計算だけ事前チェックして第2項のほうはチェックしなかったんです。

-つまり法律業界の間抜けが二人して裁判所と一般市民に面倒かけてるってわけか、などと納得しないでください-

で、その手抜きの結果は全面的に僕に返ってきた、と。
相手方代理人事務所の補助者(あっちの業界では本職のアシスタントを補助者って言わないんでしょうか)にも少しは僕の苦労を分けてあげたいんですが、あいにくそういうわけにはいきません。なにやら理不尽さを感じますが、金利の計算には強くなれた気もします。

3度目の正直で送った書面は無事に通り、今となってはめでたしめでたし、という話しでした。
この世界、自分も含めて誰も信じちゃいけないよ、という話しかもしれませんが。

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