さりげなく書き添えてあった地雷(の、ようなもの)とその回避に関する件
裁判書類の作成、いいようなわるいような言い方をすれば本人訴訟の支援という形態でご依頼を受けるとき、僕は僕と僕の事務所をこんなふうに紹介します。特に労働訴訟労働側の場合。
- これから行く世界の案内人としては業界平均を超える経験はありますし優秀だとも思います。
- ですが、基本的にご案内する先が地獄巡りという設定ですのであまり愉快な思いはできません(苦笑)
今日はそんなじご…いえ、労働者が労働訴訟の最後で通過した、小さな地雷原の話しです。
その訴訟で相手方社長には職業代理人がついておりました。いいようなわるいようなお方です。きらいではありません。
わるいような、とした理由を先に説明すると、この方は期日の最後の最後で追加の立証を出すような出さないようなそぶりを取りつつ実際には出さずに弁論終結とさせてしまいました。
…僕と僕のお客さまに無駄な準備を強いたと言えます(あ、僕はそれが仕事ですけどね)
いいような点もあるのです。この方は今回支払い義務が認められたお金の3分の2をある方法で我々が確実に受け取れるようにしておいてくださり、このたび残り約3分の1も社長から預かって支払ってくれる、と言ってこられたのです。
賢明なご判断とは言えるのでしょう。当事務所の売り上げは不動産への強制執行申立書類作成一回分、吹っ飛びました。
しかしながらこの連絡で端数を十何万円かカットしてくれないか、と書き添えてあったのは悪い点です。勝訴判決を確定させてしまった労働者にこの提案を呑ませるセールストークを僕は知りません。破産寸前というならいざしらず、政令指定都市に担保に入ってない不動産をお持ちだとこっちが知っている状況下では。
そして、こういうことを言ってしまった相手方代理人に対する信頼感を僕のお客さまに与えるセールストークも知りません。
というわけでこの提案はまず、即決でゴミ箱へ。
一週間後。端数も含めて遅延損害金も支払った、という連絡が入りました。
なら最初から端数カットなんて言わなきゃいいのです。問題はこの先です。
支払ったから受領確認書を送ってほしいという連絡が入っている、お客さまからそんな報告と書類のスキャンが送られてきました。
3行目に絶対受け入れられない文章が置いてありました。
これで未払い金の全額を受領しました。これで原告と被告には債権債務がないことを確認します…そんな文言が。
まて
この訴訟、原告全面勝訴の判決が確定しています。
そう、訴訟費用は全額が素敵な被告さんのご負担、そんな判決主文となっているのです。
提訴に際して納めた印紙代は1万円以上出した書証は66通以上…加算がかかる通数です。お客さまは出廷に新幹線を使われたこともあったり。
これで訴訟費用額確定処分を申し立てなきゃただのお人好しだろ?
…という士業の方が圧倒的少数派らしいのですが、当事務所はそういう事務所です。
なのにこのタイミングで債権債務なし、などと言われたらこの素敵な残務整理をやれずに終わってしまうではありませんか。
ひょっとしてこれ、全面敗訴になり遅延損害金一部カットも認められなかった相手方代理人が最後に仕掛けた地雷、なんでしょうか。
などと思っているのは我々下々の者だけででしょう。
実情として、請求額数百万円の訴訟を担当され自らの売り上げも一案件100万円を超える職業代理人の先生方はたかだか10万20万の訴訟費用なんかにこだわってない気もします。あの先生方から訴訟費用がどうこう、なんて話し聞いたことがない(苦笑)
とにかくこれに応じると、最後の最後に数日分の給料に匹敵する権利が吹っ飛ぶ、という作りになっているとしか読めない連絡書がやってきたのです。で、これもまたゴミ箱へ。
延々と訴訟を戦い抜いてようやく勝訴判決を確定させ、訴訟費用額確定処分の準備をやりに県外の裁判所に訴訟記録閲覧に行くのは、ある種の自分へのご褒美、という面を持っています。その楽しみを奪おうとは…許せぬ(冗談です)
まぁ今回は裁判所が遠すぎてその出張は無理ではあるものの、関連する別件で素敵な残務整理が待っています。
うまくいけば夏の青春18きっぷ利用可能期間内に、フェリーと組み合わせた旅ができそうな気がしています。
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