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残酷な編集者のテーゼ(または、ツンデレな代書人のアンチテーゼ)

正直に 150年 なんてムリ(苦笑)

…裁判事務に長く携わると自然にそう思えるはずです。当事務所もそんな事務所の1つです。本人訴訟の支援を主な仕事にしておいて言うのもなんですが、代理人をつけないで訴訟をする人のなかには無視できない割合で『ほんとうはそんなことをやらせてはいけないひと』が混じっています。人のことも自分のこともわからず説明もできない、そんな人。相手側にいてくれるなら順当に自滅するのを眺めていればよいわけですが、そうはいかないことがあります。当事務所では、裁判書類の添削をするサービスを持っているのです。

上記の本人訴訟不適なタイプの方を避ける最も確実な方法は問い合わせの段階で厳しめに回答を出すこと。これを耐えてくるなら当事務所のお客さまとしての本採用にまず一歩近づく、ということになっています。

先ごろやってきた問い合わせへの回答は意図的に厳しくしました。うっかり当事務所に問い合わせを送るとどうなるか、守秘義務に反しないよう一部を伏せ字にしてご覧ください。案件は少額訴訟の訴状添削を希望したもの、です。●●の部分には同じ文字が入るわけではありません。送信時には以下のような赤字や太字にはしていません…さすがにそれは残酷過ぎると自分でも思えます。


こんにちは。昨晩お送りいただした資料を一通り拝見しました。
 
 そのうえで申しますと、この訴訟が少額訴訟のまま終わることはまずないです。
 
 理由は2つあり、1つは請求と事実関係が複雑でありすぎ、それを反映して訴状本文が長すぎます。被告が通常移行を希望しなくても裁判所が職権で移行させると考えます。
 
-この箇所4文につき非公開-
 
 以上の点から少額訴訟を前提に書類添削に入っても無駄になります
 
 これを承知して依頼続行を希望される場合もそうでない場合も、いま訴状本文に記載されている●●経過部分をまるごと別の陳述書に移し、代わりに適切な要約を訴状中には3~4ページ置くことを検討してください。
 ごくごくわずかな可能性ですが、これで少しは事案を簡単に見せられることになります。
 
 または、●●的に適切な説明を加えて説明を再編成したうえで少額訴訟でなく通常訴訟にすることを検討してください。この場合は訴状本文の情報量は増大するかもしれません。
 私はこちらの方針がいいと考えますが、残念ながらその場合は自力で訴状が作れない、ということになるはずです。
 あえて残酷な言い方をすると、世の中年壮年男女(つまり裁判官)に●●●●などと言っても意味が理解できません。それを理解させることから始めなければなりません。それに対して●●●の経緯うんぬんは全く不要です。
 
 とりあえず、こうした作業が出来ましたらご依頼をお受けします。

 最後に、少額訴訟だから何らか簡単であって請求額を60万円に抑えればなんとかなる、という考えは直ちに捨ててください
 本件に直接は関係の無い、相手の悪いこと(●●や●●●●●●がどうこう)などという情報を伝えたら有利になる、という考え方もついでに捨ててください
 ※プロほどそんな情報に心を動かされることはない、と申し添えます。
 それで訴訟に勝てるわけではなく、本件では相手が本来なすべき●●をなしたかどうか・なすべきではない行為をしたかどうか、に関する説明が肝心ですが、訴状本文にそうした論考はほぼ含まれていない(●●●●に知識がない人に伝えていない)と考えました。
 もう少しわかりやすく言うと、原案では望ましい●●(またはその●●で実現を目指した理想的な状態)がどんなものか説明がないので、相手がやったことを列挙しても『なにがまずいのか=望ましいあり方からどれだけ逸脱しているか』が不明だ、ということです。

 この検討とメール起案には60分を要しました。ただちに報酬を請求することはありませんが、もし依頼続行を希望される際には有料の作業時間に含めます。

 以上、訴状案には好意的な印象をまったく持てませんでした。
 ただ、ご経験された事実を見る限りではなんとかしたいと思えますので上記の通り回答します。


当事務所では、たしかに裁判書類添削のサービスを維持提供してはいます。

ですが普段からこんな感じで残酷な編集者のテーゼを利用希望者たちにぶつけており、だからこそ今までもこれからも当事務所は儲からない零細事務所のままなわけですが、上記の回答にも最後の一行にだけアンチテーゼが入ってはいるのです。

伝わってるかどうかは不明ですしそう期待するものでもないんですが。

あと、この回答はまだ正式に依頼が無い=報酬もまったく支払われていない状況で発出されている、とお考えください。これで依頼受託に至らなければ僕はこのメールと、さらにもう一通のメールをタダで書いて終わる、ということになります。

この事務所のありようがあれこれ変わってきつつあることはこれまでにもいくらか書きました。
裁判事務については受託前の段階で、厳しめに対応していいかな、と思っているのです。

で、それでもご依頼をくださるという方に限っては存分に腕をふるったらよかろう、と。

先ごろ受付を停めて作成した裁判書類、文案を要する書類が50枚を超えました。一期日で提出したものです。当事務所報酬額基準により書類作成枚数で数えた場合の報酬額は30万円を超えます。これはあくまで計算上のもので、本件で実際にいただいているお金としては出張作業した日について1日1万円に満たない日当が手元に残ったのみ、です(わらうところ というより笑いすら枯れ果てるところ)

今はそれでもよかろう、と思える案件なわけですが、いろいろ納得して受けられるご依頼は決して多くはないのです。

何しろ裁判所ってところはなかなかひどい実情はありますので(相手方はウソつき放題なのにこちらは僕がウソの利用を不許可にしちゃう、ってルールがあると思っておいてください。僕は、特に地裁家裁の事件では司法書士としての制限に服して法的判断を自由に口にすることがない一方、事実関係は無制限に探索することで勝利を目指しますので、書証や現物のありようと記憶との不整合をめぐって相手より先にお客さまを詰めることがあります)、自分に都合のいい展開や対応だけ期待する方には早々に他事務所をお探しいただくことにするしそうでない方ならまぁなんとかしよう、と考えてはいるのです。

要約すると、お客さまを信じるだけではダメだ(必要に応じて試練に晒せ)、正直なだけでは150年経っても勝てぬ、そう考えるのがこの事務所です(苦笑)

以上のことから、残酷なのかツンデレなのかは問い合わせごとにひどく判断が分かれるであろう、と自覚はしています。

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