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スタートで力んだわりに安楽な結論になりそうな休眠抵当権抹消請求訴訟作業分析

「まぁ頑張って、読んでみて」

先日もらった告知書の件ではありません。
苦笑気味の嘱託さんから冒頭の言葉とともに先週、某法務支局で渡されたのはコンピュータ化に伴う閉鎖登記簿のさらに前、手書きの細かーい文字で被担保債権の弁済条件が書いてある、移記前の登記簿の謄本です。なるほど頑張って読んだら最後の弁済期が見つかりました。どうやら当初の抵当権者が存命中に被担保債権時効消滅となりそうで、この場合は(判決の取り方をミスらなければ)相続を原因とする抵当権移転の登記は実施の必要がなくなります。表題の件。

戦前に設定され平成を乗り切って令和の御代に至るまで、絶賛休眠中の抵当権の登記があります。
これを正攻法で消そう総費用は実費込み10万円だ、という企画です。

抵当権者の相続人なんか見つからないふりして供託する便法を使ってみたくなるし別件でそうなさった別の同業者さんも確かにいます。

でも万が一バレたら本当に業務停止確定なんで(←冗談じゃなく、今の僕がやると本会が法務局に上げる懲戒処分の量定意見で累犯加重されかねないんで)もう完全に正攻法でこの抵当権を抹消しようではないか、ということです。

…あ、半分冗談です。バレようがバレまいが正攻法で抹消すればよく、僕はそうするというだけのことです。

登記簿から読み取れる戦前の抵当権者の住所と氏名を『本籍と筆頭者』にして除籍謄本の請求を、つまり住民票の請求など最初っからせず戸籍からアプローチしたら順当に除籍謄本が取れてしまい、結果として相続人が全員見つかった、これが前回までのあらすじです。

例によって数値は変えます。見つかった相続人は4名、いずれも抵当権者の孫、としましょうか。このほか死亡した相続人が5名。

これだけのデータを得るためにどんな工程があるか、を列挙していきます。なんでしたら加工/運搬/検査/停滞に分けて分析しても結構です、というと司法書士さん達が読者層から軒並み脱落、社労士さん達が残ったりするでしょうがあくまでもこれは登記と裁判の話しです。

与えられたデータは、ある不動産の登記情報とその乙区欄にある抵当権設定登記の抵当権者の住所氏名です。

運搬=職務上請求用紙を役所の窓口にハンドキャリーすることは考えない想定にすると、工程は

加工1:最初の職務上請求用紙を書く(抵当権者の住所氏名を本籍筆頭者として除籍謄本を請求し、存在するならその抵当権者について出生から死亡までの除籍・原戸籍・現在戸籍・戸籍の付票を全部取る)

加工2:市区町村役場住民課の宛名を書き切手を貼り返信用封筒にも切手貼付・住所記入する

加工3:用紙と定額小為替を封入する

↓ (定額小為替の購入とポストへの運搬はお買い物等の際に実施することにして、時間数は無視)

検査1:返送されてきた除籍謄本類の記載を検討し、次の請求資料を決定する(相続人の戸籍記録など)

加工1~加工3~検査1を反復(次の請求対象者分)

戸籍記録収集完了・停滞

こんな感じになりましょうか。個々の作業は1件あたり

  1. 登記情報取得:1分
  2. オンラインによる登記事項証明書取得 上記に1分(決済に要する時間)を加える
  3. 封筒作成:2分
  4. 職務上請求用紙の記入:5分
  5. 請求の理由が多い場合 上記に2分を加える
  6. 戸籍または不動産登記記録の分析:1分
  7. 手書きの場合 上記に1分を加える

これくらいの時間で済むことがわかりました。

時間を食うのは職務上請求用紙です。複写式で手書き、控えを残しておく必要がありちゃんと残さないと非違行為になって綱紀事案になって行政処分を受けて、という可能性に気をつけねばなりません(何か楽しそうに書いてる、と思われた方々には気のせいだとお答えしておきます)。この用紙は請求対象者の住所や本籍地/世帯主や筆頭者、といった一般の請求でも書くような記載事項のほか、具体的な請求の理由を書くことになっています。これが『所有権移転登記(原因:相続)/提出先:○○地方法務局○○支局』程度であれば5分で書き切って職印を押捺、完成とできるのです。が。

請求の事由が『依頼人が譲渡された土地に、請求に係る者の父が抵当権者である抵当権設定登記がなされている。この抹消登記請求訴訟を提起するため抵当権者の相続人を調査する必要がある。提出先:○○簡易裁判所』なんて感じになるとアッという間に2分プラス、なのです。

…世の同業者さんたちが戸籍謄本類の請求代行について一件1000円の報酬を設定することは、かなり正しいということがわかりました。作業時間1時間あたりの基準単価を6千円とした場合にはそう言うことができます。これは暴利でないので非違行為にならず綱紀事案にならず行政処分にもなりません(楽しそうではありますがくどいのでこの辺でやめておきます)

今回は孫の代までの探索に7枚の職務上請求用紙を手書きした、とします。郵送で請求したものはありません。

したがって7分×7枚=49分 これに集まった合計17通分の戸籍記録の分析時間と、そのうち手書きの戸籍記録が7通来たための作業時間加算を加えると24分、仮に郵送でこの手続きをする場合の封筒作成時間は14分/実際に窓口にいた時間は累計35分(この部分、大都市だと絶望的に長いはずですが)、しめて87~108分で抵当権者の孫の代の相続人まで追い切れた、ということに今回はなりました。

もう少し考えてみます。時間のかかる作業工程は職務上請求用紙の手書きです。

この用紙、控えをとっておくことは義務化されていますが手書きしろとか綴りはバラバラにするな、とは定められていません。

ですので思い切って、綴りをバラすことにします。まずRearrange。

-工場勤務の方には、ECRSの話しです-

そうしてしまえばA4判より若干縦に長い(306mmの)紙なので、あとはプリンタに不定形用紙サイズを登録して表計算ソフトに入力用テンプレートをつくってしまえば、作業をSimplifyできることになります。

印影もスキャンして記名と同時に印刷できれば捺印作業がEliminateされるはずなんですがそうやったら捺印じゃなくなる(非違行為になる)ためこのカイゼンは不可、ということになるでしょう。やりません。

請求の事由に定型文を用意するところまでもってこれれば、1枚3分程度短縮できそうには思えています。

相続人とその住所がわかった、ということは検査ならぬ検討工程を経て法定相続分もわかった、ということです。

あとは訴状と訴訟提起前の連絡文書を起案します。次回以降の記事に続きます。


さて、前回前々回の記事には早速複数のお客さまから反響をいただきました。お気遣いありがとうございます。

まぁ前回記事への印象は自分が紛争当事者になった経験があるかないかで随分違ってくるとは思います。
金融機関がくれる登記や登録済貸金業者相手の債務整理に邁進しておられる方、反貧困を自称してるけど判決を取る訴訟なんかやってない方、労働紛争でも退職代行だけやる方(←非弁だと思う)からみれば僕、怪しいことばかりやってる不良書士でしょうね。そう見られることも仕方ありません。

薄っぺらい正義や正当性のみを主張して道を踏み外すことは今後もしないつもりですが、そこから遠ざかろうとするほど葛藤や鬱屈と仲良くせねばならなくなるようで、あのような記事になりました。

そんな僕が無双だとは到底思えないんですがどうでしょうね、ITOさんにはお元気そうでなによりです。むしろ御社ではあなたが無双なのでは?(笑)

僕としてはITOさんの独立(でしょうか?)やトラブルシューティングのブログ開設を楽しみにしているところです。その際にはぜひお声かけください。

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