林業関係者さんと同業者さんへの鬱屈気味なエール(山林・林業関係業務各ページの完全公開について)
十数年前。過払いバブルが絶頂期にあり、まだ補助者さまが着任される前です。
婚約が破談になった際に相手から僕について、寸評を賜りました。
鬱屈した変態、と。
さすが僕が選びかけた女性だけあって、なかなか鋭い指摘だとは思ったのです。結婚前に聞けてよかった、とも。
過払いで稼ぐ報酬を家計に入れつつ(僕でも年収1千万にタッチする勢いでした)こうした批評に晒されながら過ごしたい、などとは到底思えなかったので逃げ出した案件ではありましたが、もう昔のこと。
ただ、ある種の鬱屈は今も抱えているところです。今日のキーワードはこれ。
誰もが持ってる程度の黒い歴史はさておいて、いつもの話題に戻ります。3年ほど前に出した僕の著書は山林の相続を扱うものだったのですが、なんとも間の悪いことに著書の企画が示されてから脱稿までのあいだに相続関係の法改正があれこれ出てきていたのです。遺言書の一部がワープロで作ってよくなるなんて(泣)
商業出版させてもらえるだけでもありがたいと思え、改訂しての増刷などありえぬ、と承知はしておりますが自分の書いた本が出たあとで法律が変わるというのは実に居心地が悪い。社会の窓口を全開にし寝癖だらけの頭で地下鉄に乗ってるような気分がするのです。
これはなんとかしたい、ということでもう1年ほど前から担当者さんに連絡し、『法改正については勝手にこっちで解説を追加する』ということにしておりました。
だからといって売り上げやご依頼がふえるわけでもなく客観的にはまったく報われない活動ですがそこはそれ。なにしろ予定部数を売り切っても僕の時間あたり報酬額は最低賃金を大きく下回り東京大阪名古屋の最賃の半額未満、かろうじて北東北山陰九州沖縄ならかろうじて半額超え、それを承知で乗った企画です。僕の黒い歴史を正当化するならば、結婚してたら書けなかった本だと言っていい(笑)
それでもなんとか法改正部分の解説ページだけ作って公開したのは、実は昨年6月です。
もうリンクを張っておいてくださった方々にはごめんなさい。
あのページ、グローバルナビゲーションからのリンクが先月まで、全部切れておりました…そもそもページを作ってなかったんで(大汗)
これらを正月三が日に整備しきって、インデックスページには昨秋の四国出張時に狙って撮ってきた写真を加えました。
今月より、当事務所ウェブサイトに山林・林業関係業務の各ページを新設公開いたします。
ウェブサイトの構成としては、労働紛争・裁判書類作成・登記とファイナンシャルプランニングに次ぐ4番目の大分野となりました。当事務所ウェブサイトは各業務ごとに2文字のサブフォルダ名を与えており、今回は僕が卒業した(今は亡き)森林社会学研究室の残党を自任する者としてCommunity and Forest=cfのサブフォルダにぶら下げてあります。
今回ようやく作って完成させた、グローバルナビゲーションからたどれる各業務の案内は既存の各分野から引っ張ってきた報酬体系の提示が主な内容です。情報提供というより、依頼を受けられる可能性を具体的に示しておくことに留意しました。
実はこの分野で官公庁やらコンサル会社=林業関係の人から問い合わせをもらってしまう頻度が徐々に上がってきているため、まぁ受けられるものは受けられると明示しておくのがよかろう、という思惑も持っているのです。検索エンジンから閲覧を集めて一般の人から依頼が集まるほどの情報量はなく、あえて集客に使うならPPC広告との併用を要するでしょう。そこまではしませんが。
ここで鬱屈が出てくるのです。
この新設したウェブサイト各ページの閲覧者は林業プロパーの人々でして、そうした人から『先生は林業に精通している司法書士とのことでお問い合わせしました』などと言われると結構な罪悪感を生ずるのです。
どうせなら、ということで鬱屈を込めた挨拶文を、当該分野の事務所案内のページに加えました。
ただ、林業界のメインストリーム(研究者 or 公務員になってエラくなる)から派手に外れたのになぜか戻ってきちゃった鬱屈のほか若干の希望を込めて『林業に詳しい司法書士なんかいない・それを求める必要もない・一定要素を持ってちゃんと取り組む普通の司法書士が何年かやってりゃ自動的にそれらしく育つし、(林業に詳しいと自称する奴が仕事を囲いこむより)業界としてそうなったらいい』という従来の=要するに身も蓋もない(このへんが寄稿先には気に入られているらしい)が冷笑的ではないフィールドワーカーの立場を取ったものとしております。なにぶん鬱屈がありますので読み取るのが難しいかもしれませんが。同箇所から転載して、当事務所ウェブサイト山林・林業関係業務のご挨拶といたします。
…ただ、ほんとうは完成後に全林協さんにお願いしてリンク張ってもらおうと思ってたんですよね。
あした連絡は送ってみますが、鬱屈が過ぎて拒否られるかも(苦笑)
ご挨拶
実はわたし、国家公務員Ⅰ種・Ⅱ種林学職の試験に落ちて現在に至りました。
司法書士なんていってもそんなもの、とお考えいただければ結構です。
司法書士ではありますが、法学部は出ておりません。
林学科の林政学研究室=三重大学生物資源学部生物資源学科森林資源学コースの森林社会学研究室、というところでのんびり過ごしておりました。
大学4年になって上記試験を受けたところ、双方とも一次試験に受かって二次で落ちました。
どうやら公務員には向かない人格であるらしいと、この時点で気づかされたのです。
もともと研究室では法社会学に馴染んでいた関係で、大学院に行くのをやめて司法書士になりました。
開業後はウェブサイト経由でご依頼をいただいていたところ、ご高齢の女性から変わった相談があったのです。
相続した他県の山林のありかを探し、現状を報告してほしい、と。
原野商法の後始末とはいえ、亡きご主人が買った山です。思い入れはあるのです。
相続財産には農地や別荘もあったため、森林組合に頼るわけにもいきません。
名古屋から出張して伊豆半島某所の市役所町役場法務局から現地まで調査を一通り終え、その経験をウェブサイトに書いておいたのです。
数年後にそうした記載を見つけた全国林業改良普及協会編集制作部の方から、取材や執筆のご依頼を受けました。それらにまずまず大過なく応じつつ、他に適当な事務所もない関係で『林業に詳しい司法書士という立場』を社会的に引き受けている、というのが実情です。
そんな経緯を黙っておいて『林業に精通した司法書士が林業関係者の皆様を応援するためこのウェブサイトを開設しました!』などと言えば見栄えはいいはずです。上手にそれを目指したらしい他士業の事務所もできました。
森林環境譲与税をつかって綺麗な講演や相談会を開催したいときの受け皿としてはそちらのほうがよさそうだ(が、ここはそういう事務所ではない)、と林政関係公務員の皆様には申し上げておきましょうか。
わたしが普段取り組んでいるのは、法制度の利用を一般市民の側に引き寄せる活動です。不動産登記からちょっとした訴訟まで、それらを普通の人が自分でやれるようにしてしまおう、という立場に立っており、その点では珍しいかもしれません。もともとこの事務所は、個別労働紛争の労働者側で本人訴訟の仕事をするように作りました。現在でもそちらが当事務所の重要な業務なのです。
こういうとたまに思想を疑われることはありますが、前衛で革新で人権派を自称する他士業の方とは共闘するより向こうに回したほうが楽しく仕事(訴訟)ができています。
森林経営管理法は農地改革以来の私権の収奪ができる凄い法律だと思ってはいますが、上手に使えば悪くない未来が見えそうだしその方向なら支援したい、と思う程度には中庸です。
ふだんは山林の仕事はあまり多くありません。たまにくる相談、相続未登記問題、あるいは森林経営管理制度を意識しつつ行う契約書類検討、といった関わりを通じて、林業関係者側から法律・相続への関心が高まってきたのを法律関係者の側からそっと眺めています。
そういえば公務員試験のとき読み込んだ森林・林業実務必携には民法や登記など一行も出てこなかったよな、と苦笑しながら。
この事務所が林業に造詣の深い司法書士として法律的な問題点を快刀乱麻の勢いで解決する、ということは今後もありません。法律上も司法書士にそこまでの能力は与えられていません。
全国探してもそんな結構な司法書士はいないだろう……という原稿を寄稿したところ、編集段階でカットされました。普段はリライトされたことがないのですが、言ってはいけないことはあるようです。
ついでに申し上げますと、対応能力的には何の問題もない弁護士たちは動員費用がかかりすぎ、少額な林地の問題での活用は今後も非現実的です。最低着手金が10万円という彼らに数万円の共有林持分の紛争を訴訟代理させようとは、誰も思わないでしょう。
ですが林業関係者の皆様には、失望することは全くない、とわたしは考えます。特にあちこちで問題だらけと言っていい山林の相続に関しては、普通の人と普通の司法書士がその気になれば手続技術的には対処可能な案件ばかりです。
林業に詳しい司法書士や弁護士をあえて求める必要は、実はそう多くありません。
山林相続や山主との契約の問題で必要な知識は、上記2士業なら誰でも持っています。むしろ士業に必要なのは、実情に即して柔軟に助言し対処方針が決められる態度と、既存の法的手続きを安価に利用しやすくする方向でおこなう継続的支援、それらのために関係者から丁寧に話しを聞き現地や現物を見るのに要する時間だろう、とわたしは考えています。理想的関与のありようは訴訟代理から手弁当での相談まで、それこそ百人百様の多様さを示すことになるでしょう。
それに耐えて何年か活動を続けたらその事務所は、林業そのほか中山間地の問題に詳しい士業の事務所になっているはずです。
以上の思惑がありまして『わたし、林業に精通している司法書士です』とは言いたくない(でも人が言うなら言わせておこう、という程度のズルさは持っている)ところです。
ですがこの業界には一応の基礎的知識とほんのちょっぴりの人脈、あとは他事務所より結構多めな時間的余裕とシンパシーを持っているつもりです。個別労働紛争というニッチな分野に長くいる関係で沖縄から北海道まで仕事で行っており、出張はむしろ歓迎します。山林関係の仕事でも、お近くに依頼先が見つからなければ全国からご依頼をお受けするつもりです。
そのために令和3年1月3日から、当事務所ウェブサイトに山林・林業関係業務の各ページを新設し公開をはじめることにしました。
相続その他民法関係の知識が一通りあって登記も裁判もでき、それを自分でやろうとする人を支援する態度が取れる実務家がいるなら、皆さまが期待したほど林業に詳しくなくても中山間地域では便利かもしれません。このウェブサイトには書いていなくても、お役に立てることはあるでしょう。
皆さまからのいろいろなお問い合わせを、お待ちしています。
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