お前はまだ砂消しゴムの使い方を知らない(不動産登記編)
先日のこと。久しぶりに補正指示の電話がかかってきました。
内容が内容ですので補正を発出した法務局、担当者の性別等は一切伏せます。語調も加工しているとお考えください。
案件は抵当権抹消(ごくシンプルな登記に限ってハマる、という点は見逃してください)。ただし抵当権譲渡の付記登記があり、譲受人の承諾書をもらって一気に抹消する…登記がお好きな先生方には完全に日常茶飯事なんですが、当事務所では司法書士登録16年目にして初受託、そうした案件だったのです。
で、補正指示の内容。『登記原因と承諾書の文言が異なります』そう担当者さんが言うのです。
たとえば当初の抵当権者が抵当権放棄を登記原因として解除証書を出しているなら、抵当権の譲受人が出してる承諾書も『抵当権者が抵当権を放棄したので抹消登記を承諾します』といった文言であるべきだ、と。
僕はそこまで注目せず、承諾書を発出した大手企業さんにも聞きましたがこの文言の組み合わせで申請が止まった例はない、とは聞いています。ただ、その後の担当者さんの発言が、登録わずか16年目の未熟な登記書士には理解できないものだったのです。
『(登記が)抹消できればよいですから、善処してくださいね。抹消できればよいのですから』
…丁寧な表現にすると、そんな感じ。
僕はと言いますと、とりあえず承諾書発行先企業さんと打ち合わせ(なるべく困ったふりをして頼み込み、応じて貰えたことには関係者各位に大いに感謝する、という挙動を取って円滑順調に仕事を進めます…こうした場合。当ブログの語調からはほとんどの方が想像できないかもしれませんが)をして適切な文言で承諾書を再発行していただきました。
で、翌週。某法務局(本局か支局か出張所かは一切ヒミツ)に出向きます。差し替え用の承諾書を提出した瞬間、担当者さん曰く
『ああ、差し替えてくださるのですね?』
当然だろ、と思って首をかしげた僕に、さらに曰く
『(登記が)抹消できればよいですから善処してくださいと申し上げたのですが…砂消し(ゴム)とか』
聞いてはならないことを聞いてしまった、という表情を顔に出したのは、登録わずか16年目の未熟な登記書士としても失敗だったようです。僕としては寛政年間の江戸でロベスピエールに出会ったよりもショッキングでしたが…まさに革命的な、そして斬首につながりかねないご発言ではあったのです。
『あ、当職の独白です/(承諾書差し替えについては)わざわざご丁寧にどうも』
そうした発言で補正は軽く流れていきました。
もちろん僕は、既提出の承諾書(当然、第三者が作って記名押印した書類)の文言を削ってどうこう、などとは一切考えておりません。
そんなことは僕が二十数年前まで補助者として在職していたクソ事務所(司法書士ではない士業の事務所)でだけやってろよ、と思っていたのですが…僕はまだ、本当の砂消しゴムの使い方を知らないらしい、というお話しでした。
もう知りたくもないんですが…もし他の先生方と会食の機会があったら、十分にお酒が回ったタイミングでそーっと尋ねてみようと思います。
「ひょっとして先生は、犯罪行為につながる禁制品の使い方を何かご存じではありませんか(あ、冗談です)」
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