不要不急の何かを止めさせてしまった話(それで儲かるのは僕だけだから、という正当化)
普段とは違うパーソナリティを演じてみたくなること、たまにないでしょうか?
例えばブログでは概ねおかしなことを言っているどこかの代書人が一生に一度くらいはまっとうな書籍を世に出してみたくなるように(苦笑)
今日はまぁ、そんな話です。
そのお客さまとは複数回の打ち合わせを経て、契約書作成および所有権移転登記申請のご依頼をいただくことになりました。家族間での生前贈与、だと思ってください(例によって事案は少し改変しています)。
今日はその最終確認および書類授受、ということで当事務所には義務者権利者ご一同様が連れだってお越しになりまして、契約書調印と必要書類の受領まではつつがなく終わりました。で、僕からお客様方に話しはじめます。
ここで最後に提案です、と(きな臭くなってきたな、とご期待の読者さんにはそれを裏切らないかと思います)
- まぁこういう社会的経済的状況になっちゃいました。
- 今回所有権移転する物件も文字通りその直撃を受けるものですよね
- なので、いま譲渡されたって転売差益や賃貸料収入をゲットするのは当分ムリでしょう
- じゃぁそんな登記をするために十数万円、いま現金を手放したいですか?
- 後手後手が好きな政府のあれやこれやの施策が我々までトリクルダウンしてくるのはもうしばらく先です
- したがいましてファイナンシャルプランナーとしては、いまから1~2ヶ月のあいだは手元に現金をホールドしておくことが重要になるかと存じます
- 繰り返しになりますが、それでも十数万円かけてこの登記、やりたいですか?
- もちろん司法書士たる僕は儲かって嬉しいですが、やめておくのも一つの見識かと思います
- ちなみに印鑑証明書は発行されたばかりなので、この書類一式預かって実質3ヶ月は判断を先送りできます
- ついでに委任状には、『この委任は委任者の死亡によっても終了しない』って特約を無料オプションとしてつけておきましょう
- 繰り返しになりますが、それでも十数万円かけてこの登記、やりたいですか?
- 繰り返しになりますが、それで嬉しいのはほぼ僕だけです
-以上-
とりあえず、お客さまには契約書作成費用だけもらってお引き取りいただきました。
あはは(乾ききった笑い)
手短に結論を申しますと、個人の家計向けファイナンシャルプランニング業務と司法書士の商売はときに両立しない、ということかもしれません。余計な正義感を発揮して人に自粛を求めることは実に実り少ない営みで、かえって日本のGDPを減少させる、ともいえます(あ、これは違うか)
まぁ依頼受けないとは言ってませんので、それでもやってくれとおっしゃるなら粛々と申請出しますし…そのほうが嬉しいです。僕と僕の事務所、ひいては僕の家計は。
ついでに言うと、上記のようではあってもこの物件をマネタイズする努力は常に続けるべきだ、とは助言しています(そりゃ当然で、ここを阻止しようとしたら本当に愚劣な不謹慎厨になってしまいます)。
当事務所へ不動産登記のご依頼検討中の方々におかれましては、ここにいる司法書士はときに嬉々として申請の延期や中止を語る、とお考えいただければよろしいかと存じます。
こんなことばかり書いてる僕がこのブログにあるようなよろしくない部分を排除して(補助者さまと担当編集者さまには文章表現の改善等をめぐって、ひとかたならぬご助力をいただきました。いまでも感謝しています)なけなしの善性を注いだ単著を出してから、2年が経ちます。
今年にはいってようやく、東海三県初の図書館配本が実現されたと思ったら(←遅いよ)その名古屋市図書館がまるごと臨時休館になっちゃったりもしています(←酷いよ)ですので僕の本はおそらく農業関係の書棚で寝ているだろうと思います。
僕の著書『そこが聞きたい 山林の相続・登記相談室』(全国林業改良普及協会 2018年)については発売直後に『八十万(やそよろず)の雑記帳』さんが好意的なレビューを出してくださいました。僕が担当編集者さんの思惑を超えて盛り込んだ部分をよく汲んでいただいており、この意味でも大変ありがたいことだと思っています。
同年7・8月には農林水産省本省の売店での売り上げトップ10に入った、という飲み会のネタにしかならないような(一体何冊売れりゃそうなるんだ、と苦笑してみたい)話題もあり、現時点では幻冬舎GOLD ONLINEでその一部が転載されています。
小規模山林所有者向けに相続手続きの本人申請を解説した本が富裕層向けウェブサイトに転載される、という反応自体がもう何かの冗談のようで、まさに飲み会のネタにはさせてもらいました。
amazonのレビュー3件のうち2件は面識がある方、残り1件は『同業者なので、とくに新しい知見はなかったが当たり前のことが丁寧に書いてある良書』とのことでこれはそもそも同業者向けの本じゃないんだからしょうがない、とさせてください。
繰り返しになりますが僕が出した本は同業者向けではなくとくに新しい知見はない(←これは自虐としてはいいのですが、本来は上記レビューの後段部分に注目していただけると担当編集者さまや補助者さまその他出版担当者ご一同さまの心が癒やされたり励みになるのでそうすべきだ、と重々承知しています)、そういうものではあったはずなのです。
で、今回また著書名でネットを探してみたところ
あまりオススメしたくない!
というタイトルがまず飛び込んできました(そう来ますか)
本文をよく見ればその方は熊本県の、残念ながら鉄道では行けない場所に事務所を開いておられる先生とのこと。お会いしたことはありません。上記の通りタイトルはひねってありますが(著者としては結構焦るんですよねー。一応これでも評判は気にするんで)拝読したところ本書をご推奨いただいています。どうもありがとうございました。
ただちょっと違うな、と思えたのはこうした本が(特に重要な要素として、林業界向けのものならば)司法書士業界の依頼減少にはつながらない…むしろ長期ではその逆を期待していい、ということです。
言ってしまえば『移転する持分の価格40万円登録免許税1000円の相続登記に司法書士報酬4万円払うのはイヤだよねー(←実例)なら自分でやったら?』という本ではありますが、そういう林地では司法書士業界側がなにも施策しなければ現時点で依頼が来ないのは当然です。
つまりこの本があろうがなかろうが依頼は増えも減りもしません。
でも本人申請可能という情報を中山間地域にばらまいてあげれば
小規模山林所有者向けの講演会兼相談会の企画が持ち上がったり(水源地対策ってことで水道代から講師料もらったことがあります)相続登記まで終わった林地を次にどうしよう(贈与で持分をまとめたり遺言で承継をはかったり)、という発想は必ず出てきます。
さらに相続登記を現実的に企図するようになった山林所有者の集団からは一定量、『わかったわかった今回はオレ忙しいからお前やってくれよ/ついでに家と畑も頼むよ』的トリクルダウン効果が発生しうるので(←実例)、別に僕が無私の精神でこの本書いた、というわけでもないのです。
そう、実は僕は誰も反論できないほどの正当性を確保しつつ長期に行う金儲けの計画を隠して…というのはもちろん、冗談です。
登記本人申請の本を出すことが即、司法書士への依頼減少につながる、という発想は自分さえよければいい人たちの集団を前提とすれば当然です。
住宅の相続なり購入なりで一発何万円かの依頼費用が削れりゃあとはどうだっていい、安けりゃいいんだろ安けりゃ、という発想の人を対象にして、一回使えりゃあとはどうだっていい、という情報商材を売ってる事務所の存在を前提とすれば、なるほどそうなります。
いますよ、そういう情報商材売ってる人。軽蔑してますがなぜか表面的な主張は似てしまうんです。
ただ、注力する場所や状況を間違えなければ本人申請・本人訴訟を促進することは、我々の業界に対する社会的評価や制度への関心を高めながら需要の掘り起こしにつながる活動になりうる、と僕は考えています。
よその事務所の売り上げ削らせて自分の情報商材が売れりゃいい、などとは僕は毛頭考えておりません。
ただ、なにぶん誤解を受けやすい要素はあります。こうした活動が無理なく継続されるために重要な要素としては、まず山林所有者向けである本書について、ご同業の先生方による一般市民への推奨方法を間違えないことかもしれません(以下、冗談です)
- たとえば本書はご自身の事務所の売り上げに危険をもたらすものと認識したうえで事務所内では一種の禁制品として扱い、ほんとうに信頼できる山林所有者・共有者だけにそっと示す、とか。
- そこまでしなくても、いったん依頼人に背を向けて肩越しに人の悪い笑みを浮かべつつ「ほんとうは、あまりオススメしたくないんですがね」とつぶやいてからこの本の利用を推奨する、とか。
以上はもちろん、もちろん冗談です。言ってみるだけなら楽しいので口にしてみました。
ご同業の方から良書と評価されることは本当にありがたいことだと思っておりますし、林地も小規模山林所有者もいっぱいいる地域でこうした活動が受け入れられる可能性はいっぱいあるのに(そのうちに森林環境譲与税が財源になったりするのに)な、とも思っているのです。
補足です。僕の本は山林所有者の方、そうした方を支援するNPO・森林組合・行政関係の方々には一種の試薬の役割を果たすかもしれません。
僕の著書をお近くの(今後のあれやこれやで協力を依頼することを検討している)司法書士さんに見せて禁制品扱い、そうでなくてもアタマから否定的な反応を示すところはちょっと避けたほうがいいかもしれないね、とか。
これは…冗談ではない気がしています。いろんな意味で読み手を試す本を書いた自覚はあるので。
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