カンフル剤か、それとも麻薬か(公共セクター発の案件を受けてみる件)
法務局の入札・公募情報のページがずいぶんと賑やかなことになっています。物好きな同業者さんはすでにお楽しみになられていることと思います。
あれこれ調べたところでは、ユキマサくんの団体は各単位会に周知を図ったという『長期相続登記等未了土地解消作業委託契約』の応札結果が各地方法務局であらかた出そろいました。
…発注規模はどこもだいたい1000人ぶん、落札価格はだいたい3千万円超~2千万円台前半、つまり調査を要する登記名義人一人あたり2万円強~3万5千円弱、そんな感じにまとまっています。司法書士20人以上で受託しろ、という条件がついていますが、逆にいえばそれだけの頭数を自社で持ってる大規模法人なら単独で応札できる、ということでそうなった(らしい)法務局も出てきています。
法務局も、というより国も、というべきでしょうか。なにやらもったいないことをするな、と僕は思ってしまうのです。
こういう定型的で大量で長期に出されて、単純作業が膨大にあって危険度が低くておまけに納期がちょっとくらい(どうせ数十年放っておかれたものなんだから、それこそ4年や5年くらい)遅れても誰も表だって文句など言わない、そんな案件だったら…
各省庁とも昨年手ひどく叩かれた障害者の法定雇用率を上げるのに、うまく使えばいいのにさ、と。民間事業体に入札させるとしても、登記やら戸籍を読む以外はあらかた単純作業(おそらくは戸籍等請求用紙に記入し封入し発送し収受し入力する、そうした作業)なんだから、そうした作業で就労支援ができる事業体あるいは共同企業体が応札できるようにすればいいのに、と思えてなりません。
どうせ僕のところのような場末の零細事務所が単独で受けられるものではないのですが、きっとこうした業務は今後、市町村あるいは都道府県が発注者になって出てくるだろう、と思っています。
昨年成立した森林経営管理法でも、実は市町村が所有者不明の土地を探索する、という作業工程がビルトインされているためです。ただこちらの作業は、最終的に所有者不明の土地の管理権を市町村が持ち主から奪う過程で出てくるものなので各市町村から膨大に発注されることにはならないでしょうが。
そうやって見渡してみると、案外この『所有者不明土地に関わる公共発の案件』はバブル化するのかもしれません。この案件を単独で応札するために司法書士法人のM&Aが活発になるとか、そうした案件の応札を支援するコンサル会社が勃興するとか(笑)
とか言ってるうちに、債務整理に飽きた全国系弁護士法人がこうした案件を片っ端からさらっていくようになるかもしれませんが。
まぁきっと、このまま普通に公募と応札が繰り返されれば肥え太るのは一部の経営者だけで僕が仕事で関わる先(あ、被告とか相手方とも言いますが)が将来的には増えそうな気もしています。価格の総枠が決まった案件をゲットする、という活動の性質上、単独の事業者が受ければきっと人件費は削りたくなるはずですから。
これらの案件の行く末、情報公開制度をうまく使って観察を続けてみたい気がしています。
ところで。
このほど、山林の共有者さんたちを相手に相続登記を自分でやろう、という勉強会の講師をすることになりました。
入札どころか講師料のコの字も出てない、そんなのんきな案件です。
このほどできあがったというチラシを主催者さん…正確には当ブログに時折出てくるNPOの代表者さんから見せてもらいました。最後に初めて聞くようなことが書いてあります。
-当事業は、○○基金の助成を受け行っています-
水1トンにつき1円が拠出される○○基金から、水ではなくて助成金を流していただく企画…ということだったようです。
そのときからです。僕のあたまのなかでおカネの計算単位が円からトンになったのは(苦笑)
もし僕がその会場までの交通費をもらってよければ、往復で3千トン強。
当日の講義時間は2時間ということで、通常の相談料と同額もらってよければ総額9千トン弱。
そうした量の水道料から拠出されるお金がこっちにくる、と思うとなにやら申し訳ないような気がします。これだけの水道水を僕のところだけで使おうと思った場合、80年から90年はかかります(呆然)
冗談はさておいて、こうした準公共セクターから出てくるちょっとした仕事も、そのうち各地の大~中規模の(食い詰めた)事務所さんが欲しがるようになるのかもしれないな、と思っているところです。
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