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法定後見制度の社会問題化を願う件

この本は同業者さん、というよりはこれから司法書士を目指す人におすすめしたいと思います。

現時点で業界が積極的に関与を進めている業務が、ここまでマズイことになっていると指摘した本が他にないから、です。

これと比べれば過払いバブルに踊っていた大規模法人などただのチンピラで、こっちのほうは…国家権力と結託していらっしゃる。言ってみればマフィアだ、と言わざるを得ません。

成年後見制度はそのような化け物に育ってしまった、ということなのでしょうか。今日はこの本の紹介です。

成年後見業務に携わっていない(名簿に名前を載せておけば裁判所から仕事が降ってくる仕組み、ってところになんだか胡散臭いものを感じた/よく考えたらお金を出す人と仕事を出す人にズレがある、という点で金融機関や不動産業者への登記営業と同じだと気づいた)僕には弁護士やら司法書士がなる職業後見人、なんとも不可思議な存在に思えていたのです。

だって一回後見人を据えてしまったら滅多なことではクビにできず、本人が死ぬまで報酬は取られ続けるんですから。

場合によっては本人の財産を百万円単位で減少させてまで選択するメリットってそんなに(小市民の家庭では)あるの?とファイナンシャルプランナーとしては口にしていたものの、これからはもう少しおおっぴらにそう言ってよさそうに思えてきました。

この本『成年後見制度の闇』は本年3月…僕の本と同じ月の刊行です。

内容は強烈です。

●弁護士・司法書士は良くて寄生虫、悪くすると犯罪者として扱われています。いずれにせよ社会の敵、という評価です。

 そして問題は犯罪者ではない方=横領だの親族への暴言だの本人への暴行だのに走らない、一見まじめな大多数の方にあるようで、ここがまさに大問題です。

年間では十万円単位の報酬を合法的に本人の財産から抜き去り(報酬付与の審判は申し立てますが)、不動産売却やら後見制度支援信託の設定といったイベント発生ごとにさらに十万円単位の稼ぎが合法的に挙げられる、と。

で、このお金はもちろん本人の財産を減らして職業後見人に支払われる…と。

そりゃ怒るよ、親族一同。

改めて思ったのは「後見人になりたいな」などと呑気にいう同業者からは一歩遠ざかったほうがよさそうだ、とも。今までもわかりやすい人は「あれ10件集めたら月20万(の売り上げ)だもんねー」などと節操のないことを言ってはいましたが。

ああいう人とお友だちにはなれないな、と思っています。

●家裁は士業と結託しつつ「手続き飛ばし」(←本書目次より引用)に邁進しているそうな。

 裁判所がやる『手続き飛ばし』。もうそれだけで充分怖い。

こちらも利用者不在の制度運営に大きな役割を果たしているようです。

文中でひどく気になったのは、親族の意向を無視して後見開始の審判を出すときにその審判書を本人に送らない、さらには申立代理人ではない士業のところに審判書を送達してそれでよし、にしてしまっている事例がある(らしい)、という記載。

らしい、というのは僕が補っています。そこまでひどいとは思いたくないのですが、これで後見開始の審判に対する即時抗告の可能性が閉ざされている、と指摘されています。ひどすぎます。

あと、最近家裁が進めているのはなんの罪もない親族後見人の上に士業の後見監督人を押し売りして、そいつの報酬を払わせる、そういうビジネスなのだとか。

これで報酬取って嬉しい、と思える時点でその士業、士業ではなく人としてどうかと思うのですが。

有力な敵キャラが、制度発足時と比べてもう一人増えたようです。

●市町村。確かに統計では、彼らの申立も増えています。

 こちらは昨年名古屋高裁管内でニュースになりました。本人&親族の意思を無視して市町村が後見の申し立てをし、親族側の反撃にあって見事に失敗した事例です。

この集団、気がむくと(虐待の疑いをかけると、というべきかもしれませんが)親族から老親を隔離し、勝手に後見の申し立てをするのだとか。

拉致じゃないのか、と素朴に思いますし親族側の対抗手段として人身保護請求が挙げられている、ということは実際にそうなのではないかと(愕然)

そうしたわけで、どうやら海の向こうの大陸国家を笑えない人権状況が司法-行政-民間のトライアングルのなかでできてしまっていたのです。怖すぎです日本。

制度の運営者がみんな悪い人!という構図なので表面化は遅かったものの、知ってしまえば誰もが驚く不都合な真実というべきでしょうか。そのうちNHKあたりで取り上げてもらえればきっと面白くなるのにな、と期待せずにはいられません。

さしあたってどうするべきか、可能性のいくつかは示されています。

1.順当なのは全力で法定後見を避けること=任意後見契約を準備すること。

身もふたもないが適切な助言はしばしば笑えるものだ、と思ったのは本書によれば

2.申立前に被後見人の預金残高を減らしてしまうこと

だそうです(ええ、爆笑しました)

  • 金融資産が少なければ敵キャラ1号=士業の報酬が減ります。
  • 敵キャラ2号=裁判所から見ても、あれこれかまってやる理由が減ります。

かくして、仮に職業後見人が選任されても報酬は少なく済むし、親族後見人が選任される可能性もまだ少しは増えるだろう、とのこと。

ひねってあるな、と感銘を受けたのは、上記で減らした預金残高は当然現金になってしまうわけですが、この現金を親族を受託者とする民事信託を設定して保全する策がある、とのことです。

後見制度支援信託なんかイヤだ、とものすごく念入りに宣言されたような気がしまして…不謹慎ながらここでも笑ってしまいました。ただ、委託者(成年後見の申立を要するということは、契約締結能力が少々怪しいひと)との関係でどうなのか若干気にはなります。

もしこれが機能する場合、被後見人のためにお金を貯めておいてあげるのではなく、むしろ見かけ上減少させることが必要だ、という点で成年後見制度(財産管理の制度ですが何か?)への凄い批判にもなっているのですが。

そうしたわけでこの本、当事務所では(まちがって)成年後見制度の利用を検討しかけた善男善女にはかならず読ませる、もう絶対に読ませると決めました。

残念だったこと。

同時期に出てしまった僕が書いた本では上記の問題点、原稿執筆中に雑誌記事では読んでいましたが、婉曲にしか表現できていなかったのです。

『成年後見の申立をへて親族でない人が後見人に選任された場合は、後見人への報酬が被後見人の死亡までずっと発生します』とか

『後見人への報酬は家庭裁判所が決め、本人の財産から支払われるのですが(中略)つまり、本人の財産が減少する可能性があります』というように。

今だったら「成年後見の申立では申立件数の約4分の3について親族以外の後見人が選任されます。彼らが毎月1~2万、財産額によってはそれ以上の報酬をとることで本人の財産が毀損されます。これを上回るメリットが事前に発見できないかぎり法定後見制度の利用は推奨できませんし、県市町村担当者には公用地を買収したいという程度の理由でこの制度の利用を提案すると親族から一生恨まれる恐れがあります」と書いて参考図書に本書をくっつけるだろう、と思っています。

なお、僕の上記の言説はいわゆる家族信託の利用を促進しようとする意図でなされてはおりません。

家族信託業界側があれこれ成年後見制度を批判するのも一種のポジショントークですし、民事信託については『委託者とその財産を囲い込んで長期に拘束するようにも設計できる/不利になる他の相続人と紛争を起こす可能性がある』と僕の本では説明しています。

…つまり僕、どちらの業界からみてもかなりイヤな奴です(苦笑)
いいんです。僕が書いたのは士業向けの本じゃなくて山林所有者向けの本なんですから(強弁)

ところで、成年後見人の候補者ってのはリーサポに入ってなくてもなれる(制度の見かけの問題ではなく、実際の運用として)ものなのでしょうか?あまりなされていない調査として、その傾向を知っている人はいるのでしょうか?

まだこれが可能だとしたら、大した仕事をしない実情にもとづいて年間1万円くらいしか報酬を取らない成年後見人やら後見監督人業務、ってやつを始める士業が現れたらそいつはヒーローになれるのに、と思えてしまいます。

いまどき大部分の預金口座の動きはクラウド会計サービスを使えばリアルタイムに把握できるのだから、親族後見人による不正支出が今日あったら明日電話して警告するくらいはそれこそ寝ててもできるはず。あとは特別な仕事があったらそのつど調整してお金がもらえればそれでよさそうな気がします。

業務の継続性を重視すると法人化している事務所が関与する必要があるでしょうが、もしそういう人が現れたら応援したいものです。

僕がやる、とは申しておりません(いろいろな意味を込めて、遠い目)

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