少額な残業代請求のお値段
しばらく当事務所から遠ざかっていた残業代請求に関する案件が、三つほどまとまってやってきました。さりとて喜んでもいられない…6月最初のブログは、きらびやかなウェブサイトと交通至便な事務所と無料法律相談と完全成功報酬制、そんな毒まんじゅうを売る上位互換の士業さんたちを彼岸に眺める零細事務所のお話です。
例によって守秘義務に反しないよう、相談内容を改変します。
数ヶ月ぶんの合計約25万円の残業代請求に関する法律相談は民事法律扶助制度にしたがって法律相談援助(この言い方、いまでもどうかと思うのですがとにかく援助)を発動して、相談第2回目となりました。
当事務所では法律相談援助による相談をだいたい1時間弱かけておこなっています。
…ぼぼぼ僕の相談進行がおそいから、時間がかかっちゃうんだな(←裸の大将by芦屋雁之助ふうにお読みください)というのが公式な理由であります。
決して、他事務所では30分内外で終わる想定だしそういう報酬設定なのを延長してお客さまに便宜を図っているわけではない、というのが公式な見解です(遠い目)
そういえば1回目に行った野並の事務所じゃ扶助の相談1時間やってくれたぞ、などとどこか他事務所で無邪気に言う相談者が現れても困ります。それはさておいて。
累計で投入する時間数は約2時間、つまり当事務所の有料の相談1回分の時間をかけて証拠書類の検討から受託費用、提訴した場合の見通しまでだいたい説明が終わりました。
要するに、お客さまにとってペイする案件です。これは。
「もっとお金が取れるのではないか」
そんなことを、お客さまが言うのです。
正確には「(僕が)もっと報酬を取れるのではないか」そうしたことを。
さらに聞かれることには、どのような動機でこうした案件を受けるのか、と。
そんなもん、世のため人のためお客さまの笑顔のためにやってるに決まってます、なんて言うわけないじゃありませんか(キッパリ)
力強く断言してさらに詳細に説明します。
上記の設例で簡裁通常訴訟または地裁で労働審判手続きの利用を前提に裁判書類作成の依頼を受ける場合、当事務所で最初に必要な依頼費用は
- 請求額25万円×5%=12500円
ほんとうなら請求額の全額が認められるような本件でも、裁判官が挨拶代わりにまず2割削ってくるステキな和解or調停案を丸呑みさせられたとして(←文字通りこの表現で説明しましたが何か問題でも?)ゲットできる金額は20万円、したがってこの15%を依頼終了時にお支払いいただく費用として
- 回収額20万円×15%=3万円
※念のため検討すると、作成する申立書類はおそらく本文別表込みで12枚程度、したがって当事務所報酬額基準では簡裁に提出するなら正本のみで6万円、地裁に出すなら7万8千円という評価になって上記のような請求額比例の報酬設定は暴利でない、たんに上限を設定するプライスキャップ制として機能しているだけだ、とも言い訳しておきます…和歌山地裁判決以来、こと裁判事務の報酬についてはさらに物の書きにくい世の中になった気がします。
以上の税込み合計+申立時の郵券代等の実費を合わせて約5万5千円がお客さまが投入すべき費用で、回収できるおカネが20万ならまずまずペイすると言っていいでしょう、と身もふたもない前提条件を説明します。
しからば上記の42500円を得るために僕が投入する作業時間数はほぼ見え切っており、
- 補助者さまに労働時間を入力してもらう時間数1時間
- 証拠書類を編綴・出力してもらう時間数1時間、
あとは本職たる僕が
- 追加で資料を精査して必要に応じてお客さまを追及する、いえ事実を追究する(笑)時間が2時間、
- 申立書を起案する時間が2時間に
- 期日直前の打ち合わせ時間が2時間程度もあれば
だいたい仕事が済むことになっています。労働審判手続きならまさにこれだけ。
補助者と本職の作業時間に1:2の重み付けをして本職の作業時間に換算すれば、合計7時間といったところ。
ほら、時給換算でだいたい6千円程度貰えることになりますでしょう?
…なにしろこれだけ経験が長いと、申立書とかほぼコピペで行けますからもっと早い
あ、失礼しました。主要な法律構成の部分はわかりやすい安定した記載を再利用できますから(遠い目)むしろ必要なのは、申立書作成前のお客さまの追及、いえ資料と説明の整合性の追究です。
そんな説明がありまして、こうした金額の請求を裁判書類作成のご依頼に載っけてもお客さまは損ぜず僕も大損害にはならない、むしろやりがいのある類型だ、と締めくくったところであります。
でもそうすると。無料相談やら完全成功報酬制を標榜してお客を集め、請求額が100万を超えていても時には依頼人をポイ捨てする上位互換のあの士業の人たちは…いったい時給でいくら欲しいんでしょう?
彼らのウェブサイトにある残業代請求、あるいは不当解雇に基づく解決金請求の頁に小さな字で書いてある、最低報酬額30万円といった表示が気になって仕方ない今日この頃です。
« 「バイト、しませんか」 | トップページ | 東京出張の日程調整を始めました »
「労働法・労働紛争」カテゴリの記事
- AIの助力で作る死傷病報告の略図(2024.05.31)
- 歓迎か謝絶か自分でもよくわからない回答(もちろん労働紛争労働者側)(2021.11.27)
- 言い放題な就業規則の納品説明-飲食店編-(2020.07.28)
- 週末の、就業規則三点盛り(2020.07.26)
- ブラック社長 of The Year 甲乙つけがたい候補の件(2018.11.30)
コメント