和解予報をもう一度
ときどき、和解予報士として仕事をしています。
もちろん僕の造語です。出てきた書類その他の要素から紛争の相手側の状況をよく読んで、主としてあまり教科書に載ってないような、。「期日の前日、バイク便で相手が準備書面を届けてきた」などといった状況下で和解成立を予報する、まぁそういった営みです。
今回は債務者側での活動となりました。今日はそうした話です。
本来なら毎月払わなければならない、あるお金の支払いを延滞してしまった方がいました。債権者は何人かの延滞債務者をまとめて、弁護士に回収させるよう行動を開始した、記録からはそんな経緯があったようです。
相手側代理人弁護士はまったく定石通りに行動を開始します。
まずは内容証明郵便で催告書を出し、2ヶ月後に支払督促をぶつけてきた、と。
お客さまが相談に来られたのは、支払督促の送達を受けた直後です。さて、どうしましょうか。
- 客観的には払わねばならないお金です。そこはご理解いただいています。
- その気になれば一括払いも可能です。それは心強いことです。
ところで本件、民事法律扶助による法律相談でお話しをお聞きしています。
支払督促って言ったってさ、と説明を開始します。
放っておいたら強制執行可能にはなるけど、相手にバレてる預金口座でもなければ差押えなんかムリだよね、と。
…給料未払いその他で支払督促の本人申立をした労働者が怒りそうな話をするわけです(笑)
この状況で上記の危険がないことを確認しておいて、督促異議をだそうか考えます。
異議を出したければ予納郵券を添えてだせ、と裁判所からの書類には書いてあります。
この千何十円、もったいないよね、という話になるわけです。なにしろ法律扶助による法律相談、つまり相談料をもらわない相談ですから、コスト最重視で。
相手の代理人の弁護士さんはなかなかうらやましい忙しいタイプの方のようです。
お客さまの債務=相手にとっての回収債権額は、弁護士さんが扱う事案としてはいささか少額です。ならば。
次の相談までに和解案を練っておくから、それを投げてみましょう、自分で、と策を授けて了承を得、1回目の相談を終了しました。
相談2回目。練っておいた和解案を示し、すみやかに相手側代理人に送付するよう指導しました。回答期限は、こちらが督促異議を出せるぎりぎり2日前にして。
…あと、内容はこちらに好都合だが決して荒唐無稽ではない分割払いのご提案、というかたちにしています。
本人が自分で代理人にアプローチしても全然構わないし、こっちの都合での分割払いの提案であっても向こうからみて乗れる条件なら乗ってくるから大丈夫、支払督促にはわざと異議を出さない旨を示しておけば、先方も督促異義後に訴訟起こして和解するのとほぼ同じ内容を持つ和解にたどり着けるから、きっと応じてくるだろう、と予報を出して2回目の相談を終了しました。
で、回答期限1日後の今日。
予想通り=こちらの提案通りの案が出てきた、とお客さまから連絡がありました。
ただし一点、予想を外しました。
先方から出てきたのは和解契約書ではなく、債務承認弁済契約書だった、と。まぁ中身は同じだと確認したので、これに応じて終了していい、とメールで指示を出しました。
もしわからないことがあれば、3回目の法律扶助による法律相談やりますから来てください、と冗談で付け加えたことであります。
支払督促と裁判外の和解をうまく組み合わせると、公正証書を作るよりラクに「不払いがあったときは強制執行できる内容を持つ、相手と合意した約束」を作ることができます。当然ながら、相手とは最低限の=それこそ公正証書を作ることに合意できる程度の協力は得られる関係にある必要はありますが。
こちらの方式は、債務者側はたんに支払督促をご自宅で受け取っていただけばそれでよく、あとの契約書のやりとりも郵送で済むため平日昼間にみんなで仲良く公証役場に行く必要がない、ということで債権者側ではときどき使っていたのです。ものわかりがよくて仕事を早く終わらせたい、いえお忙しい方が債権者側代理人だときっと成功するだろうな、と見切って仕掛けたらそうなった、めでたしめでたし、というお話しです。
ほんとうは和解案を書面でお客さまに渡すとき、簡易援助を使えばよかった(4320円売上が増えたはずだ)というのが反省点といえば反省点でしょうか。
ウェブには出ていない情報なので、これもどこかで記事にしておきたいと考えています。
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