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初夏の自由研究 開始の件

昨日は補助者さまの出勤日。贈与の登記申請書を作る彼女に、精一杯の笑顔で話しかけてみます。

「児湯郡西米良村の電話帳の世帯カバー率を知りたくありませんか?」

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・・・

・・・・・・

発言の不適切さを自覚させるに十分な、おそらくは1.3秒ほどの沈黙の後。
彼女のおとがいが右に振れました。ややあって、つぎは左に。

どうやら趣旨説明が必要なようです(相手が誰でもそうすべき、またはさっさと前言撤回すべき状況です)

問題意識は引き続き、不動産登記にあります。相続登記をしていない隣接地の所有者など、登記上の名義人として現れてくるが追跡が困難な人の調査に電話帳を活用し、その方法をまとめてコンテンツにしよう、というのがこの連休の自由研究なのです。

ちょうど登記のご依頼が一件、どこか他事務所に行っちゃったことですし、時間はあります(笑)

この自由研究の前提として、おおざっぱな時期を区切って「ある自治体内の世帯数と、対応する電話帳に収録されている個人名の件数の比率とその変遷」を知っておく必要がある…と考えたのです。

で、冒頭の発言に至った、と。

西米良村を調査対象にしたのは、林業が主産業だった集落で大正以降、市町村合併を経験しておらず人口もあまり多くなく村域の一部が別の市外局番をもらってるようなこともない、で、僕も一度は行ったことがある…そうしたとっても適当な判断によります。特に選定の必然性はありませんので、たまたまこのブログを見てしまった同村ご関係者の方がいるならご安心ください。

で、客観的には当事務所になんの関係もない村の電話帳を昭和44年から平成28年まで6通りもコピってきた僕が何をしようとしているか、をまず補助者さまにはご納得いただかねばなりません。

以下、彼女への説明の要約。

  • 我々が普段目にする「不動産の登記名義人」は、過去の一時点における住所と氏名の組み合わせで表示されています。
  • しかしながら、たとえば確定測量への立会要請でも仮登記の抹消でもいいのですが疎遠な他人として現れてきた登記名義人に連絡を取りたいと思っても、前項で読み取った住所から転居したあと5年経てば住民票は請求できません。調査者がヘタレだと比較的簡単に調査不能になります。
  • この点、実務上の対応としてはNTTの電話番号案内に聞いてみろ、などという記載が散見されますが、振り込め詐欺対策として電話帳や番号案内の不記載が推奨されている昨今、これに期待するのは野暮というものです。まして戦前から共有林の名義人だったり農地改革で土地もらった人間がまだ生きていてそいつが電話番号の案内を希望しつづけて健在だ、なんて間抜けな妄想誰がする、と言わねばなりません。
  • だったらあとは現地を訪問して古老だの精通者だのに聞いてみろ…ってそんなヒマ誰があるもんかよ民間人に(失笑)、とここでは言っていいでしょう。もちろん行政事業の執行のためにそうされる営みには敬意を表しますが、この経路でハッピーエンドにたどり着くことは今後どんどん難しくなります。事情を知ってるひとがこの世からいなくなっていくわけですから。
  • そうした状況下で我々が手に入れられる「過去の電話帳」は、調査したい自治体内の多くの世帯をカバーする公開データベースにならないか、なるとしたらどう使えばいいかを考えたいのです。
  • あなたと一緒に。

以上。当然ながら納得は得られませんでした(笑)

これで諦めたら本職の沽券にかかわる、ということでおやつの時間の話題は引き続きこれ、です。試しに昭和55年の「あ」の欄に載っている人の行方を追ってみます。

  1. Aさんは、30年健在。ずっと同じ名前が載っています。
  2. Bさんは、次の10年で相続発生の模様。同じ電話番号で同じ名字、ただし違う名前の人がその電話番号を使っていることが読み取れたから。
  3. Cさんの事情はもう少し複雑。同じ電話番号で違う住所、異姓異名のDさんが10年後にその電話を使っています。
  4. ではそのDさんがどういう経緯でその電話番号を使うことになったか?これは電話帳をさらに精密に検索すれば、たぶんわかります。各年の電話帳を追っていって、Cさんの名前が消えた翌年に同じ電話番号でDさんが使用開始していればなんらかの名義変更手続きを経てDさんに加入権が承継されたと推定すればよく(つまり、CさんとDさんには関係がある)、数年間その電話番号が使われずにDさんが使用開始したなら両者は無関係で単に空き番号が割り当てられた可能性が高まります。

少なくともBさんのように、もともと探したかった人が死亡してしまって順当に相続が発生したような事例なら、複数年の電話帳を用いることで死亡者からその相続人の1人を追跡できるのではないか、さらには電話番号のつながりを調べることで、名字や住所が違っていても関連は追えるぞ、と騒いでいるうちに。

普段は1時間弱の休憩時間が、1時間半経っていたことに気づきました(^_^;)


さて、今日からしばらくのあいだ、上記の調子でごくごく一部の人には有用かもしれない、残りの圧倒的大部分の閲覧者の皆さまには本当に無用な調査と情報の掲載を続けます。あらかじめ謝っておいたほうがいい気分が自分でもしますよ(苦笑)

これは例によってニッチなコンテンツに育ててちょっとしたご依頼に結びつけることを狙っているだけですので、ゴールデンウィーク明けには平常の記事に戻します。旅や訴訟やPCの修理がお好きな方には、またそのころ当ブログにお越しください。

記載を忘れるところでした。昭和55年の国勢調査によれば同村の世帯数は800超、同年の電話帳に記載の個人名は(本職が数えたところ)700超、控えめに見てもこの時点で8割超の世帯は電話帳でカバーされている、ということになっています。

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