日本で生まれた未成年外国人の代理権限証書
表題の件。先月お受けした不動産登記はつぎのようなものでした。守秘義務に反しないように一般化します。生前贈与の案件、と思ってください。
- 不動産を贈与する人は日本人の成年者です。
- 受贈者=不動産をもらい受けるひとは日本国籍はなく、就労可能な資格を持っている人とそのご家族。うち1名が、日本で生まれた外国籍の幼児です。
受贈者側が日本人ならよくあるパターンです。幼児とその両親が記載された戸籍謄本を取得して、両親の法定代理権を示す代理権限証書として登記申請書にくっつけるだけです。
ですが、日本国籍のない日本在住者の住民票はあっても戸籍の記録はそもそもありません。
だったら両親の法定代理権を明らかにする書類をどうするの、という情報は、ウェブにはあまりはっきり書かれていません。この情報をウェブに放つ価値はありそうです。
外国で生まれた外国人の未成年者、ということでしたら原則通りにするしかありません。戸籍制度がある国なら現地の官公署でその記録をとり、そうでなければ親子関係について現地の公証人なりその外国の在日公館等で公証をうけて、それを日本語訳した訳文を添付して親子関係を明らかにする、ということになります。
もちろん本件でもそれをやっていいのですが、外国人が日本国内で出産した場合も日本人と同様に出生届の提出はなされます。その記載事項証明書を取得すれば、子供の氏名・生年月日と両親の氏名など、親子の関係がわかるひととおりの記載がなされています。もちろん、日本語で。
そんなわけで、これを戸籍謄本に代えて、その外国人親子の関係を示すもの=親の法定代理権を示す代理権限証書として不動産登記申請書に添付したところ、申請そのものはつつがなく通りました。これが添付書類になることと受贈者について日本語の通称名を記載した以外は、日本人相互間の不動産贈与の登記申請書とぜんぜん違いはありません。
ただ、これはこれで問題があるような気はするのです。
…などと知ったふうなことを、申請通過を確認してから言う態度に問題ないのか、という点からはそっと目をそらしましょう。
さて、出生届の記載事項証明書は、あくまで『子の出生時点での』親子の関係を示すものにすぎません。その後片方の親が死亡するとか、子供が養子に出されるなどすればその時以降の法定代理人が誰かを示す書類とはならない、と考えなければなりません。
今回お受けした外国籍の方の国の家族法では、子が養子に出された場合は養親が親権を行使し、実親は法定代理権を失う、とされています(その養親が死亡したりすればまた別のようですが)。
こうした法律を持っている場合、ある時点での『親に見えるひと』の子供に対する法定代理権は
- その親に見える人が、子の出生時点でその子の実親で
- 贈与契約や登記の委任をする時点においてその親が親権を失うようなイベント(死亡なり養子縁組・その解消など)が発生していない
ことの双方を明らかにしないと、ほんとうはいけないような…気がします。
が。しかし。
今回の登記申請では、
- もうそろそろ保育園にいくんじゃないのかな(遠い目)
という年齢のお子さんについて、出生届記載事項証明書を代理権限証書にして申請が通ってしまいました。
確かに不動産登記で添付する戸籍謄本の発行時期が問われることもないので日本国籍がない人にだけそれを厳しくする道理もないのですが、戸籍と違って出生のあとは絶対にアップデートされないデータ(出生届を出した時点の情報だけが記載されている記載事項証明書)をつかって、じゃぁ子供が17歳になったときでも親の法定代理権を明らかにできるのか?と言われたら…
そうした不動産登記のご依頼はちょっとね、などというと、きっと補助者さまに笑われることでしょう。
最後に、当事務所ではごくふつうの不動産登記のご依頼を積極的に扱っておりますほか、あえて土地家屋の名義変更を自分でやってみたい、という方に登記相談を行っております。それぞれ皆様のご依頼をお待ちしております(笑)
« 大阪駅から名古屋駅へ | トップページ | 単品の天ぷらには事前の予約を要する件 »
「不動産登記」カテゴリの記事
- 相続人申告登記の受託費用・手続きを来所不要とする扱いについて(2024.03.31)
- 申請用総合ソフト:バーコードリーダを使用せずに行うQRコード読込の導入事例(2024.03.21)
- 年に1回しかない会社設立登記をQRコード付き書面申請にした代書人の末路(福島中通り出張2泊3日 2日目)(2023.12.11)
- 抵当権抹消登記の完了が飲み放題500円程度には嬉しいわけ(東京福島出張7泊8日 3日目)(2021.11.05)
- 非代理案件で用いるQRコード付き商業登記申請書作成代行に関する考察(2021.10.24)
コメント