制度の数字(または、労働紛争における不都合な真実)の把握と共有に関する件
先日、謝絶にした問い合わせ。労働者側からです。
- 入社後まもなく解雇になった、と。
- ついては会社に●00万円ほど請求できると考えてるがどうか、と。
倒れそうになるのを我慢して「当事務所ではそうした相談で10万円を超えて請求を実現した事例がありません」とだけ返信したことであります。
テキストメールだったので上記の部分を赤い字や四倍角にできなかったのが残念です。
どうしてこんなファンタジーを着想できたのか、あれこれ検索したらいくつかのウェブサイトがヒットしてきました。『不当解雇 慰謝料 相場』でググった最上位(本記事公開現在)に出てくるそのサイトでは、曰く『不当解雇の一般的な慰謝料は50万~100万』であると。
倒れそうになるのを我慢しないと読めないそのウェブサイト、実は当事務所の給料未払に関するコンテンツを丸ごとパクったうえに、理解できなかったらしい部分だけ削除して意味不明な文章に仕上げて公開した前歴があります。
おそらくはクラウドソーシングか何かで素人が書いた(か、パクった)ゴミのようなコンテンツをたくさん買い集め、ろくすっぽ編集も校閲もせずに公開している…が、情報量は多いからコンテンツマーケティングの役には十分立ってるわけです。
で、そのWebマーケティング会社、労働問題のほかにも離婚・相続税・交通事故・相続・刑事事件・債権回収・債務整理といった分野でそうしたゴミコンテンツを順調に増やしています。各所で間違いだらけの。同業者の皆様には、間違い探しと思って見ると楽しめるかもしれません。
で、そんなサイトでもアクセスさえ集めることができれば、自力でコンテンツを持てない士業の方が広告を出稿する、それらのサイトはそういうつくりです。
見方を変えると、労働者側代理人がそのサイトに出稿してるのを見た場合、そいつの能力をある程度疑っていいのではないか、むしろそうした方向で役に立つウェブサイトなのかもしれません。
さて、では実際にはどうか、というと。結構な本が昨年出ました。すでに当事務所のもう一つのブログでは昨年紹介しており、ほぼ一年経ったところでこちらでもご紹介しましょう。
過去10年の判例雑誌に収録された440件の事案を整理したという同書によれば、収録されている89件の解雇事案で慰謝料請求が一部でも通ったものは33件。
そう、たとえ5万円でも10万円でも、一部請求認容、と考える…プロの用語で『請求が認容された』のが、33件です。
- 慰謝料の相場は50万から100万♪無料相談はサイト掲載の優秀な弁護士へ!という見た目は綺麗なウェブサイトと
- 慰謝料請求?3分の2が蹴散らされてますが何か?と有料相談で遠い目をしながら参考文献を投げ出す代書人と
どっちを信じたくなるかといえば…そりゃ断然、前者です(苦笑)
なんだか当事務所が流行らない構造的な理由にもたどりついてしまっていますが、それはさておいて。
もう少し、信頼のおける統計や研究から、定量的な数字を示して相談者の誤解や幻想を打破する態勢を整えたほうがよさそうです。
ブログでは、これまでにも検察統計から『労基法違反で書類送検されたって3分の2は不起訴』などと身もふたもない情報を記事にしたりしていましたが、これはお話のネタにとどめるのではなく、労働者の意思決定に影響を与える情報として扱わないといけないような気がしてきました。
当事務所のウェブサイトには毎日、『給料未払 刑事告訴』などというキーワードで検索してくる方がいるのです。
それ無理。違うから。
と彼らが正しく把握するようなコンテンツを持ちたいな、と考えています。きっとこうしたファンタジー(給料不払い状態を作った経営者を警察がしょっ引いてくれるような)を妄想している人、おそらくはこうした都合のいい妄想が吹き飛ばされて現実に直面するタイミングが悪ければ、そこで泣き寝入りに走りかねません。送信フォームからの問い合わせの段階で、そうした方もときおり謝絶にしています。
あ、やっぱり当事務所が流行らない構造的な理由にもたどりついてしまっていますが、それはさておいて。
手始めに、労働政策研究・研修機構が出してる報告書を借りてきました。PDFでも手に入れることができるそれは、『労働局あっせん、労働審判及び裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析』です。
次回の記事ではここから、興味深い数字をいくつか選んでみようと思います。その数字が誰にとって不都合な真実であるかはさておき、自分でもちょっと意外な結論にたどり着くことができました。
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