その一件のシェア(開廷表調査1週間目)
ここ2年ほど、名古屋簡易裁判所における労働関係訴訟(事件名からそれとわかる、労働紛争に関する訴訟)は一週間あたり2件程度にとどまっています。同じ事業主が被告になる事案が同時期に出てくれば件数ベースでは若干増える、そんな感じ。
今年も開廷表調査をはじめました。その1週間目は、簡裁では2件の未払賃金請求訴訟を確認したのみです。で、その2件の被告が同じ。そうすると?
件数ベースではおおざっぱに年間100件、事業主の数を基準にすればもう少し少ないこうした事案があるとすれば、新たな1件の提訴で1%のシェアが獲得できることになるわけで(笑)
先頃めずらしく僕が訴訟代理人になる訴状を簡裁に出してきた僕としては、そうしたことを考えずにはいられません。きっと登記事件数のシェアが絶望的に低いことへの反動です。
一方で、ブラック企業がこれだけ社会問題化してきたのに簡裁民事訴訟という分野ではもう全然事件数の増加に影響していない…ひょっとしたら、簡裁民事訴訟全体の件数の減少とペースを併せて収縮しているかもしれない、そんな現実にちょっと焦る、そんな状況ではあります。
極論ですが、社労士が労働事件の簡裁代理ができるようになったらここが増える、なんてもう全然考えてません。あっせん申し立てに関する関与状況の統計データを見てれば代理人になれる有資格者を増やせば代理人をつけて申し立てられる事件が自動的に増えるわけじゃないことはよくわかります。
一昨年ごろまで九州北部で問題になってた、社労士による労働審判手続申し立ての『サポート』みたいに、合法であれ非合法であれ関与したけりゃ関与してしまう、という一面を一部の社労士が持ってるとすれば、そうした社労士が簡裁民事訴訟のサポートを大々的に扱わないのは連中にとっても美味しくない市場だからに決まってます。
誰々を何々の手続きで新しく代理人にできるようにすれば云々、という論理構成だけならすでに●●書士が使って破綻してる、と労働関係訴訟に限っては言えるでしょう。
もっとひどいのかもしれません。
ひょっとしたら、10年前よりも人は民事紛争の解決を訴訟やら(地裁以上の審級では、訴訟と半自動的にくっついてくる)弁護士やらによって行うことを避けるようになってしまっているのでしょうか?ここ数年の訴訟事件数の減少は、もう過払いバブルの終焉だけでは説明できない気がします。
少なくとも、過払いバブルの時期にあれだけ訴訟があった=一般の消費者が訴訟や訴訟代理人と関わる機会を持ったことは、まさに一過性の現象で終わったようにも思えてなりません。
ひょっとしたら裁判所や訴訟に関与する職業の人たち(僕も含めて)は、バブルに踊る過程でこうした利用者から悪印象を持たれた、とか?
…であれば司法書士も弁護士も、溶け崩れる市場の上でむなしいポジショントークのぶつけ合いをしてる、ということになってしまいます。元裁判官側からこの可能性について指摘が出てきている(紛争解決手段としての民事訴訟が、市民から選好されない傾向が出てきている)ことにもう一度注目しなければいけません。
実は地裁でも、労働関係訴訟の期日が開廷表に出ない=傍聴可能な期日が設定されない日が2日出てきています。地裁以上の審級では労働訴訟の件数は減ってきた、ということかもしれません。名古屋ほどの大都市にあっても、裁判所にぷらっとでかけてこうした訴訟の傍聴やってくる、ということができない、と考えたほうがいいでしょう。
いまのところ地裁では水曜日に合議事件の、木・金曜日に単独事件の期日が入りそう、ということでこれはもう3週間調べて傍聴の要領を説明するコンテンツに反映させる予定です。一般企業が被告になる訴訟(労災補償等の不支給処分取消など、国が被告になる訴訟を除いた労働関係訴訟)は今週、ニュースになった1件を含んで6件の期日が入っていました。
うち2件が、原告本人訴訟。被告には代理人がついています。原告側に代理人あり/被告側本人訴訟なのは1件。
こうした割合の変化にも興味があります。
ただ、当事務所にくるお問い合わせを見ているかぎり本人訴訟とそれを希望する人のレベルはこのところ二極分化が激しく、労働事件・そうでない事件にかかわらず関与をためらわれるほうが多くなってきた印象があります。
これは、労働訴訟にあっても多すぎる情報とそれをちゃんと自分のものにできる人なのかどうかに影響されているはずです。
今夏から僕のところでも経営側での関与をウェブ上で標榜する方向に舵をきったため、原告側=労働側で仕掛ける訴訟の内容を研究して、どんな態度をとるか決められます。応援するにせよ問題視するにせよ、ある程度まとまった件数の訴訟記録を閲覧してみたいところです。
労働側でも経営側でもいいから、少しは健全に労働関係本人訴訟が育つようになにかできないか…とか言いながら。
いろんな人の検閲に備えて『司法書士は地裁裁判書類の作成において、独自の法的判断で書類を作れないこと』をお断りしておくページをどんどん増やしているヘタレな自分がいます(苦笑)
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