手抜きの向こうにある墓穴
ただいま残業代請求を準備しています。
裁判手続きで主張したい労働時間数と、手持ちの複数の記録の不整合を表にまとめてお客さまの釈明、いえ説明を求めるメールを発して今晩の仕事もおしまいです。
-気付けば出張三日前。高速バスネットで早売3の予約も終えました-
きっとこのお客さまは、シャープなレスポンスを返してくれるはずです。多少の齟齬はあっても説明可能な範囲におさまってくるはずですので、特に心配しません。のんびりブログなど書いていられます。
そうでない場合に問題があります。
労働時間の記録に例を取れば、その記録が見かけ上正確でなく正確でない理由が僕にも示されないようなのは最悪です。
お客さまに説明を求めるのですが納得いかない場合、お客さまから確認したとおりに『これは必ずしも正確な記録ではない』と備考を付記して出すこともあります。
なにしろお客さま自身がそう言った、ということで僕はそれを喜んで代書するわけです(ええ、喜んで)
労働紛争に関してウェブでさまざま情報を探しておられる素人の方々がきまって想定しないのは、皆さんには敵がいてあなたをさまざまな方法で刺しにくる、ということです。
だから、在職中の仕事やその記録の収集や裁判手続きの準備を適当にやってアラがある状態は僕のところで=裁判所に持ち込む前に対処できるだけしておくべきだ、と。例えば正確でない記録を出したいなら、相手からそう言われるまえにこちらから言った方がまだましだとも考えています。
こうした助言に納得されない場合には上記カッコ書きのような注記を提出書類の中に入れられるよう、僕がどこかで努力するかもしれません(遠い目)
とはいえ僕は特に地裁案件で勝手な法律的判断を出せない立場(司法書士の裁判書類作成はそういうものです)なので、たいていはお客さまへに対する提示資料の不整合箇所の指摘あるいは質問という形を取ります。
で、不満はあるが逃げ腰ではない状況下で質問等の件数が著増する、と(苦笑)
この事務所でお受けした労働関係の裁判手続きで所期の成果を挙げない方に共通する要素が、「ほどほどにやったけど、もういいではないか」という気配です。厳しく言ってしまえば手抜きです。
- ほどほどに自分の解釈で労働時間を記録したからいいではないか、残業代請求できるだろ、とか(僕が理解できない解釈は、きっと裁判所にも理解不能です)。
- ほどほどに仕事をサボってたが、これは代書人に伝えなくてもいいだろ、とか(会社側であら探しされるほど結論が不利に傾きます)。
- ほどほどに遅刻はしたが、解雇無効を主張してもいいだろ、とか(心情的には会社側を応援します。受託せず)
- ほどほどに協力者を捜してみたが、一人か二人でいいだろ、とか(声かけをサボった三人目が勝利へのカギを握っていたりします)
- ほどほどに書類作ってもらったが、もう書かせなくてもいいだろ、とか(これは必ずしも結論を左右できるものではないのですが…一種の残尿感のようなものが残ります。僕に)
最後の一項はさておいて。ご依頼をお受けしていて、単にお客さま側の作業が遅れる程度ならいいのですが(むしろ自分の都合であおってくるよりいいです)このくらいでいいや、と適当に流されるのが困るのです。
それで解決金の額を減らすなら、いささかもったいないことだと思っています。
少しお話しが変わります。
今月終了した労働関係での裁判書類作成は労働審判2件、新たにお受けしたのは簡裁での訴訟1件・労働審判1件となりました。
経営上好ましいことではあるのですが、ある程度金額がまとまった残業代請求や正社員の解雇のご依頼が少し戻ってきている感じがします。もちろん、人の不幸なので素直に喜ぶべきものではありませんが。
完全成功報酬制と電話無料相談を標榜する全国展開型の法律事務所が、この分野を手じまいつつあるのかもしれません。この人達が小額の依頼を訴訟にしていないことは過払いバブルとの大きな違いとして把握されていたのですが、受任しても儲からないことが広く知られてきたのかな、と推測しています。
この分野では手抜きが上手にできないことが知られてきた、というだけかもしれませんが。
そういえば、3年前には解雇や残業代請求の相談無料と標榜していた大事務所のラジオCMも…いまはB型肝炎がテーマですか(苦笑)
見方を変えると、あちらの業界には逃げ足の速い大事務所があって、その動きを少し遅れて他事務所の集団がついていっている感じもします。
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