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文案が選べます

お客さまの態度や方針に否定的見解を示すには、いくつかのやり方があります。

僕のところでたまに行うのは、お客さまの問題点を思いっきり指摘して当初案とは全く異なる文案を提示することです。

お客さまにすれば論調が全然違う(場合により、自分が糾弾されてる)文案が転げ出てくることになるわけではありますが、僕としては既に提示済の文案と新たに示された文案から選択可能、という立場を採っています。

…そう、あくまでも自由に選べる、と。選んだ先の一つが地獄の門だなんてだれも言ってません(遠い目)

先頃終了した地位確認請求労働審判事件のお客さまには、もう少し丁寧な方針をとりました。

大きく分けて3つの文案をお示ししたのです。

…他事案比1.5倍の否定的な見解を示したかった、というわけではございません(遠い目)

  • 第一案は市販の書式集に近いもの。こちらの弱点など言及しません。
  • 第二案。まずお客さまの側にある問題点を積極的に取り込んでいます。
  • 第三案。労働者側・使用者側の問題点とそれが生じた経緯について第三者的な立場から解説を加えたもの。裁判書類というよりは、大学時代にやった社会調査のレポートに近いスタンスです。

ちなみに各案を一通り見ている補助者さまには、その変化をよく味わわれたようです。雇い主の人格が多重だと疑われてないことを祈らずにはいられません。

各案それぞれに狙いはあります。

  • 第一案はお客さまの心情に悪影響を与えません(笑)ま、それだけの裁判書類
  • 第二案はあらかじめ予想される反撃に備える長所を持ちますが、第一案の後にお示しすることで落差が際だちます。敵に取られるくらいなら破壊してしまえ、という焦土作戦を連想する方も出るかもしれません(汗)
  • 第三案は、当事者が書くものとしてはあまり見ない内容に仕上がることがあります。自分と相手がやらかしたことに妙に突き放した解説記事が加わっている、と。ページ数が増大し、テンポよく読み進められなくなる可能性が高まるのは短所です。

で、お客さまはこのうちの一つを選び、このほど(僕の評価としては)裁判所の印象を致命的に悪くせず、相場並みの解決を得ることに成功されたようです。

…どれを選んだかは当然、ヒミツです。

特に労働審判のような速攻型の手続きでは、会社側から思わぬ反撃を喰らって右往左往するよりは労働者側で把握できている自分の弱点を羅列してあらかじめ対策してしまう、という態度は悪くないと思っています。最初からそうした方針が採れるなら、文章の表現も多分に調整できるものなのです。

当然ながらお客さまが採用しなかった文案は、僕にとっては無駄な作業=ボツ原稿なので、否定的見解だのなんだのとはいえそこそこ勝ってほしい、と思っている方にしかこうした作業はしないのですが、と言い訳しておきましょうか。

電話相談無料で完全成功報酬制の全国規模のローファームが好んで口にしそうな、「労働者としての権利を専門家として強く主張する」だけの書面は第4案にも第5案にもありません。そんなもんなら、素人にも書けます。

労働審判手続は決して簡単ではありません。自分に権利があると呑気に信じている脇の甘い人が順当に失敗する、ということは労働側でも当然ありえます。わけもわからず言いたい放題言った結果、周りの悪印象を招いて解決金額に影響することもあるでしょう。

もちろん、黒いものを白いとただ書いただけでそれが通っていく世界でもないのですが、黒っぽいものを「黒いが実害はない」または「黒くは見えるが以下の理由があり、労働者側にのみ責任があるわけではない」等の解説を加えることでいくばくかの対策はできる…らしいのです。

依頼人の秘密ではないので付け加えますと、今回も相手方に代理人がつき、彼らが提示した金額は裁判所からみて、若干の増額を要するものだったようです。

で、彼らは我が第一案に近い態度の書面を出してきています。よくある話です(苦笑)

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