裁判所提出用 反訳書作成覚え書き その3
時折仕事をくださる他士業の先生。一昨年からのおつきあいなのですがなかなか寛大な方のようです。
昨年は(株式会社の)役員の任期管理はしているか、と問われて「やったことはないし、その前に僕の事務所がなくならないように気をつけたい」とお答えしたところ、他に何か定型的なお仕事をくださるとのことでした。
で、先週末。その先生からご紹介のお客さまがやってきました。1時間ほどの相談を終えて、最後に念のため付け加えます。
「僕の事務所では開業12年間で、今回お話しした社会保険新規適用の届出は1件しか出したことありませんが、(ご紹介の)先生からはお聞きになってませんか?」
僕はあらかじめ、このお客さまを紹介されるにあたってその先生には正直に告げてあったので…この事務所は司法書士もやってるんですよ、というのと同じ調子でお話ししたのですが。お客さまの反応はまぁ、皆様のご想像にお任せします。
聞けばその先生、お客さまには僕を含めて2件の社労士事務所を紹介しており、僕のほうは
「話がしやすい人だから」
ということでのご紹介だったとのこと。先生、なかなか手堅いです。
このいささか痛いインフォームドコンセントが創業2件目の新規適用の受託に結びつくかどうかはさておいて、こうした発言を録音して反訳書を作るなら上記の1箇所だけ文字の大きさを四倍角にして反訳書を作り、立証趣旨を
- 被告すずきに通常の社労士業務の経験が少ない事実
として証拠説明書をつけるといいのでしょうね。
さて、反訳書作成の説明の続きです。
録音結果がスマホやICレコーダーに入ってる、じゃあこれをどうやって裁判所に証拠として提出する?というお話しです。
当然ながらダメなのは、
- 録音結果(音声)だけ提出する
- 反訳した内容だけ提出する(録音結果を提出しない)
この二つです。反訳した内容だけ書証として提出することは不可能ではありませんが、それをやっても本人作成の陳述書と同じ程度のもの=適当に書いたものと同じくらいにしか扱われてないでしょう。録音内容のみ出したい、という場合は即時にやさしく突っ返されます。反訳書を出せ、と。
高裁書記官室のカウンターでそんなやりとりをしている不幸な素人さんを一度見たことがあります。
録音結果を聞き取って文字にすることはできるとして、録音内容はどうやって提出したらいいのかについても実は明確な規定がありません。しょうがないので、以下のことには気をつけます。
- 録音時間またはカウンタ(カセットテープの場合ですが、もうありえないでしょう)で反訳書と対照して再生できる形式であること
- 裁判所にも被告(またはその代理人の事務所)にもあるような機材で再生可能であること
- 提出する媒体として、入手・保存しやすいものであること
これらを順当に満たすものとして、僕のところでは録音結果を音楽用CDの形式で焼いて提出しています。
なかにはPCで再生可能なMP3やWAVE形式のファイルをCDやDVDに焼いて出す人もおられるようですが、過去にはPC用のデータCDを誤ってふつうのCDプレーヤーで再生しようとするとプレーヤーを破壊する、と言われていたことがあります。
そうした争いを作るのは嫌ですしWindowsが標準で持ってるメディアプレーヤーは当然に音楽用CDを再生できるので、録音時間の上限が80分弱にとどまることを除けば音楽用CD形式による提出には、さしたる不都合はありません。
録音時間が79分までであれば、CD-Rに書き込めるドライブとWindows7搭載のPC(Windows Media Player)を使って特に問題なく音楽用CDを作成できます。『Windows7 音楽CD 作成』で検索してみましょう。
スマートフォンではなくICレコーダーで録音された場合に、メーカー独自のファイル形式で保存されていることはあります。大抵はPCにデータを移送する際に、レコーダー自身か添付のソフトでMP3などPCで使えるファイル形式への変換ができるようになっています。
あまりやりたくないのですが、そうしたツールがない場合でも3.5mmのイヤフォン用ピンジャックはどんなICレコーダーでも持っています。それとPCのライン入力端子をケーブルでつないでICレコーダーで録音内容を再生しつつ、それをPCで録音し直す、ということにすればよく、PCへのデータ移送の点はしばしばお客さまから聞かれるのですがここで作業が頓挫することはまずありません。
MP3かWAVE形式で音声ファイルをPCに収容することと、それをCDに焼くことはできるとして、録音時間が音楽用CDで対応できる時間数より長い場合はどこかでファイルを切ってあげる必要がでてきます。
これとノイズ除去のために、フリーソフトのAudacityを使います。ここで説明するより検索をかけてもらったほうがわかりやすいので概要を説明すると、
音声ファイルは録音時間で範囲を指定して、削除やコピーができます。200分の録音結果から70分10秒・70分10秒・60分ずつの音声ファイルを切り出すことはとても簡単です。『カギログ』さんの記事が丁寧だと思います。
波形が現れている部分をマウスでドラッグして範囲選択することもできますが、正確な時間数のファイルを切り出す場合には用いません。
エアコンやモーター音、電子回路由来の雑音など、音質・音量が一定のノイズは減少させることができます(が、原音も損なわれると考えなければなりません)
この説明は『無料効果音で遊ぼう!』さんのサイトにとても詳しい説明があるのですが、僕も全容を理解できていません(苦笑)
かろうじて思うように使えているのは『ノイズの除去』です。これをやって背後の雑音を少なくするだけでもだいぶ聞きやすい録音結果に仕上がります。
このツールを効果的に使うには、『消したい雑音が一定の音質・音量で、その雑音だけが何秒か録音されていること』が重要です。
たとえばファミリーレストランでの会話を録音しようとした場合、隣にいる他人の声や通過する車の音はこのツールで消せません。エアコンの音や録音機材固有のノイズは減らせますが、その音だけが入っている状態が1~2秒録音されている必要があります。
ファミレスや喫茶店で誰もしゃべっておらずその他の突発音もない3秒間、というのがうまく録音できるかは運次第です。相手より少し早く到着しておく必要があるかもしれません。考え方を変えれば、会話のはじめからおわりまでだけを録音するより、会話の前後にそうしたムダな部分を録音しておいてノイズ除去に利用し、あとで会話部分の前後だけカットしたほうがいいと言えます。
そうやって録音した、余計な声や音が入っていない雑音部分をノイズプロファイルとして適切に指定できるかがノイズの除去のツールの効果を左右します。
このほか、聞きたい話者の話し声が小さければその区間だけ増幅、大きすぎる場合は正規化、その気になれば男の声を女っぽくしたりその逆も可能ですが、こうした操作を行うほどもとの音源からは遠ざかるし、上記リンク先のサイトでも強調されている『完全にノイズ”だけ”を削ることはできない』ことは意識しておかなければなりません。
ノイズ除去がちゃんとできるだけでも、適当に録音した雑音だらけの会話から聞き取りやすい会話にだいぶ近づきます。反訳書作成前にやっておけばイライラがだいぶ減少するのですが、僕の場合は反訳作業がだいぶ終わってからノイズ除去ができるようになりました(苦笑)
次でこの記事を終わりにできるでしょうか。反訳書作成のツールとしてもう一つ欠かせない『Okoshiyasu2』と、文字起こしについて説明していきましょう。
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