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異議事件三連発の謎

先週1週間の開廷表からチェックした、簡易裁判所における労働関係事件は全5件となりました。

昨年の調査では4週間で12件。例年1週間あたり2~4件弱しか観測されていないのとくらべれば顕著な増加というべきかもしれませんが、ちょっとおかしいのです。

実は上記5件のうち3件の事件番号が、(少エ)、しかも同じ日に期日が設定されていて3件連番なのです。

第6次までの開廷表調査記録を遡ったところ、この事件番号の出現歴はありません。

そう、少額訴訟判決に対する異議事件が同じ日に、しかも労働事件で3件まとまって出ているのを見てしまったのです。

異常値が出た、といわなければなりません。

よく見てみます。

  • いずれも異議申立側が個人、相手方が法人です。
  • 3件のうち2件で相手方が同じです。
  • 相手方2社はまったく違う事業を営んでいるようです。
  • 事件名は3件とも同じです。ただし、オーソドックスな事件名が付されているのでここからは訴状作成者の個性は読み取れません。

さて、つまり彼らは

  1. 少額訴訟を起こして
  2. 敗訴または一部敗訴の判決をもらい、
  3. にもかかわらず異議申立をすることを選んだのだ、と。
  4. しかも時期的に極めて近接したタイミングで。

補助者さまとのおやつの時間の話題はもちろんこれで決まり!です(笑)

一体何が起きたのでしょう?当事者以外の関与がないと発生しない事象だ、というところまでは僕と補助者さまの認識は一致しています。アトランダムに時期を選んで行動する労働者が相次いで提訴し相次いで敗北し相次いで異議申立をするなんて考えられません。

例えるなら、冴えない代書人の事務所が同じ日に三件相次いで相続登記のご依頼を受けるのと同じくらい異常な事象です。それはさておいて。

彼女は実務家がヘタを打った可能性を想定するようです。

…たとえば立証を欠いた訴状を漫然と出したのち、期日を忘れて欠席したところへまじめに対応した被告側に蹴散らされた、というくらいの間抜けであれば怒濤の三連敗+異議申立というコースもあるかもしれません。

ちなみに、立証活動をともなわない答弁書や準備書面、期日忘れてたと依頼人に口走る代理人の話は今月に入ってからそれぞれお客さまから聞きまして、(少エ)の事件よりは珍しくありません。

僕は誰かがヤミで動いている可能性を想定します。

どうしようもないNPOや適当な組合、本来なら訴状つくっちゃいけない士業の方などが巧みなマーケティングでカモ、ではない依頼を集め、見よう見まねで訴状作って出して失敗した、とか?

これは事件記録を閲覧したいよね。という線では一致したところであります。

ちなみに、簡裁では金融関係以外で件数が伸びてる事件類型は損害賠償(交通)事件のようです。

おそらくは弁護士費用特約の普及に起因するものなので司法書士がどれだけ扱えるのかは未知なのですが、食い込めれば嬉しいな、と思ってる先生方もきっといらっしゃるんでしょうね。僕は労災事案でもないかぎりはさわらない分野ではありますが、この件数の推移には興味があります。

地裁・高裁では、予想通り労働事件の件数増加はまったくみられないようです。こちらは奨学金の返還請求が伸びるのかもしれません。

それ自体はいい話ではないものの、ヘタに抵抗せず粛々と和解するなら答弁書一枚で済むので、こちらは司法書士の関与に向くかもしれません。

残り一週間、さらに調査を続けてデータを蓄積するとしましょうか。

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