基本的なごまかしをどうぞ、って?(社会保険被保険者期間のカットとその対抗措置のはなし)
先週までの勝利の残り香が、お台所の周辺に漂っています。
東海地方のお客さまからは玉葱を、関東地方のお客さまからはカレーをいただきました。お二人とも労働紛争のお客さまです。
カレーのお客さまからはお手紙が同封されていました。この方のようなご依頼をどんどん受けてほしい、そうしたお言葉をいただいたところであります。
うん。受ける受ける!
コーヒーとカレーくれるようなご依頼なら!
…失礼しました。
別になにかくれ、というわけではもう全然ありませんが今週から新しいご依頼の作業スタートです。
請求額10万円に満たない未払い賃金請求を裁判手続きに載せることになりました。当事務所では、よくあるとまで言いませんがたまにあることです。
どうしようもない零細建築業者を訴える、というこの事案、お客さまは見たところ正社員なんですが、退職時の経緯がちょっと気になるのです。
思うところあって、厚生年金被保険者記録の照会をかけることにしました。
社労士の同業者さんには日常の世界で司法書士の同業者さんにはほぼ非日常のこの記録、厚生年金の被保険者だった期間・資格取得と喪失の日・標準報酬月額といったデータが書面で貰えます。
委任状をもらえば司法書士でも(って言い方も妙ですが)年金事務所で即時に取れます。
もちろん、健康保険・厚生年金被保険者資格の取得・喪失の手続きは事業主側からの届け出が見かけ上整っていれば受理されてしまうため、実態に照らしてみた正しさという観点から見る限り政権与党の憲法解釈と同程度のシロモノとしか言いようがありません。
で、今回も。(以下、守秘義務の関係上、数値は少し変えてあります)
本件で給与明細書の記載から読み取れる、健保・厚生年金保険料の控除は4ヶ月分。
照会回答票から読み取れる、被保険者期間は2ヶ月分(汗)
つごう2ヶ月分の社会保険料をロクデナシな社長がポッケに入れた、ということになっています。
たとえば7月2日付で退職した正社員について、社会保険被保険者資格の喪失=退職の日を6月29日とごまかすのはロクデナシな会社の基本です。
これによって6月末の経過時点で同従業員は従業員の地位と社会保険被保険者の資格を同時に失ったことにでき(あくまでもごまかしですが)、会社は同月分の社会保険料会社負担分を納付する必要がありません。
ついでに従業員からは労働者負担分の社会保険料を天引きしてごまかすと心に決め、実行して保険料をポッケに入れれば会社負担分の社会保険料を免れることができるうえに労働者からは保険料相当額の賃金をピンハネできて二度美味しく(←もちろん犯罪ですが)どうせバレない、ということです。
今回の敵はこうした基本より一歩先のごまかしを見せてくれました。
入社の時にも、実際の入社月の翌月の月初に社会保険被保険者資格を取得したことにして一ヶ月分の保険料をピンハネしてポッケにいれていた、ということです。
とはいえ、僕にはバレました。やる気が出てくる事案です。
都合二ヶ月分の社会保険料が、未払いの賃金または不当利得返還請求権として請求可能、そうした状況になりました。
それを加えても当事務所創立以来最少請求額記録にはなるのですが。
ちょっと惜しいな、と思えたのは今回の厚生年金保険被保険者記録の照会、興味があるからタダでやらせろ、とお客さまに言ってしまったことです。
あたりが出たらなにか食べるものを、という特約でも結んでおくんでしたか。
土建・派遣を悪く言いたいわけではありませんが、この二業種にこうした社会保険料のごまかしは顕著です。
こうした業種からの賃金未払いその他労働問題(労働側)のご依頼に真面目に取り組みたい司法書士さんには、試しに厚生年金被保険者記録の照会をかけてみることをおすすめします。
当たりが出たらどうするか、はもちろん先生方におまかせします。
2017.6.19.追記
僕のところでは上記の通り、本件を給料未払いの一種と考えてピンハネされた労働者負担分の社会保険料を奪還する方向のほか、社労士として健康保険・厚生年金被保険者資格に関する審査請求を代行して被保険者資格を回復させる、という業務にも対応しています。ご興味のある方はお問い合わせください。
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