ものとりの基礎
そのお客さまの写真撮影技術に、不満があるのです。
その写真では売れない、とかなりはっきり伝えた覚えもあります。
※開業11年を経てなお、クライアントに白手袋投げつけるのがやめられない自分にも困ったものだと思えますが…それはさておいて。
言ったら言ったで最後まで(どちらかが倒れるまで)面倒みなければなりますまい。
さりとて、●●をどうこうすればなんとかなる、というメールを長々と書くのも勿体ないな、とお客さまの作例を眺めてみます。
文字情報の作成はそれ自体、タスクとしてお金になる、ってのがクラウドソーシングサービスの利用で身にしみてわかってしまったのです。一対一でメールを書いてる分には僕の手間が増えるだけで、収益にはなりません。
そんなわけで。守秘義務に反しないことを確認しつつ、本来ならお客さまに送るメールだった文章をブログに上げてみます。添付ファイルを文中に配置できるので、説明としてはわかりやすいかもしれません。
ものとり、とは言わないのかもしれません。商品などの品物の撮影「物撮り」(ぶつどり)です。
わざわざひらがなにしたのは当然、ウケ狙いです。
この記事では、ごく普通のコンパクトデジカメでそこそこ綺麗に…なにかのはずみで自作のネットショップに迷い込んできた何も知らない人に、何かの間違いでだったら物が売れるくらいの画質で商品写真を撮ることを目指してみましょう。サイトを開いた瞬間に逃げられる、というレベルのお店屋さんごっこサイトも世の中にはたくさんあります。
扱う商品は、手のひらの上にのるサイズのものを想定します。
作例1です。長方形(円筒形でもいいですが)の物体にデジカメで寄って、距離30cm未満でマクロで撮ったと思われる…いえ、撮ったものです。
手前が大きく奥が小さく見えすぎ、品物本来のプロポーションがわかりにくいのです。
作例2です。デジカメと被写体との距離を50cm以上に離し、光学ズームを使いました。
…そうしてほしいんです(笑)
この際、この距離でもマクロの設定をして撮影できるならそうします。ピントがきっちり合ってくるようです。
これで、まず小物のかたちを整えて撮影できました。基本的なことですが、ピントはしっかり合わせなければいけません。
あくまでもたとえ話ではありますが、背後のテーブルにぴったりあってる、ということもあります。
作例3です。上記の点には注意して、テーブルの上にホチキスを置き、照明は天井の蛍光灯だけで撮影しました。
でもまぁ、それだけのものです。
作例4。照明として、スタンドを追加してホワイトバランスを調整しました。少しつやつやしてきましたが、テーブルへの反射が目障りです。
作例5。白い布を被写体のうえに差し出して、反射を防げないか試してみました。スタンドは使用していません。
テーブルへの反射は防げませんでしたが、作例3に比べて、ホチキス本体の反射の仕方が変わりました。光の反射の仕方としてはこちらのほうが整って見える気がします。
部屋の通常の照明は邪魔だ、というならば!
作例6.ハンカチに乗せたうえで、オーブンレンジの庫内に入れてみました。
もちろんドアは開けての撮影です。加熱もしてません。
前方からスタンドの明かりを照らしていますが、なにやら金属部分がぎらぎらした感じです。
作例7.ハンカチではなく白い樹脂製シートを敷き、白い紙を立てかけた…オーブンレンジの庫内です。光源はオーブンレンジの庫内灯のみ。
ISO80、セルフタイマー2秒で三脚利用、シャッタースピード1秒の長時間露光を行いました。
左に長い影を引くのは庫内灯、つまり右側にある点光源のせいです。ホワイトバランスも調整して白に近づける必要があるほか、奥に水平に走っている紙と紙の継ぎ目がいかにも素人くさいです。
この辺で、庫内から出しましょう。
白い紙を下に敷いたほか、白い布をかぶって覆いを作り、天井の明かりで影ができないようにしました。
商品写真に少し近くなってきましたが、ホチキスの上側の反射が美しくないです。露出も暗い。これはシャッタースピード1/2秒です。
といっても長辺50cm大の段ボール箱に白い紙を敷き、直方体の6面のうち1面だけを開放して正面に向け、正面側からスタンドの明かりを照らして撮影しただけ、です。
うまい具合に奥が暗いので、絞りを開放気味に撮れば紙を敷いただけとはだれもわからないグラデーションがかかってきました。
さ、そろそろ素人さんが騙せる領域ですぜ(笑)
作例10.照明の照らし方を変えたほか、段ボール箱の中の天井にあたるところまで紙を貼りました。作例9.ではちょうど[MAX]というメーカー名のところに光の反射で生じる帯が走っていて、これを消したかったのです。
このほか、被写体の正面から照らす照明をやや低い位置からにして品物の上面に反射が生じにくくしてみました。
作例11.[MAX]の文字を作例10より目立たせられないか、光源の位置を工夫してみました。作例10では被写体やや右側から照らしていたのですが、左側からに変えています。
作例12.光源の位置を上下に調整して、被写体上部にある反射の出方を変えました。
これをフォトレタッチソフトでもう少し明るくして、商品写真にするとよいかもしれません。
作例13.は明る過ぎ。シャッタースピードを遅くしすぎ(この例では2秒にした)たり、ISO感度を上げすぎたり、露光補正の数値を上げすぎ(0から+2.0などに)るとこうなります。これダメ。
作例14.フォトレタッチソフトを使わずこのまま採用するならこれか作例10かな、という一枚です。
左上で紙が少し欠けてるのは見ないふりしてください。作例13から少し暗くなるように、というより作例12から明るくなるように、光源を近づけました。
ですので背後の影が少しでていますが、まぁ見苦しいというほどではないでしょう。
で、この撮影のために用いた設備です。当然、費用ゼロです。
三脚の上にはカメラがありました。結構遠くから撮るんだな、と思われたかもしれませんが、これはカメラの性能にもよります。世間並みの光学ズームの性能を持っていれば大丈夫でしょう。
箱の中には、今回の商品(苦笑)ホッチキスが置いてあります。
スタンドで商品を照らすには工夫が要ります。そのまま照らしたら絶対に影が出るので、これを消しましょう。
この世界でもディフューザーというのですが、光源から数cm~十数cm離して白いコピー用紙で発光部分を覆ってあげれば、箱の中は明るくはなりますが影がほとんどでなくなります。この照明の左右・高さ・距離は試行錯誤で調整します。
シャッタースピードを調整できない(特に、長時間露光できない)機種では光源の距離で調整する必要が強いと思います。
あとは、
- オートフォーカスと測光の設定をマルチではなくスポット(中央)にする
- ホワイトバランスの設定はせいぜい数通りなので試行錯誤してよさげなのを採用する
- ISOの感度は100かせいぜい200。フラッシュはたかない
- カメラ本体のシーンの設定は使わない
- 明るさ補正の数値が異なるものを何枚か必ず撮る
- 暗いなら光源を近づけてみる
こうしたことを試し続けると、そのうち何かの間違いで、いい写真が撮れるかもしれません。
ただ、今回は光源と背景で手抜きをしました。もう少し気合いを入れて撮影したい場合はグラデーションペーパーを買うか作るかする必要があるかと思います。
…気が向いたら、やってみるかもしれません。
ところで、今回の作例はRICOH CX1で撮影しました。
今回のお客さまのカメラとほぼ同世代、2009年発売開始である、ということで。
カメラに罪はない。問題は我々にある(笑)
このことを、声を大にして申し上げ、ご飯にいたしましょう。
土鍋にバターを敷き、トマトとニンニク、人参、玉ねぎ、鶏肉とコンソメのキューブ一個、水は不要、少しのお酒を入れて20分ほど煮るだけ、というシンプルな料理を補助者さまが教えてくれました。土鍋トマト、というこれまたシンプルな名前がついています。
できあがったところでとろけるチーズを載せ、CX1のダイナミックレンジダブルショットモードで撮影すると、少々暗いはずの土鍋の下の部分もわりと綺麗に撮れる、ということになっています。
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