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抵当権設定登記の周辺で

ときどきおとずれる、その法務局出張所。朝の早い時間に抵当権設定登記を持ち込む約束になっています。今月唯一の(笑)住宅取得にともなう抵当権設定登記のご依頼です。

カウンターの向こうの担当者さんに書類を渡して、

「4件です。3件目と4件目で受領書をください」

はいよ、とばかりに書類の束を受け取った担当さんが、一瞬止まります。首から上が、数度傾いたような。

ばばば!と書類を繰って上目遣いに

「これ1件目と2件目が、本人申請ってことですか?」

てへ♪ばれた…って一瞬でばれますよね。失礼ながら1件目と2件目の申請書には、少々訂正印が目立ちます。

その登記申請は、いわゆる注文住宅の新築にともなう抵当権設定登記の案件です。

こうした場合、一般的には

  1. すでに取得した土地について、土地取得時の住所から新築建物の住所に所有者の住所を変更する所有権登記名義人住所変更登記
  2. 新築の建物について、所有権保存登記(建物表題登記がこれに先行しています)
  3. 新築の建物について、土地取得時におこなった抵当権設定登記の担保に加える抵当権追加設定の登記
  4. 土地と建物について、住宅完成時に支払う資金を借り入れるために行う抵当権設定登記

これら4つの登記申請を同時に提出することにはなっています。

で、当事務所ではよくあることなんですがどこの銀行さんでも「あまり、ない」こととして、上記1.2.の登記をご自分で=本人申請で行うことにより経費を節減しよう、というお客さまへの協力として、お客さまが提出する書類を法務局に僕が持ち込むことがあるのです。

で、冒頭の情景。

銀行さんは当然ながら、大事な大事な抵当権設定登記を利害が相反する債務者(と、はっきりは言いませんが明らかに債務者)、つまり住宅ローン利用者にやらせたいはずがありません。住宅取得のときなら抵当権設定の登記完了後に融資をするとか、万事におおらかな●●金庫さんの案件で見かける程度でしょうか。

ですので最低でも抵当権設定登記だけ司法書士がやる、という線で、しかも銀行さん側からの信頼を一応確保して注文住宅完成時の登記申請を計画するにはどうしたらいいでしょう?

銀行さんにもよりますが、お客さまと打ち合わせて

  1. 銀行さんとお客さまとの抵当権設定契約書類の作成時に
  2. 僕も銀行にお伺いして
  3. その際に、お客さまには上記1.2.の登記に要する申請書と全書類、土地の登記識別情報をお預かりして直ちに点検し
  4. 先行する登記がほぼ確実に通る、と確認したうえで抵当権設定登記の書類も銀行さんから預かる

こんなことをしています。これですと、お客さまが完成させた所有権保存登記申請書類を僕が預かってしまうため、所有権保存登記申請を出さないことで続行する抵当権設定登記申請を妨害する、という選択肢をお客さまから奪えます。

イヤな言い方なんですが、こうまで説明せんでも債権者たる銀行さんは、もちろんそう認識してくださいます。それなら自分ら安全だ、と(笑)

もちろん、こうした扱いはいつでも誰でもできるとか、お客さまの側から権利として主張できるというものではなさそうです。

今回も担当さんから言われたのですが銀行さんが納得しなければそれまでですし、僕もあまりお客にやさしいとは言えないので当日あまりにもひどい登記申請書類を見せられたら訂正指示より「諦めて所有権保存登記から僕に依頼なさい」と言うかもしれません。

少なくとも、そうなりうる可能性を事前に示して(脅してなんかいませんよ)お客さまと契約しています。

こんなふうに、抵当権設定登記だけ司法書士が代理できるのがお客さまにとってもっともコストパフォーマンスが高いのですが、場合によっては

  • 建物表題登記までは本人申請可(銀行さんが所有権保存登記以降を必ず連件で出して欲しい場合)
  • 全申請について、本人申請不可!(三角定規すら使えない申請人夫妻がなんとなく自分で登記するぞ~と遠い目をしてつぶやいているにすぎない場合)
  • 抵当権設定前に融資が行われており、もう誰も急いでおらず、何をやってもよさそう(●●金庫や大企業で時々見る転貸融資の場合)

など、ちょっとしたバリエーションがあります。これらに応じて司法書士の関与の形態はある程度、銀行さんと調整できるかもしれませんが、あくまでお客さま次第ですと申し上げるよりほかありません。

この点、コメントでご質問はありましたが案件ごとに状況は異なり、担当する司法書士にもよりますので僕がお答えしてはいけないものと考えています。

そうしたわけで最初のお問い合わせの時に、ウェブサイトに書いたとおり誰でもできる、などと即答できるものではないのです…本件に関してあれこれ断言している他士業の事務所もあり、そこは本当は司法書士なんかいない、という実情もあったりしますが。

実は今月も一件、そうした「なんでも自分でできる」とお考えの方から新しい問い合わせを受けまして…受ければ数万円の案件からちょっと身を引いてみたところです。


決して誰でもできるとは申しておりません。三角定規とロットリングペンが自在に使えて美しく文字が書けるとか、二次元CADソフトを日常お使いだ(出力そのものはコンビニの複合機で出せるから無問題)、という方なら建物表題登記を自分ですることにトライするのも一応悪くないとは思うのです。

申請に通るだけでなく後日不特定多数人の閲覧に耐える、建物図面と各階平面図をお書きになれる手段を、ご自分で準備できるならいいと思うのです。

問題はそれを、なんの準備もなく着工から完成まで数ヶ月の期間を過ごすことなのです。

今年あった最悪な事例は、そうした本人申請を嫁さん(作図未経験!)に任せきりにして旦那はなにもせず、結局準備が進まずに建物引き渡し直前になって銀行さん指定の調査士with司法書士を問答無用であてがわれて出費最大、という展開でしょうか。これは自業自得と言わざるを得ません。

そんなわけで、時に厳しい立場もとりますが(数件に1件は問い合わせ時点で断ってる気もしますが)、当事務所では住宅新築に際して、抵当権設定登記以外の登記申請をご自分でなさりたい方と、協調して手続きを行い、費用を節減することに賛同しています。

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コメント

こんにちは、玲衣といいます。
まさに今、同じ状況で申請をしようとしている建築主です。
この場合、1と2の申請書は、委任状が必要なのでしょうか?
申請書を途中まで作成しているのですが、
委任状の有無が気になりコメントさせていただきました。

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