誰にでもある、最悪への誘惑
ちょっと大きな(はずだった)契約を、数ヶ月ぶりの依頼人都合で解除に踏み切った連休。
いつもよりゆっくりな仕事をしながら、補助者さまとの話題は先日の大手旅行会社で起きた事件です。
-バスの手配漏れを隠すため、クライアントである学校の遠足を阻止しようと図って発覚し、その後逮捕・懲戒解雇となった、という従業員の一件。
これはひょっとしたら、職場に原因があったのではないか、と僕は思うのです。これに対して補助者さまの評価はなかなか厳しい。
- ばれるとは思わなかったのか(ばれるに決まってるからやらないはずだ)
彼女の主張を要約すればそういうことなのですが、人間そこまで賢明にできてないはずです。
僕なんかそこまで賢明だったら今頃、県公務員上級職か国家公務員Ⅱ種にパスしてどこかの地方支分部局の課長代理くらいにはなってます(遠い目)それが何を誤って個人事業主なんかに(嘘泣き)
冗談はさておいて。人は時として、損得とか正否とかを全く、あるいはほとんど考えずに何か最悪の選択に飛びついてしまうことが往々にしてある、と僕は思っています。
問題はそこからいつ、どのようにして復旧するかだ、とも。
もちろんこれができない人は裁判所にいけばたくさん見ることができ(笑)当事務所でもときどきはお目にかかることができるわけです。
自分の立場を正当化するのに必死で決定的な破綻がくるまで意地を張り続ける馬鹿な社長とか、オレにはあんな権利もこんな権利もあるはずだ取れるだけ取りに行くぞ、とさんざん言いつのって裁判書類作成業務の費用見積もりをお出しした後で現実に気づかれる相談者…とか。
一方で、賢明な方は現実をしっかり認識されて…大体は小刻みに理想に近づこうとされます。おそらくはお客さまにとってストレスフルな営みになるのですが、僕にとってはやりがいのある仕事になります。
冒頭の事件をおこした従業員さんは、おそらくはそうしたストレスフルな営みが人より苦手だったか、その事業所がそうした営みを許しにくい環境にあったのではないか、と僕は考えるのです。これらは相互に作用しあう要素でもあるので、その職分に応じて冷静だったり賢明だったりして行動できる理想像を設定してこの従業員を非難することはできないな、と。
自分のことは一番自分がよくわかっている、などという人間は時として結構間抜けだったりします。
少なくともこういう表現で豪語する依頼人が賢明だった事例はない、というのが、この十年司法書士やっての経験です。
小刻みに理想に近づく営みがなぜストレスフルであるか。それが『いま、思い通りでない現状』を直視し続けることになるからだ、そんなお話をお客さまにすることがあります。
- 自分には残業代を支払われる権利があるはずだ、と叫ぶのと
- いいようにただ働きさせられてきた現状を認めるのと
どっちが楽か?と言ってしまえば身も蓋もないですがわかりやすいかもしれません。
前者はカンタンですしいい気分になれますが、この国の民事裁判制度では法律にしたがって主張した権利が100%実現することはあまりないようです。司法統計に見る通常訴訟の和解での終結率がそれを物語っています。
後者は結構不愉快な営みなんですが、訴訟を戦い抜くために必要な事実の聞き取りはこうしたところからはじまります。
そうしたちょっとした(または、結構大きな)不愉快さを避けた選択が…あとで好ましからざる結果にたどり着く、というだけなんです。
おそらくは、よき上司や真っ当な専門家、親しい隣人や家族の存在がそうした最悪への選択の防止につながるはずだし、そうあって欲しいものなんですが…社長や代理人がダメな人、というのもよくあることなんであまり期待できないのかもしれません。そういえば、家族内でうまく意思疎通がなされていないらしい依頼人には納得できない主張を持ち込む人が目につきます。
ならば僕自身がそうした実情をどれだけ汲んで仕事をしているか、いささか心許ないものがあります。
なにしろ自分がそうした、理想的な専門家であるかどうかは自分が一番よくわかっていないはずなんで(遠い目)
…あ、ですが。
現状が直視できないらしい相談者には、かなり辛辣な物言いをしてますね(笑)
さてさて、この連休はひたすらコンピュータ環境の整備で過ごしておりました。そうした中でもお問い合わせは何件か入ってきており、今週も新しいお客さまとの相談が設定されています。
今月のお客さまは、どんな方なんでしょうね。
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