おすすめしたい『非売品』
今月の業界紙書評欄に、3年前におこなわれた労働審判手続きに関する大規模調査の結果をまとめたものが出ていました。
各地方裁判所で労働審判手続きを終えたばかりの当事者たちに回答票を配布し、ある者にはインタビューを経て労働側・使用者側からみた労働審判手続きの印象を描き出した、つまり、実務家ではなく利用者からみた裁判手続き像をまとめた調査として希有な資料です。調査の存在は調査票をお客さまがもらっていたので知っていましたが、いいタイミングで資料にまとまったことに気づかされました。
実は今回ご依頼を受けた研修の教材作成に当たり、出版されたばかりのこの本を少し解説するとおもしろいかな、という思惑があって国会図書館で複写をかけていたところ、ごく最近になって愛知県・名古屋市の各図書館に配備されています。名古屋市内の同業者のみなさまには、せっかくの書評ですけど買ってまで備え置くべきものではない、と思っていただいて差し支えありません。
本当におもしろいのは、この本の先にあるのです。裏、といってもいいでしょう。
これは国会図書館のOPACの検索結果です。労働審判に関して今年納本された資料のうち4番が出版物になったもの、3番と4番は同じ調査で作られた資料です。
『労働審判制度をめぐる当事者の語り』は上記の調査で回答した人の一部に聞き取りを施し、その内容を二十数件まとめたもので、統計の数字に昇華されてしまうまえの当事者のナマの発言が読めるのです。
さらに凄いのは、
社会保険労務士さんに申立書作ってもらっちゃった♪、という内容の労働側当事者の発言がホイホイ出てくるところ(ひえぇ)
もちろん社労士が裁判所提出書類を作るのは弁護士法なり司法書士法なりに思い切り抵触するので、おそらくこの資料は弁護士会VS社労士会間で職域侵害をめぐるもめ事の導火線にも火薬にもなるだろう、と推測します。ことによったら社労士法第八次改正はこの資料のおかげで遅れるかもしれません。
調査担当者は学者さんですし調査の性格上、発言者の内容の当否にかかわらず事実を語らせることに徹されたのでこんな爆弾が書物になって世に出てきてしまった…ということなんでしょうね。
そんなわけですが司法書士属性を持つ方々にはさっぱりと無関係でいられるこの争い、ここでは社労士さんたちがリーガルリスクを負ってまで先行してくださっている(笑)労働審判手続支援とやらの先行事例をよく読み取ってシェア拡大に努めるのがよろしい、ということになるはずです。
でも。
この資料が非売品なんです!お金で買えるブツじゃない、ということで今後もおそらく市中の図書館でお目にかかれる可能性は高くありません。大学の図書室に置かれれば、そこから取り寄せが可能になる地区がある…といいな、とは思っています。
しかたがないので興味深い何編かの語りを国会図書館から後日郵送複写で取り寄せており、この資料は関西館(奈良県)にもあるところからもう1回そっちで複写をかけて資料の多くを当事務所調査研究係に備え置く…そんな準備をしております。
さりとて東北や九州でそんなことするわけにもいきませんから、本当ならこの資料、単位会なり連合会なりが出版者に要請をかけて一部分けてもらうのがいいんでしょうね。
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