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自分の仕事をつぶやいてみる

この秋にお受けした研修のテーマは

給料未払いの相談をつつながく法律扶助で受けて、とにかく1件5000円はもらえるようにする

これは裏のテーマでした。ヒミツというほどではないはずですが…こぎれいな使命感はさておいて受講者のみなさまに実利をぶら下げるとそういうテーマになるはずなんです。

ある労働紛争の相談をうけ、終了する、これの流れを適切な講義で説明し、受講者のみなさまが法律扶助をつかって(以下略)、とにかく、実のある相談として終了する、そうしたことを抵抗なくできるようにしてくれないか、というご依頼なのです。

これを突き詰めて考えるに当たり(手抜きできない、というのは時に短所だと痛感しつつ)、発注者の先生方に身も蓋もない問いかけを行いました。

  • どうしてそれはいままでできなかったのか?
  • 従前の研修はどのようなものだったのか?
  • それはなぜ役に立たないように思えるのか?

裸の王様に着衣がないことを指摘するようなやりとりを経てどうやら見えてきたものは、本来なら配属研修なり年収200万円の新人司法書士時代に(すでに同じテーマに注目された同業者さんが県内におられます。そちらのブログを拝見している方には、僕はあちこち旅行する人ではありますが電話帳に名前を出し始めたのは今年からですので念のため)親方に酷使されつつ身につけていく部分=経験や口伝で伝えられるような部分が労働紛争分野でも欠けているため、個々の研修で知識を網羅されてもそれが相談での質問なり訴状の記載やひいては紛争解決への戦略立案能力の向上にぜーんぜんつながらない、そんな研修を何度やったって結局技量向上にはつながらない、それが問題だ、ということ。

その部分への手当として、これまでの研修でもたとえば事例を多めに入れたり事前に課題を設定したり質問を募ったり、といろいろやってはきたのですが、この際思い切って方針を変えました。

もらった講義時間で労働紛争について網羅的に話をするのをまずやめて(なにも考えずに県外から転がってくる講師がよくやりたくなってしまう手ですが、労働紛争でなら必ず失敗します)、賃金・残業代・解雇予告手当(と、解雇無効=地位確認)あたりに講義の対象を絞ってみます。パワハラや労災はこの際忘れる、と開き直ります。

そのうえで、事前に台本を用意はしますがお客さま対司法書士との労働相談のロールプレイという形をとって、「給料が払われないんですけど相談できますか」という予約が入る段階から法律扶助をつかって30分プラスアルファの時間枠で1回相談を終了できるまでの流れを見せられないか、と企画したのです。

やってるところを見せる、というのが一番いいんじゃないか、ということで。

理想的には上記のロールプレイにおける各行程で、

  1. 右往左往する新人司法書士
  2. それを楽しげに叱り飛ばす虎の穴の主=ボス司法書士
  3. ときおり辛辣なコメントをくださる誰か(資格不問。要補助者証)

の三名に司法書士陣営を分けられればなお楽しいのですがそれは若干の問題がありそうですのでパス。弁護士業界ではそうした(叱り飛ばされてはいませんが)新人弁護士さんが出てくる設定の本もあり、理想的にはこれの司法書士版ができると楽しそうです。

この企画案を聞いた補助者さまの反応はさらにクールでした。曰く、

  1. 当日の受講者席に番号を振っておけ
  2. ビンゴの道具を貸してあげるからそれを持って行き、講義開始と同時に番号で抽選をかけて当たりを引いた(不幸な)先生とロールプレイをすればいい
  3. どうせ研修なんだから間違えることを恐れてはいけない(教育者かよ)
  4. ある程度受講者に緊張を強いなければ研修効果がないからそうせよ
  5. 年齢がある程度上の先生に限っては、当人に知らせずにこっそり抽選から外していいことにはしてあげてもいい(わぁ、優しい)

安心していただきたいのですが、上記の補助者さま提案はいずれも却下を前提に保留しています。できれば楽しいんですけどねー、などと受講者発注者の皆々様の頭越しにやりとりをしていたりします。

最終的には県東部西部対抗で模擬裁判やって、負けた方が勝った方に懇親会でビール一杯おごるのはどう、などとおもしろがって応じたのはもちろん僕です。すみません。


冗談はさておいて。

  • 昨今の経済状況および市民の権利意識の高まりにともなって労働紛争の相談件数は依然高止まりを続けており、労働審判の新受件数は逐次増加しつつある状況である。しかしながら簡易裁判所における労働関係訴訟は必ずしも増加していない現状にあって、地方にもあまねく存在し少額の紛争を解決する能力を持つ司法書士への期待は大きい。
  • 今次研修では特に少額の賃金未払いを中心とする労働相談の準備および実施に絞った研修を行うことで、同分野でも法律相談援助の有効活用を目指し、よってもって市民の期待に応じることを目的とする。

・・・ってのはどう?と申し上げたところ、隣の部屋からなんだか焦点の合わない目で見つめ返されてしまいました。補助者さまのお気に召す内容ではなかったようです。こうしたことは業界紙の寄稿者にでも言わせておきましょう。

僕としては今回の研修で

  • とりあえず、典型的な事案でならつまづかずに給料未払いの相談やれるようになりましょう。どうせみんな大したことやってませんから安心してください。
  • 多少手際が悪くおわっても、扶助の相談は3回までできるから(以下略)

そうした狙いの研修で僕に何ができるか、いろいろ考えているところです。

その問題表現をなんとかしてください、原則論を主張して背筋をのばすのもやめてください、と補助者さまからご指摘がありました。冗談でなら楽しいのになぁ。

そうこうしているうちに、例によって労働相談のご依頼が一件入ってきました。シンプルな、少額の賃金未払いのご相談。

おお?

これの準備と相談の流れを丁寧になぞることで、なにか見えてくるんじゃないのか?

誰が講師か受講生かわからない発見に至りました。

さらに検討した結果、どうやら僕は相談実施前に資料を準備させておき、それを検討しているらしいのです。へぇ、そうだったんだ(遠い目)

そうすると、事前に準備させる書類は何を指定し検討の注意点はどう説明するんだろう云々、と手元で資料をひねくり回しているうちに。

それらの思考過程をぜんぶしゃべって、それを録音しておけば思考の流れを妨げず、あとで録音内容を反訳すれば資料になりうる、とも思いつきました。

かくして、執務室内で資料片手に独り言大会がはじまりました。誰かがいれば恥ずかしい光景ではあるものの、今日は補助者さまの出勤日ではありません。

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