残業代計算というしごと
さいきん、ふと思うことがあるのです。
弁護士以外の士業が労働側に立って残業代請求を仕掛けた場合に限って経営側を支援する業務を始めたら、きっと儲かるだろうし実は社会正義に沿うのではないか、と(苦笑)
もちろん残業代請求そのものを完全に封殺するというのではなく(これは戦略的にリスキーでありすぎます。成功したことはありますが)、
- その辺にいる司法書士が簡裁訴訟代理でウダウダ言ってくるようならさっさと労働審判で迎え撃って代理権を吹き飛ばしてやるとか、
- その辺にいる社労士が労基署への申告を指導してくるようなら(労基署には)適当に謝って超長期無利子分割払いを提案して居直るとか、
- その辺にいる行政書士が内容証明出してくるだけなら黙って優しく放置♪とか、
せいぜいその程度の遅滞防御作戦を指揮したあとで、労働者が持ってる証拠と状況とを正しく見切って何割かの譲歩をせざるをえない立場にそっと追い込んであげる、というだけのものですが…
徐々にブームになりつつある残業代請求業務におけるどうしようもない法●事務所の仕事ぶりを労働者側の労働相談であれこれ聞いていると、経営側に回ってもそれで仕事になるし、儲かる依頼だけ食い荒らすような連中と結託する債権者の請求なら阻止する側に回ったほうがいいように思えてくるです。
労働者でも経営者でも士業でも、欲望や自分の都合をのっぺりした正義感で正当化するような連中が嫌いなんです。それに比べりゃこの怪しい事務所の、なんと居心地のいいこと(笑)
…冗談はさておき、司法書士による残業代請求の司法書士によるあしらい方というテーマは、もう少しマイルドに味付けして研修のネタにするとおもしろそうです。基礎研究はしています。
もちろん当分のあいだ実際にやってみることはしませんが、ほんとうはできるわけがないのに『あなたの残業代を徹底的に取り立てます!完全成功報酬制!』などとウェブサイトでうたう●●書士事務所の向こうずねをかっさらうようなことならたとえ経営側についてもやってみたい、と思ってしまうのはなかなか損な性分です。
さて、先週もまた、残業代請求で他事務所から断られた方からのご依頼がありました。
それとは別に、できるだけ自力でやってみたい、という方からの継続的な相談にも応じているところです。
実際のところ、ここ数ヶ月で『完全成功報酬制で残業代請求をするという士業の事務所のサイト』には結構なごまかしや手抜きや顧客の選別が紛れ込んでる、そうした事務所の対応のせいで泣き寝入りを強いられる労働者も相当いる、ということがよくわかってきました。
…そして、我が事務所にはそれに対抗する営業・広報手段が見いだせないことも(苦笑)
まぁ半ばまぐれで当事務所にたどり着いた方々を、その方のご意向に応じて支援する、という従来どおりの活動をするしかないのですが、そのなかに
- 残業代の計算と作表のみをおこなう
というご依頼の類型があります。
社労士さんの事務所ではときおりみかける受託の形態でしょうか。お客さまから渡された勤怠記録と就業規則・賃金規程等から適切に各月の賃金と労働時間をとりまとめ、時間外労働割増賃金=残業代を計算して納品する、というものです。
労働者が残業代請求を企図し経営側はそれを拒否しているかこれまで拒否してきた、ということで事件性アリ、という状況下の依頼です。
…つまり、本当は社労士さんが専門職としての自由自在な判断で残業代計算をやってしまうと弁護士法違反を構成しかねない局面なのですが(彼らがやっていい有料労働相談や賃金計算は、事件性がある状況下でなされることを想定していない、と考えなければいけませんから)、そのあたりはウェブサイトでお客をひっかける際には論じないのが大人のマナー、ということらしいです。
僕のところでは請求額140万円の上限を超えるものの場合、むしろ司法書士としてお客さまが法的措置を準備していることを確認後、裁判書類としてお客さまの指定どおりの方針で計算する、という関与にとどめています。残念ながら。
その指定が僕の経験に照らして適切でない場合には受託しない、ということで消極的な法的判断はお客さまに伝わってしまっているのですが、さすがに間違ったことを手伝っていいはずがないのでこれはOKでしょう。
そうした、お客さまが指定した方針通りに残業代の計算を行う場合には勤怠入力から作表まで、当事務所では一ヶ月あたり3000円を標準の料金としています。
24ヶ月なら72000円です。
書式そのものは僕の事務所で控訴審まで勝訴判決がとれたものを使ってますので、納品後の成果物をご自分で書いた訴状や労働審判手続き申立書に添付するもよし、法●事務所に持ち込んで交渉を代理してもらうもよし(残業代請求を依頼した人にむかって「自分で残業代計算して持ってこい」という指示を出す事務所もあります。お客に「自分で麺をゆでて持ってこい」というラーメン屋がもしいたら、どう思いますか?)、それはお客さま次第です。
残念ながら上記のように、残業代の計算だけ、というのは当事務所でその後の業務に関与することが期待しにくい業務なので、労賃を基準にした報酬設定になっています。一ヶ月あたりの単価でみれば少し高いかもしれません。
が、しかし。
そこは知的水商売を標榜する当事務所のこと。いいお客さまにはその辺の水道水ではなく浄水器の水やミネラルウォーターをお出しするような提案をします(笑)
先日もそうした方に、一ヶ月あたりの単価を2000円にする提案を差し上げました。お客さま、即決採用です。
つけた条件はシンプルです。
各労働日の勤怠時刻の入力だけ自分でやって、表計算ソフトで引き渡してほしい、と申し上げたのです。
こちらは、引き渡されたデータに校正をかけて手持ちの計算表にコピーするだけ。
こちらは作業時間が半分以下になります。半分どころの削減ではありません。
実はタネも仕掛けもあるこの提案で、作業単価も結構上がります。
いっそこの方式を標準にしようか考えているのですが、その際には許容できる誤入力の割合を決めておいたほうがいいかもしれません。
ともあれ、当事務所では残業代計算の表の様式について、
- 標準の1日8時間・週40時間のもの
- 1日の所定労働時間が8時間を下回るため、法内残業が存在するもの
- 変形労働時間制にもとづいて各日でことなる所定労働時間から残業代を計算するもの
- フレックスタイム制を前提に各月の労働時間から残業代を計算するもの
- 総労働時間と歩合給から残業代を計算するもの
- 各月の残業代と同時に、長すぎる所定労働時間の一部無効を主張し所定労働時間を計算しなおすもの
等々各種取りそろえておりますので、引き続き他事務所で断られてしまったり適当な計算をされてしまった方々のご依頼をお待ちしています。
しかしまぁ、この事務所をはじめたころは残業代請求がブームになるなんて思いもしませんでした。創業のころは少しだけ時代の先に踏み出していたつもりでしたが、あっというまに追い越された気がします。困りましたね。
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