おいしい仕事は、どこにある?
二日にわたって国会図書館での文献調査と東京地裁・簡裁・高裁における開廷表調査を行った結果、わかったこと。
司法書士の仕事は、…登記(笑)
冗談です。
ですが登録間もないころ、今では勲章もらった大先生からそのまま上記のとおりのお言葉を賜っていささかヘコんだことを今でも思い出します。そんな出だしで記事を書こうか、と考えながら遅めのランチにしている、国会図書館6階の食堂です。最近少々システムが変わり、食券がなくなったりやたら大盛りのそばやカレーが出現したりする一方で、民主党政権の消滅を追うかのように国会丼・新国会丼がラインナップから消えました。
さて。まず予言してみます。おそらく弁護士以外の法律周辺資格職能による残業代請求のプチバブルは数年で崩壊する、少なくとも、いずれは『残業代請求専門』の事務所が過去形で語られる程度には鎮静化すると見ました。
簡単にいって過払いバブルの発生から消滅を二倍から三倍の速度で早送りしているのが現在の残業代請求プチバブルの状況だとみるので、2006年から5年をかけて急増し、2012年にほぼ崩壊した過払いバブルに踊れた期間が6年とするならば…今から長くても3年程度かと。よっぽどの冒険者がよっぽどの論理構成(不法行為なり不当利得なり)で賃金請求権2年の短期消滅時効の壁を破るようなことがなければ、そんな感じだと推測します。もっとも、残業代請求プチバブルの崩壊は過払いのように需要の払底ではなく、サービス供給過多=弁護士の参入でトコロテン式にそれ以外の士業が押し出されるはずです。
まじめにやらない残業代請求は補助者を適当に酷使していれば仕事が進むものなので(このあたり、まじめにやらない任意整理と全く同じ理屈です)司法書士が完全成功報酬制で報酬料率20%でできるものを弁護士がそのお値段でできないはずはないわけですから。あとはシンプルに、うまく広告した奴のところに依頼が集まるというだけです。ただしこの両者、なるべくチャラッと仕事を終わらせるためになるべく訴訟は選ばない…という点で、同じ穴のムジナであるはずです。過払い金のときそうだったように。
こうした認識でよさそうかを確かめるために調べたのが、東京の高等・地方・簡易裁判所の開廷表です。本日の労働事件(訴訟のみ。労働審判・民事調停・商事調停(東京簡裁では残業代の調停を商事調停として受理されたことがあります)を除く)の件数を数えてみました。
高裁 1件(賃金等)
地裁 5件(残業代1・地位確認等3・退職金等1)
簡裁 2件(賃金・解雇予告手当各1)
これだけです。
残業代請求訴訟、1件です(苦笑)
もちろん、地位確認等・退職金等請求事件のなかに残業代請求が含まれている可能性は高いのですが、それらを全部集めたって地裁では最大5件。簡裁で0件。
もう笑うしかない、といった風情です。
労働審判の件数が適切に増加しているならいいかもしれません。
しかし、労働基準法第114条の付加金の請求は訴訟によってのみ可能であることを考慮してみましょう。
『残業代不払いには付加金が請求できるぞ』などと言ってる事務所がまじめに訴訟やってるか?
答えはこの件数があまりにも雄弁に物語っています。
このあたりも、過払いのときにそっくりですね。司法書士であれ弁護士であれ、あのころどれだけの事務所が、控訴を覚悟して判決を取りに向かったでしょうか。
しかし、そういう方法なら残業代請求も儲かるし、多少の苦情は出しつつも概ね定着する手法なのだと思います。
さてそうすると。残業代請求をビジネスにしたいなら、儲かるのはこの手法で、しかも早期に参入を図るのがまず一つのやり方です。
結構いいのは、事業主側につくことでしょうか。
上記のような手合いが増えるなら、迎え撃つにも過払いのときの=消費者金融各社ご担当者さまの対応がある程度有効なのではないか、と考えます。
あるときは『うちも潰れるかも』と嘆き、またあるときは『今年の予算はありません』と居直り、いくつかの会社は適当な引き延ばしの末に思いついたように法的整理に入る、と。
過払いの経験を活かして、こうしたテクニックの発揮または伝授を売りにして事業主側から残業代請求に関与するのは結構ありかもしれない、と思っています。企業法務を標榜していればイヤでもやらねばならないかもしれませんし、上記調査から読みとれるように請求する側も決して大まじめに付加金請求やってなんかいないんだから企業側からの依頼受任も気は楽です。少なくとも内容証明が代理人から来た程度で動ずる必要はなく、提訴されて付加金請求されてもいったん控訴して控訴審口頭弁論終結前に請求額元本を供託してしまえば付加金請求なんて自動的に阻止できる、という程度の認識は事業主の方々にもいずれ広まるでしょう。むしろそうした認識を共有するためにインターネットがある、といえるかもしれません。
そうした泥仕合がしばらく続くはずですから僕は当分のあいだ、少額の賃金請求かお客様が覚悟を決めてこられる地位確認請求か、あるいはパワーもスピードもテクニックも必要な仮差押や一般先取特権の行使、そうでなければ労働保険や社会保険の知識の併用が必要な案件を少しずつお受けしてこのプチバブルをやり過ごすしかないな、と考えているところです。
僕は残業代請求で完全成功報酬制を売りにするくらいなら、難件を募集しながら昼寝してたほうがましです。
問題はそうした業務をウェブサイト上で売りにするわかりやすい語句がないことでしょうか。
『他で断られた案件』
というのを考えかけましたが、身も蓋もなさすぎるのが難点です。
そんな記事にしようと思いながら、バス出発前の東京大丸の地下を歩きます。17時前にお弁当が見切り売りされるお店は少ないようですが、ラスト一個だから500円にしてあげると言われたこのお弁当を即決採用することができました。マグロの竜田揚げに野菜いっぱいのあんかけをかけたもの。旅の最後に、美味しいお話しをくれた店員さんにお礼の意味を込めて、マグロメンチカツを一個買って帰ることにした、17時発名古屋行きスーパーライナーの車中です。
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