待合室の人模様
6畳間より大きい。
12畳より小さい。
くすんだクリーム色の壁。窓はない。
申し訳程度の観葉植物。一方向を向いたイス。
ブックスタンドには少々くたびれた絵本と、こちらは新しい『司法の窓』『ほうてらす』。
先日のこと。久しぶりに家庭裁判所の待合室に身を置いておりました。
当事務所ではあまりお客さまにくっついて法廷外で手続きを『支援』することをよしとしない(そんなものが必要ならそもそも本人申立として依頼を受けるべきでない)のですが、今回の期日ではちょっと動きがありそうだったのです。
お客さまはさっさと調停室に行ってしまい、僕はブックスタンドの『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』を上目で気にしつつ、小川一水のSFを読みはじめます。
午後から入っているのは電話相談が一件。急ぎの仕事があるわけではないのです。
相手方の言動に非を鳴らしつつ調停決裂に動きたくてたまらないらしいおばさんと後頭部に魚のウロコのようなゴミをつけた女性弁護士のコンビが呼び出され、財産を数え上げながら解決金の金額調整に余念のない男性弁護士とその依頼人のコンビが部屋を出ると、待合室には僕一人となりました。
前回来たときにはなかった鉄道モノの絵本をちょっと手にとってみようかな、と席を立ちかけたところで、曇りガラスの向こうを人影がよぎります。
背中を丸めて、目線をそらして、女性が一人で入ってきました。待合室のイスの列の一番前、その一番奥に躊躇せずに直行し、どさり、とばかりに座り込みます。
よりによってブックスタンドに一番近い列を押さえるとは(苦笑)
しかたがないので手持ちの本で現実逃避を決め込んでいると(この人の短編、結構引き込まれるものがありますね。仕事の合間に読みやすいので、最近はまっています)、何かのノイズが聞こえてきました。
・・・すん。
・・・・・・・くすん。
最前列の一番隅で目頭を押さえている女性から聞こえてきます。
二列前で女性が泣いており、室内にはだれもおらず、お客さまが戻ってくるのを待ってここにいなければならない、という状況下で一体どうやって時間を過ごせばいいか、は実に実に難しいものがあります。
頼むから他の人だれか入ってきてー!
僕の心の叫びが届いたか、今日僕が知る限りで一番元気な集団=決裂おばさんwith後頭部ウロコ弁護士のユニットが定位置に戻ってきました。
僕の一つ前の列、つまり泣いてる申立人と僕の間の列に。
決裂おばさんの元気に押されたのか(笑)最前列の女性もハンカチを使うのはやめて、裁判所から渡されたらしいプリントを眺めています。
手続き開始直後の期日で、なにか好ましくないことでもあった、のでしょうか。
こういうときにはやっぱり、待合室にでも誰か置いておいたほうがよさそうに思えてきます。
ちなみに今回当事務所でお受けした調停申立書作成は一式2万円ちょっと。まじめに法律扶助に取り組んでおられる同業者さんからみれば別の見解もあるでしょうが
- 扶助より安いですが何か(遠い目)
と、事務所内では笑っています。(余談ですが、あの実費の支給で妙にコストパフォーマンスが落ちるように思えますね)
もちろん運もありますが、少しだけお金出してもらって念入りに準備してちゃんと書類を作ってあげれば、最前列の女性にとってももう少しましな場所になるんじゃないかな家裁は、と思いたいところです。
- その日、待ち合わせ室に出入りしたのは代理人と当事者のコンビが4組。
- 一人で出入りしたのは先の女性が一人とほかの男性が一人。
- 挙動不審な同行者(笑)に待合室で読書をさせていた人、一人。
僕としては、もう少し上手な本人申立人の増加を望みたいところです。
さて、僕のお客さまはといいますと。
決裂を叫ぶでもなく解決金額を調整するでもない、という立場で手続きを終えられました。
どうやらブックスタンドの絵本をこっそり手にするには、ほかの家事調停申立書作成のご依頼を受けなければならないようです。
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