信託登記代理人のささやかな悩み
当ブログにも不動産登記というカテゴリがありまして(執筆者すら忘れかけておりました)、よく調べたらこれまでに二件しか記事を書いておりませんでした。今日はこのカテゴリの三件目のお話です。
さて、天にまします登記の神様はときどき、僕に試練をくださるようです。去る12月に不動産登記関係のページを一新して二件目のウェブ経由でのご依頼は信託登記となりました。
ちなみに最初のご依頼は、登記の前に裁判事務が必要な状況になっておりそちらを先に進めているところです。昨年実施したウェブサイト大改装後も、定型的なご依頼で淡々と稼ぐウェブサイトにはならなかった、と考えるべきなのでしょうね。
お話を戻します。今回の申請準備を整えているうちに、昨年の時点で全国の法務局で信託目録が電子化されていること、信託登記の申請に際しては従来の様式の信託目録に代えて、『信託目録に記録すべき情報』を添付してあげればよい、ということになっています。
リンク先のお達しが、少々妙だと僕には思えたのです…お恥ずかしながら、ここ一ヶ月ほど思い悩んでおりました。一番最後に、こんなことが書いてあります。
『信託目録の登記事務について電子化指定がされた登記所においても,信託の登記の申請の際に,信託目録に記録すべき情報を書面で提出することは可能ですが,登記事務を円滑かつ正確に行うため,信託目録に係る電子データを記録した磁気ディスクの御提供をお願いする場合があります。 』
それがお願いである以上無視していいのか、とは考えてはいけません…相手は泣く子も黙る監督官庁であります。
しからばそれに対応して、ご所望の磁気ディスクとやらを調製してやろうではないか、と思ったのですが。
この磁気ディスクに記録すべきデータの様式について、商業登記で添付するディスクのような詳細な指定がどこにもないように思えるのです。
-困りました-
提出したデータがどう処理されるかは推測できます。
最悪でも1.44MBのフロッピィディスクに格納したMS-DOSで読めるプレーンなテキストファイルに信託目録記載事項を軒並み突っ込んで渡してやれば、メモ帳を開いた担当者がそこから必要に応じてコピー&ペーストしてくれそうです。
ただ、これは『紙文書出すだけだという状態よりちょっぴりまし』な状態の実現に過ぎないような気がします。
だったらどうしたものかしら、とあれこれ考えた結果。
申請用総合ソフト(本当はオンラインで不動産登記を申請するための、法務省謹製ソフトウェア。当事務所ではもっぱら登記事項証明書の郵送請求に用います)も信託目録の電子申請に対応しているんだから、ここで目録つくって(正確には、信託目録に記録すべき情報を作成して)データをエクスポートしてやったらどうか?
…そんな機能、実は見たこともなかったのですが(最初は作業フォルダから保存データをコピーしてやろうかと考えていました)本当にありました。データの書き出しを指定すると、ZIPで圧縮されたファイルがエクスポートされるのです。
適当にダミーのデータを入れてつくったそのファイルを展開すると、肝心なのは作成年月日時分秒(!)を記載したXML形式のファイルだということがわかりました。
…つまり、タグ付きのテキストファイルです。
乱暴に言ってしまえば、そう理解していいはずです。
であるならば。法務局側にとって望ましい形式が単なるテキストファイルであったとしてもXML形式のファイルだったとしても(もしそうだった場合、その旨告知しないのはちょっといただけませんが)、大間違いにはなるまい、ということでこのファイルをフロッピィディスクに入れて提出してみることにしました。
仮に望ましいファイル形式が上記のいずれでもないとしても、申請が破綻することはありません。問題の信託目録に記載すべき情報は、別に紙でも提出しますので。
さて奇しくも、というべきでしょうか。明日はウェブサイト改装後最初に不動産登記をくださったお客さまの裁判事務で、裁判所に行くことになっています。ついでに法務局にまわって、この信託登記を出してしまうことにしましょう。
追記
僕のところでは家●信託(←これ、登録商標なんですって?)や民事信託で一発数十万円の組成費用を取る商売はやってないのですが、受託者さえまともであれば民事信託はとても魅力的な仕組みだと思っています。今回のご依頼のお客さまも、もとは土地建物の名義変更を自分でする人のためのコンテンツを経由してこられたところ、生前贈与では目的にそぐわないということで民事信託を紹介することになったものです。シンプルな財産管理+遺言代用型の信託でよい事案だったので、僕の事務所でご依頼をお請けしました。
同業者さんが聞いたら気を悪くするのでしょうが、士業や身内が成年後見人になって被後見人の財産をパクる事例がもうこれだけある以上、民事信託の受託者だって財産持たせりゃ絶対おかしくなる、と考えないほうがどうかしていると思うのです。いま大きな声で言ってはいけない論点だ、とは思うのですが。
※この点、●族信託を標榜する方々の集まりではこのシステム、「(関係者間に)愛がなければ受託者になるべきでない」=だから受託者はまともなはずだ、というファンタジーを主張する実務家がウェブや雑誌に記事を書いたりしていますが…僕はそっちの●●信託には関わらないようにしよう、としか言いようがありません。
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