頻度数百分の一の特別な事象
実情をご存じないと簡単にできそうに思える手続きが、実は強烈に難しい。
…というより、存在しないと考えたほうがいい(冷笑)
労働基準監督署による、賃金不払い事案の書類送検というのもそうした厳しい手続き類型の一つであるようです。今日はそうした話です。
先週、あるお客さまから連絡が入りました。そのお客さまの賃金不払い事案について、労基署が使用者を書類送検することに決めた、ついては事情聴取をするから労基署に来てくれと言われた、と。
-そんなことってほんとうにあったんですね-
思わず素人じみた感慨を口にしてみる、自称労働側社会保険労務士(笑)
- 砂漠でオアシス見つけた気分、というべきでしょうか?
- 年賀はがきのお年玉くじで2等くらいを引き当てた感激、というべきでしょうか?
- 付加金の給付判決もらったことはすでに二回あるのでこれの半分以下の発現頻度であることを嘆くべき…でしょうか!?
実は僕の事務所で賃金不払い事案を相談されたお客さまについて、労基署が使用者を書類送検するという話を実際に聞いたのはこれが初めてです。まさに記念すべき第一件目、と言わなければなりません。
さて、当事務所ウェブサイト改装作業の関係で、これまで送信フォームから労働紛争関係のお問い合わせをうけた件数を数えてみたところ創業9年5ヶ月で約400件あるようです。
電話についてはカウントしていないのですが、通話の冒頭に無料相談を希望され一瞬でおひきとりいただくものまで含めればこの2倍程度ありそうな印象です。
つまり、真剣なものからちょっとさわってみただけのものまで含めれば一千件は下らない労働相談件数のうち…
書類送検されるのは、一件。
ということになるわけです。使用者側からこれをみれば、送検される奴がよっぽど運が悪かっただけと断言してよい実情にあり、労働者側にあっては、そんな可能性期待するだけ野暮だ、と。報道発表等から類推すればまた別のデータが出るでしょうが、賃金・解雇予告手当・休業手当不払いなどの『いちおう罰則規定があるが少額な事案』の実情としてはこのくらいなのかもしれません。労災死亡事故のように、どうあっても書類送検される類型に関する相談はそもそも当事務所には来ませんから発表データよりまだ厳しい、ということになるかと考えています。
先週はもう一件、こちらは警察署なのですがある被害届の受理を数ヶ月がかりでようやく実現された、というお客さまの話を聞きました。
「それ(あなたの)ブログか何かに書いてください。後に続く人のためになるから」
などと思わず口走ったところであります。
残念ながらその方はそうした情報提供の余力がないようですので、もし今後その類型での相談が来たらそのときには対処方針立案の参考にさせていただくとしましょう。
ところで、世にこれだけ情報があふれていても人は自分に都合のよい情報だけを集めたり使ったりしているように思えてなりません。
…で、その結果自分が思ってもみなかった(それを素人の限界というのですが)ところを突かれて失望したり破綻したり自滅したりする、と。
実際のところ、ある目的を実現するための相談を所望されることはものすごく多いのですがその実現を妨げる要素、あるいは自陣営の弱点を探すよう求められる相談は極めてまれなのです。それこそが重要なのに。
ですのでそういう相談のご依頼を受けてしまうと、なにやらありがたいものを見せてもらった気分がしますね。
「ああ、ええもん見せてもろたわ」そんな感じで。
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