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破産開始決定までになにができるか?

ふだん債務整理に関与しない、むしろ労働債権者側で破産者と対峙する僕にとっては破産はある意味、凶報であります。いっぽうで未払い賃金立替払いの適用が受けられることもあり、時としてホッとしたり諸手を挙げて大歓迎、ということもあります。

さて、さきごろ模型メーカーの河合商会に破産開始決定がでたとのニュースがありました。これをうけてアマゾンのマーケットプレイスでは、同社のプラモが定価以上の高値をつけています(本記事執筆時点で、下記は定価の倍)。

さてこのメーカーの破産で思ったのは、実は負債残高1億円程度の会社の破産申立から開始決定がおりるまでの期間ってあまり知らないよな、ということ。

この件では10月17日に大手ニュースサイトに一報が出て(ですのでこの数日前には弁護士さんによる受任通知が出ているはず)、その後12月18日に破産手続き開始決定がでたとのニュースが出ています。

そうすると、破産申立から開始決定まではどのくらいでしょう?

ふつうは破綻の情報が広まったら混乱をさけるためになるべく早く破産申立をすることを目指しますので、10月中に申立がなされたなら約1ヶ月半くらいで破産手続き開始決定、ということになったということでしょうか。

もっと小さな会社で休業してから数ヶ月経っており、会社財産は皆無でオフィスもない、という事案で開始決定まで1ヶ月、というのも大阪地裁で見たことがあります。

乱暴に言うと、そう大きくない会社で破産の申立から開始決定がでるまでの期間は約1ヶ月~1ヶ月半、ということになります。

会社の倒産による賃金不払い等で悩んでいる普通の人のためにご説明すると、裁判所による破産開始決定が出た時点で終わっていない訴訟・差し押さえ・仮差しおさえの手続きは軒並みいったん止まります。あとはその性質によって再開されたり失効したりします。

場合によっては、せっかく実費と予納金をかけて仮差押えをかけたのに訴訟やってる途中で破産されて、仮差押えで押さえた財産を召し上げられることもあります…泣けてきます。

では、この約1ヶ月半のあいだに申し立ててかならず完結する手続きはないのか?

誰もが考えたくなるのですが、訴訟は無理です。訴状の提出から第一回期日の指定まで約1ヶ月超かかりますし、引き延ばしをされたり一巻の終わりです。支払督促も引き延ばしには無防備なのでダメ。

調停やら労働審判は考えるだけ野暮です。相手が協力しなければどうにもなりません。

仮差押えも当然ダメです。本案訴訟やってるヒマがありません。

結局のところ、相手の抵抗を排除して債権を回収する手続きを終えられる可能性があるのは先取特権の実行のみ、ということになります。なってしまう、というべきでしょうか。

これだと、東京地裁ならば一般先取特権(労働債権)に基づく債権差押命令申立で3開庁日、僕が知っている同地裁で動産売買の先取特権に基づく債権差押命令申立をした事例では10開庁日、つまり1~2週間で債権差押命令が発令されることになります。あとはこれを、債務者が受け取ってくれさえすればよいわけです。

※債務者のところに送達されてから1週間たたないと、債権者に取立権(銀行などの第三債務者から、じぶんに直接お金をはらってもらう権利)が発生しないのでこの方法でも債務者への送達は必須です。

取立が破産開始決定までに終わらないならば、転付命令を申し立てておくことで対処できるかもしれません。これは、破産者が預金や売掛金の債権を持っている第三債務者の経営がまともであるかどうかの検討を要しますが。

もしこれらの方法で債権差押命令の執行が終わる=現金を払って貰うか転付命令が確定するかしないうちに破産開始決定が出たら、申立て債権者の苦労は水の泡になります。大抵の場合、破産者は公租公課の滞納をしていますので、せっかく差し押さえに成功した財産があっても破産手続きのなかで公租公課に優先分配されてしまいますから。

そんなリスクを承知して一般先取特権を行使してみたい、という方はそりゃ相当なご意志の持ち主だと思います。もう久しくそうしたご依頼をうけておりません。実際問い合わせがあっても、証拠書類が不十分でありすぎる(理論上の知識だけあっても申立が通るかどうかの情報がないからまぁしょうがない)のです。

今回の倒産に際しても、あるいは動産売買の先取特権で裁判所は忙しくなったのでしょうか。ちょっと興味があります。


さて、久しぶりに昼間に事務所から記事を更新しているのは、ことし起案する準備書面のラスト一件が終わったからです♪

夕方から、知り合いの土地家屋調査士さんとお酒を呑んできます。

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