つまらん事案と言わないで
先日のこと。立地からして日本有数の忙しさであろう某労基署に行ってきました。久しぶりに社会保険労務士の資格だけで完結する業務=労働基準法第104条の規定による申告書の作成および提出が、今回のミッションです。
給料不払い・サービス残業等の労働基準法違反を労基署に相談しようとあれこれネットで情報収集しておられる方々をがっかりさせかねない実情として、そもそも労基署は労働者側からなされる申告に対応する義務はない、とする下級審裁判例があります。
…ま、そんなもんよ、と諦めないところにこの仕事の楽しみがある、と言わなければなりません。事案の概要をよく描写し、かつ相談担当者が少しでも関心を持ってくれそうな切り口になるとっておきの一言を話して、あとはお客さまと相談担当者のやりとりの補足に徹します。もちろん補足説明は、相談者が食いつきやすそうな部分を簡潔に。
そうした準備をしていっても、今回はちょっと相談担当者の対応が冷たいように思えました。担当さん曰く
- 「(情報提供に基づく調査の場合)通報から2~3ヶ月はかかる」
- 「いつ調査にかかるか、実際にその内容がどのようなものであったのかは労基署側からは連絡できない」
- 「調査に入ったとしてもどういう結果になるかはわからない」
…ま、そんなもんよ、と承知して持ち込む相談ですので別に異議を申し述べたり不満げにすることもありません。が、しかし。
- 「相談件数は大変多く、なかにはつまらない事案もあるので労基署としてもその全てに対応することはできない」
…ま、そんなもんよ、と言うわけにはいかないご発言!
それを相談に来たお客さまの前で口にしないでほしい(苦笑)彼の発言はどうも、僕とお客さまが持ち込んだ相談が彼いうところの『つまらない事案』から十分離れたものである、という意味でなされたものではあるようなのです。しかし、お客さまがせっかく労基署に期待してくれているのにそれはどうかと思います。
この相談、さらに少しずつ説明を重ねて相談票に記載されている三段階の緊急度区分のうち最も高い事案と評価させることはできたものの、あまりにもおおっぴらに「つまらない事案」の存在を口にされて少々焦りました。
ここで人権派を気取るなら、つまらない事案などこの世に存在しないと大見得を切ってみたいところです。もちろんそんなつまらないことはしません(笑)
実際に、いろいろな人からいろいろな意味合いでつまらないと評価されてしまう事案は確かにあると考えています。当事務所にあっても、相談者の態度や立場に照らして『対応するべきではない』と判断する問い合わせはもちろんあるわけです。具体的には、ブログのコメント等を通じて無料での回答を求めるもの、緊急作業の依頼ではないのに緊急用の番号に電話してくるもの、他人の紛争について相談しようとするもの、こうしたアプローチには、ほとんどの場合対応していません。
ファストフード店のカウンター前の行列に「自分お腹すいてるから」という理由で割り込んでいいか否か、さらには「まずタダで何か食べさせて」と言っていいか否か、と同じように、自分だけ無料で何かに対応させたり特別に緊急の対応を求めてよいかどうかは判断できるはずで、そうした方々の案件は持ち込まないでと言わざるを得ません。そうでなければ、特急・急行料金を払っている人はじめ有料の依頼をくださっているお客さまとの均衡がはかれません。
ただし、この事務所では請求額の多い少ないで「つまらないか否か」を判断しません。そんなつまらないことは、しておりません(笑)
簡単にいうと、お客さまがウェブサイトに出してある文字情報から問い合わせの仕方や報酬体系を読み取れてそれを受け入れることができ、ご自分がちゃんとその紛争に向き合ってる方のご依頼であるならば、そこにつまらない事案などない、と考えています。ご依頼を受けた事案に関わる、僕とお客さま以外のいろいろな人々がその事案を「つまらない」その他消極的に評価する可能性を推測して対策していくところに、この仕事のおもしろみがあるのでしょうね。
« 出張後半は東京で | トップページ | 月末の出張日程 »
「お役所で聞きました」カテゴリの記事
- お前はまだ砂消しゴムの使い方を知らない(不動産登記編)(2020.03.14)
- 彼らの目は、節穴だ(2018.10.25)
- 10月の数字(裁判所の数字を少し)(2016.11.10)
- 法務局から、補正指示(2016.03.02)
- 無料法律相談を受ける準備の相談が必要かもしれません(苦笑)(2012.12.15)
コメント