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Operation "SIMPLE"

作風といいましょうか、芸風といいましょうか。裁判書類=準備書面の作成にもそうした要素があります。さいきん少々その芸風が変わってきました。

この芸風、主として会社側訴訟代理人と派手に殴り合ってる状態で色濃く出てきます。それも、能力にちょっとした問題がある御仁を相手取ったときに。

これまででしたらそういう人がお作りになった書面には微に入り細をうがってウソや矛盾を一つ一つ糾弾する、という基本方針だったのですが…

これをやり続けるより、適当なタイミングで切り上げたほうがより面白い展開になることがわかってきたのです。具体的に説明するのが辛いのですが、会社側の書類作成方針が方向を見失って迷走するのを確認できたところで以後はあっさりとした認否に切り替える、というのがよろしいようで。これが上手にできると、一人で盛り上がってる相手方とそれを疎んじる裁判所、いつのまにか仕事が楽になってる僕のお客さま、という構図ができあがってきます。

意図してそれをやった事案が、今日一区切りつきました。

この夏にかなり派手に勝たせてもらった残業代請求訴訟。会社側は総論から各論まで二十数ページの控訴理由書を出してくる一方、こちらは単に原判決を維持してもらえりゃそれでOK、という立場にありました。ちなみにその控訴理由書、第一審で派手に負けた訴訟代理人がお作りになっただけあって内容は相応の出来、であります。さてこれをどう料理するか?当初は全力での反撃を考えましたし付帯控訴も検討したのですが、これって

強烈に淡泊な認否だけしてなにも語らずにおけば、議論が成り立たずに第一回で弁論終結になだれ込むんじゃないか?

こう考えた理由は控訴理由書の出来ぐあいもさることながら、会社側は控訴理由書で引用した書証をまだ提出してないことに気づいてない(たとえば、乙第20号証までしか出してないのに乙第21号証を引用して主張を展開している…ってこれ弁護過誤じゃないの?)、という点もありました。

控訴審で負ければ取り返しがつかない(上告なんてほぼ無理なんで)のでこの作戦を、というより早期の結審をめざすどんな作戦をとるのも冒険的ではあります。とはいえ大逆転の労働側敗訴判決を出す気なら、こちらにも反論の機会くらいは設けるだろうと期待して、淡泊な淡泊な…

本文たった4ページの答弁書を作りました。最後に1ページだけ、紛争発生から第一審を経て控訴提起にいたるまでの会社側の対応に異議をとなえ、だからこそ付加金給付判決も許されるのではないか、という一文で締めくくって全5ページの答弁書に仕上げます。

これが意外な展開をたどります。第一回期日一週間前を切ったころ、会社側が新たな準備書面と書証、陳述書に証人申請までしてきたのです。

ちっ。気取られたか(苦笑)

どうやらこっちがまともに取り合う気がない、ということが悟られたらしく、守った締め切りより破った締め切りのほうが多い会社側訴訟代理人にしては特別サービスとでもいうべきでしょうか、期日二回分の書面を一回で出してきました。逆に考えればあちらからみても第一回期日で弁論終結になる可能性を懸念しているんだな、ということでこの書面にもあえて対応しない、という方針を維持することにしたのです。

効果てきめん。本日某高等裁判所で開かれた第一回期日では、会社側が出した書証をあらかた不採用にし、会社側提示額より一桁おおい和解金額を提示する一方で判決言い渡し期日を定めて終結となりましたとさ。そんな面白い期日なら、自腹で傍聴にいけばよかったかも。

とはいえ往生際の悪い会社のこと、やらでもがなの上告受理申立をしてくるはずです。

しかしそれを考慮しても来年はお客さまにも僕にも実りの秋が来るはずだ、と思っています。来年の話ではありますが、鬼が笑うというほど非現実的なものではないでしょう。

明日は土地家屋調査士さんとの飲み会です。美味しいお酒になりそうです。

2020.12.12修正

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