取り下げまでの四日間
5月に70kg台に達していた体重が、このほど63.8kgまで落ちてきました。
…身を削るような仕事をしてきたから、というわけではありませんが、今週はなかなか面白い経験をさせてもらいました。
先日申し立てた債権仮差押命令の申立を、申立の3日後に取り下げてしまったのです。おかげで陳述書から担保取り消しの同意書まで、大小さまざまな書類の作成に追われることになりました。名古屋簡裁に申し立てられる債権仮差押命令申立事件の件数は、おそらく年100件に満たないらしい、というのも今回得た知識です。このうち何件くらいに司法書士が関与しているのかは、なかなか楽しい想像になります。
ただ、期待はしていた展開です。問題になっている未払い額は給料の1ヶ月分(こちらは証拠あり。ただし就労実績が不明なので一般先取特権の行使は困難と判断)と、証拠はないが数万円の費用が未精算という事案だったために疎明可能と判断した給料部分のみについて仮差押をかけたところ、第三債務者に仮差押決定が送達されたその日に債務者会社の社長から連絡がありました。
昨年はこの人、電話を取った僕にいきなり『しんたろうさんいる?』という名言を放ってブログのネタにされてしまったのですが、今回は打って変わってご丁寧な口調です。
曰く、仮差押を取り下げていただくにはどうしたらいいですか、と。
どうやらようやく僕も彼にとって、先生の仲間入りを果たせた、ということのようで(笑)
狙ってゲットしたこの立場、当然生かさねばなりません。仮差押で被保全債権とした未払い給料全額に加えて未精算の経費全額、さらに和解日までの遅延損害金全額と仮差押申立ですでに使った実費も全額の支払い義務を認めさせ、会社のほか社長個人の連帯保証をつけて、未払い額の4割ほどを即金で支払わす、という内容で和解してあげることにしました。裁判所の窓口に債務者社長をひきつれて出頭し、取下届けを交付送達させるのと同時に現ナマをお支払いいただく、ということで、カウンターの向こうの書記官ご一同さまにはさぞかし挙動不審な連中に見えたことでしょう。
この一連の申立-取り下げでわかったこと。
- 債権仮差押申立に際しては、裁判官の面接がない。
以前、東関東某簡裁に債権仮差押申立の代理をやりにいき、裁判官から「なぜ名古屋から?」とか「費用倒れにならないんですか?」とか申立の当否に全然関係ないことを言われてしまった僕としては面接で根掘り葉掘り聞かれずに済むのはありがたいことです(申立の内容にやましいところは全然ありませんが、一ヶ月ぶんの給料債権を守るために全力で仮差押をかける、という行動が正しいと言ってのける度胸はありません)。だって今回の申立も、当の労働者からみれば深刻な金額でも見る人がみれば少額の事件、と思われかねない面をもっていますからね。
- 申立の提出から担保提供命令の告知までは約3時間。ただし別の何かがあるかも。
申立書の提出段階で「特に急ぐことはありますか」と聞かれて、そうでもないと答えたところこの処理時間、ということですのでこれが通常の扱いだと考えてよいでしょう。ただ、急ぐと言ったらなにか特殊な扱いが発動されるのか、は何かの含みを残していたようでもあります。この所要時間は、前記の東関東某簡裁とほぼ同じ。労働専門部がある某地裁に書類を出したときには、若干速かった記憶があります。
ところで僕は昼過ぎに申立書を出したため供託金の額がわかったのは16時過ぎになり、官庁街から離れた当事務所からその日のうちに供託に出向くことはできませんでした。
- 債務者会社の本店所在地の不動産が、債務者会社の所有でないことの疎明を要求する
この扱いがどうなるかは迷いがありました。以前大阪高裁管内の裁判所では要求され、東関東の簡裁では要求されなかったのです。念のため、鶴舞の図書館でブルーマップの該当ページをコピーしておいて正解でした。このコピー+インターネットで提供される登記情報サービスの印刷結果(土地および建物)+これらの資料を集めた僕の上申書で審査にパスしています。これは、申立人である債権者の方の陳述書に入れてしまってもよさそうです。
※でも、これって何も対策していないまま申立を出しに行って、その日が月曜日=図書館休館日だったら恐ろしいことになるでしょうね(笑)
- 書証の原本は、仮差押決定が出るまで裁判所で預かりたいらしい
僕は、お客さまの預金通帳(さすがにこれは預かれない!)以外は原本を裁判所に預けています。と言っても供託金額を申立日の夕方に告知されて次の日の朝に供託し、供託書のコピーを持って裁判所に行き仮差押決定正本を裁判所の窓口で交付送達してもらうまでの一晩あずけていただけですが。
上記のことに気をつけておけば、あとは市販の実務の本を見てつつがなく申請がかけられると思います。今回は第三債務者の送達先が関東だったため、速達で送達をかけてもらう上申書を出して270円の切手を追加しておいたところ、決定が出た次の日に第三債務者方に送達され、第三債務者-債務者間でなんらかの騒動が発生し(ま、狙って引き起こしたとも言えますが)、結果として債務者からの未払い金一部支払いと和解の合意につながった、ということです。
この8月1日に創業8周年を迎えました。9年目の最初に出した申立が予想を超える好結果となり、たいへん満足しています。
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