給料未払い:今月3件目の無料法律相談
僕が司法書士として簡裁訴訟代理権をとってよかった一番のことは、民事法律扶助による無料の法律相談を事務所で受けられるようになったことです。
依頼誘致のための無料相談なんか(当事務所には)ない、という立場を取りつつ、個別に必要性が見える案件には実は(事務所外の制度に根拠をおく)無料の相談がある、というダブルスタンダードな提案ができるのがとても居心地がよろしい(笑)
ただこの無料法律相談、相談者に費用負担を求めない法律相談というだけであって僕は法テラスから1件5250円のお金をもらっています。そのために、この制度が利用できるか否かは所定の基準(相談希望者の収入および資産の額)によって決まるし、内容も相談時間は30分程度を目処とするといった制限はあります。
…まぁ、ここだけの話として僕は要領が悪いので相談時間はやむを得ず40分とか50分とかにはなってますが。あくまでもやむを得ずそうしているだけです。
さてこの民事法律扶助による無料法律相談、もちろん労働紛争以外の相談もできるんですがこの事務所ではひたすらひたすら労働関係の法律相談に徹しています。
というより労働関係以外の紛争でこの相談をやったこと、この2年弱で片手の指で数えきれるくらいしかありません。一方で今月は3件、労働関係の法律相談を民事法律扶助による無料法律相談としてお受けしています。わりと順調です。
以前、他県の業界団体で研修の企画をいただいたときに『そもそも司法書士は労働紛争に関与できるのか』という問いをいただいて思わず硬直したことがありました。僕にとってはこの質問、『そもそも日本人は米を食えるのか』と同じくらいに当たり前なもので疑問の余地すらなかったのですが、立場を変えればそんなもの、なのでしょうね。
かんたんにいえば『その労働紛争がお金に換算できる要求をかけるもので、その金額が140万円以下で、簡易裁判所における手続きの利用を視野においていれば』、あとは相談者の収入と資産が所定の基準を超えなければこの事務所で無料法律相談ができる、ということにはなっています。
ただし、あくまでもこの事務所にこれる方だけが利用できることになっていますので…電話でサクッと結論を得たいよね無料で匿名でさ♪、という問い合わせには直ちにお断りの返事が出せるのも案外この事務所に合っています。唯一、出張相談でこの制度が使えないのが不満と言えば不満ですがこれはもうしょうがありません。
この無料法律相談、来所できることと収入等の要件を満たすことは必要ですが、扱える紛争の内容としては
- 毎月30万円の給料未払いが4ヶ月分→○(合計120万だから)
- 各月10万円程度の残業代が半年分→○
- 給料60万+解雇予告手当20万+残業代50万→○(『合計で』130万だから)
- 賃金や退職金の減額・罰金を伴わない懲戒処分や不当配転を撤回させたい→×
- 懲戒によって支払われなくなった給料等のお金を支払わせたい→△(請求額140万円以下なら可能)
- 不当解雇の無効を主張して復職したい→×
- 期間の定めがある契約での解雇について、お金を得る解決をはかりたい→△(140万円以下の賃金・休業手当などのお金の請求を行う場合には可能)
○をつけた事案は当事務所で法律扶助による無料法律相談が可能、△は請求額が140万円以下なら可能、×は不可、になっています。司法書士として法律相談を扱える範囲に限界があるためなんですが、なかなか妙なことになっていますね。これらの範囲をはみ出す法律相談は弁護士へ、ということになります。あえて自分で裁判手続をする意思があるひとは、これまで通りこの事務所に本人訴訟を前提とする有料相談にやってこられるわけで。
こうしてみると司法書士による労働紛争関連の法律相談は使えるような使えないような記事になっていますが、それでもシンプルな給料未払いには請求額を基準としてシンプルな判断ができますので…やればできるものなんですがね云々、と同業者様方には言い訳をしつつ、できれば毎月数件の無料法律相談を労働紛争分野でこなしていければいいな、と思っています。
でも、なんだか背徳的な気分もするんです。たかだか30~40分の相談やって5250円貰えるのが。
だってこの事務所の所定の相談料金は、2時間4000円なんで(苦笑)
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