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助成金不正受給を追え! …るか?

社会正義を目指して法律家になりました、などと声高に言う人とはお近づきになりたくない、と思っています。

しかしながら、たまになら社会正義の実現とやらに寄与するのも悪くありません。

先日、はからずも日本海岸某県財政にちょっぴり貢献してしまったのです。

ここ半年で三件ほど、補助金の不正受給を企むたわけ事業主を敵に回すご依頼がありました。そのうち一件で、試みに制度実施主体である県への情報公開請求を行ってみるようお客さまに指導したのです。もちろん労働契約に関する書類も添付書類になっているその助成金制度、書類の取得がうまくいったらその後の裁判手続きでさぞかし有利な立場に立てるだろうし、もし情報公開請求をきっかけに県側担当者が事情を把握してくれたら不正に受給した助成金の返還請求がなされないかな、という思惑がありました。

結果は、情報公開請求としては意図したとおりの結果=十分な書類を手に入れることができました。さらに、助成金の返還も一部実現されるようです。この県の労働委員会の職員さんからは当事務所にファンレターをいただいたことがあり、遠方とはいえ知ってる方が働いている県に数十万円とはいえ公金を戻してあげられるのは結構いい気分です。でも、言ってみれば堂々たる詐欺事案である本件、お金返してハイ終わり、というのは少々物足りません。

地元に新聞あるなら、プレスリリース出してやりゃいいじゃん(笑)

と人の傷口に塩を塗って炙るような助言をお客さまにしてみたりしますが…ま、さすがにそれはなさらないでしょう。

残りの二件は国からの助成金の不正受給です。おなじみの中小企業緊急雇用安定助成金の不正受給でして、類型はいくつかあるようです。この中安金、労働者を解雇せず計画的に休業させて休業手当を支給する事業主に、支給額の最大8割を助成する、というもの。不正受給がカンタンだということでラジオライフにも掲載されてしまうくらいのチャラい制度です。もちろんまじめに申請してる経営者もこれで助かってる労働者もいっぱいいるでしょうが、悪用すればまともに働くのがばからしくなるくらいのあぶく銭が国から降ってきます。

不正受給のパターンはいくつかあります。

  1. 実在しない労働者を受給対象にする。つまり支給対象になる『人数』をごまかす。
  2. 平均賃金を過大に算定する。支給対象になる『単価』をごまかす。
  3. 休業日数を過大に設定する。支給対象になる『日数』をごまかす。
  4. 休業手当の一部を労働者に支給しない。受給後の『経路』をごまかす。

ま、こんな感じでしょうか。もちろん、どいつもこいつも性根が腐ってることにかわりはありません。

このうち、類型2~4は労働者に影響が出てきます。いずれも、労働者側に休業手当が適切に支払われないという形で。その一方で、制度の適用の課程で所轄官公署に書類がしっかり残ります。

そうした書類をせしめる方法を体系化しておく必要があるのではないか、ということで、今年の自由研究のテーマを助成金不正受給…じゃなかった、助成金不正受給の追及、にしてみます。もちろんこれでお金が稼げる、というテーマではないので、成果は公開してみたいな、と。情報公開は個人情報の開示とちがって誰でも可能なので、まさに自由な研究に適するテーマです。

さしあたってはこの本を、図書館から仕入れてきました。情報公開制度の活用という点から書証の入手方法を説明しており、いろいろな類型の民事訴訟にまじめに取り組もうとする人には、一読しておくと思わぬところで役に立つ、そんな性格の本です。

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