今夜日付が、変わったら…
今日の経過をもって、ある地方裁判所で終結した労働訴訟が一件『確定』します。
確定と言っても判決をもらったわけではありません。通常訴訟として係属していたものを裁判所の判断で自庁調停に付され、調停としての期日を一回も開くことなく『調停に代わる決定』が出されたのです。この決定正本を送達されてから2週間の異議申立期間が、まず相手方会社で先週経過しました。次いで僕のお客さまである申立人について本日経過すれば、この決定が晴れて確定することになるのです。
元をたどればこの『訴訟』、請求額の関係上簡易裁判所に係属するはずだったものがあっさり裁量移送されて地方裁判所にやってきたもの。簡裁は簡裁で、地裁は地裁で、結構な『裁量』を発揮して今回の結果にたどり着きました。労働訴訟で自庁調停を見たのは、よく考えたら平成13年に僕自身が原告になって起こした訴訟で経験して以来のことで、開業してからは初めてです。
お客さまがこの決定の内容をどう受け止めているか、は後でゆっくりお聞きしたいと思っていますが、思い入れを含めないで分析した場合にはその内容、非常に興味深いものがあります。
決定主文で、『未払い賃金及び(労働基準法第114条の規定による)附加金等として、●万円を支払う』と書いてあるのです。
さらに決定が出た日を基準にして、当初訴状に記載していた請求額元本と遅延損害金の合計額を計算すると、確かに決定で支払うものとされた金額より少なく、結構な割合で附加金の請求が認められていると評価せざるを得ません。
つまり、名目的にも実質的にも決定で附加金を取ってしまった事例ということになります。確かに労基法第114条では附加金の支払いについて、『裁判所は(中略)命ずることができる』とあるだけで訴訟でなければならないとは言っていません。ただ、調停や調停に代わる決定というのは誰かに何か命じる構造を取っているのかと考えると…それはちょっと違う気もします。あくまで通常訴訟から移ってきた自庁調停であることを前提に、『原告が附加金の支払いを請求しており、裁判所としては判決でその一部の支払いを認める可能性が高いから、裁判所から被告に対して、附加金請求部分を含むことを了解したうえで請求額元本よりずっと多いお金を払えと言って反応をみることにした(ただし、あくまで調停だから当事者が蹴ったら訴訟に戻るだけ。命じてはいない)』と解するのが素直なのかもしれません。
それでも附加金が含まれていることが裁判所側からの書面で明らかになっている、ということで当事務所設立以来2例目の附加金奪取事例になるはずです(ただいま23時06分。あくまで24時の到来を待つ必要がありますが!)
しかしながら、世の安直な相談者たちには苦言を呈したいと思います。これだけ情報が広まってなお、内容証明で附加金を請求したいがどうするのか、などという間抜けな問い合わせが当事務所にもまだやってくるのです。
そういう話しがしたいなら、日曜21時からのドラマに出てきたような敷居も低けりゃコンプライアンス意識も低い●●書士の事務所にでも行ってみたら?ということで片っ端からお引き取り願っている(というよりこのレベルの相談者は、いちいち依頼を回避するまでもなく内容証明で附加金は取れませんと伝えた時点で音信不通になってくれます…さようなら♪)わけですが、今回の終結をみたお客さまにしても当初の調停から実に1年半のたたかいを経てようやくこういう結果にたどり着いたのです。附加金を取るのは実は難しいのだ、という正しい知識がなぜ広まらないのかよくわからないのですが、この分だと今後も広まらないような気がします。むしろこの分野で仕事を集めたい弁護士や司法書士の事務所が、『割増賃金の未払いには附加金が請求できます』などという甘~いセールストークの広告を地下鉄車内に打ちまくる未来のほうが先に来てしまいそうで、少々憂鬱ではあります。
- 附加金が取れれば勝ちというわけでもないし、
- 附加金が取れなければ負けというわけでもない。
- 内容証明で附加金を請求しようという発想には同意しないけど、
- あえて取れない附加金請求を訴状に載せて戦いを挑むときもある。
…で、その結果?そりゃお客さま次第、ってもんでしょう。だって僕自体、昔やった自分自身の労働訴訟の結果がまだ総括できてない(失笑)
まぁ、いずれお客さまのなかでこの決定に対する評価が定まる日がくるならば…これは是非聞いてみたいものですね。
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