連鎖販売業者を第三債務者とする債権差押命令申立について
1.はじめに
連鎖販売取引(マルチ商法またはマルチレベルマーケティングと、本稿では厳密に区別しません)に従事する人となんらか紛争に陥った結果、その人から強制執行で債権回収を図れる状況になることがあります。
具体的には連鎖販売に従事する人(本稿では、以下でディストリビューターと言います)に対する不法行為、場合によっては下位のディストリビューターから上位のディストリビューターへの損害賠償請求も考えられるでしょうし、未払いの家賃・未回収の貸金・養育費を請求する相手の主たる職業、あるいは副収入が連鎖販売取引によるものだ、ということもあるでしょう。
特に連鎖販売に従事して(ディストリビューターとなって)得られる収入が債務者の主たる収入である場合には、『連鎖販売業者がディストリビューターに支払う報酬』について債権差押命令申立を行うことが当然に考えられます。ところが、この際に差押債権目録のかきかたをどうするか、が問題になります。少なくとも市販の書籍等には記載例を見いだすことができません。これが直接の理由とは考えたくないのですが、この申立書類作成を断った弁護士および司法書士も存在すると聞き及びます。
そこで本稿では、日本アムウェイ合同会社を第三債務者とし、同社のディストリビューターを債務者として、同社がディストリビューターに支払う小売利益および各種ボーナスに対する債権差押命令を申立てる際の差押債権目録の記載について説明することにします。
2.おことわり
本稿では、日本アムウェイ合同会社が採用する商法いわゆるアムウェイ・ビジネスの当否についてなんらの積極的消極的判断をするものではありません。
ただし、一応合法的なものと仮定しておかないと債権差押命令申立には馴染まない可能性があります。なんらかこの営業形態に情緒的反感をお持ちの方は、一応それは保留して淡々と手続きしてくださることをお勧めします。
3.当事者目録・請求債権目録の記載について
これは通常の債権差押命令申立となんら違いはありません。本人申請をする人には合同会社を第三債務者とするので、株式会社と違うことだけ注意してもらえればよいと思います。
4.差押債権目録の記載の具体例について
以下の記載が絶対に正しいわけではありませんが、これで差し押さえるべき債権の特定を欠いてはいないと考えます。なお、下線とそれに続く【】内に付した番号は解説のためのものです。下線ならびに【】とも記載には必要ありませんので、本人として書類を作る際には注意してください。
差押債権目録
金●●万●●●●円
ただし、支払い方法を各月末日締め翌月18日払い【1】と定めた、債務者が第三債務者の販売員(ディストリビューター)として、第三債務者が販売する商品の訪問販売または販売のあっせんを行うとともに、新たなディストリビューターの応募の勧誘および自らが勧誘したディストリビューターの指導育成を行って特定利益を得ること【2】を内容とする連鎖販売契約に基づき、債務者が第三債務者に対して有する本命令送達の日から平成21年×月○日【3】までに支払を受けるべき下記の特定利益債権にして、支払期の早いものから順に、支払期の同じものは下記の順序で【4】、頭書金額に満つるまで。
記
債務者が受ける特定利益の内訳
1 小売利益
2 成績別ボーナス
3 リーダーシップ・ボーナス
4 パール・ボーナス
5 インターナショナル/フォスター・リーダーシップ・ボーナス
6 ワンタイム・キャッシュ・ボーナス
7 ステージ・ボーナス
(8以下を必要に応じて追加)【5】
以上
なお、全般的に記載がくどい、と同業者の方は考えたかもしれません。しかしながら申立書提出段階で質問も補正もなくあっさりと受理された(事情により、それを狙う必要がありました)ので、これはこれでよいのではないかと思います。もう少しシャープな記載で手続きをクリアされた、という経験者の方がおられましたら、是非教えてください。
記載事項の注意については、後日また説明します。
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