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終着駅へ、呑みにいこう

 博多湾はその北東側を、志賀島・海の中道によって玄界灘から守られています。志賀島への陸路での入り口である西戸崎までは、JR香椎線が走っており、博多からは鉄道なら約40~50分。一昨日は博多市内ではなく、西戸崎から一駅手前の海の中道駅にほど近いリゾートホテルに宿をとりました。

 さて昼間なら海の中道海浜公園が開いているのですが、夕方になると食事どころか何か買い物ができる事業場が泊まってるホテルしかなくなります。このホテル、立地とお部屋は素晴らしいのですが晩ご飯一食についてビジネスホテル一泊分程度の料金を設定しています(朝食が2000円、といえば想像していただけるでしょうか)。晩ご飯を食べに列車で九州本土側=香椎まで出るには少々時間がかかるので、終着駅側へ、西戸崎に行ってみることにしました。

 折しも、雨が降り出したところ。小さな傘しかもっておらず、バスもタクシーもない終着駅です。強いて直ちに乗り換え可能な交通機関としては福岡市営渡船が博多市街方面へ運航されていますが…さすがに雨のなか小さな船に乗ってまで中洲に出たいとも思えません。困りました。

 ご飯を食べる店の候補は、たった一つだけあります。駅の右側、徒歩30秒のマンション1階に。

『かいちゅうしじょう』?

 そうした店名の、どうやら居酒屋さんのよう。どうみても地元の人のお店で、30人ほどが入れようかという店内はなかなかの入りです。まぁ仕事も終わったことだし新しい仕事ももらったし、一杯なら呑んでもいいかな、と思って…失礼ながらあまり期待せずに入ってみました。どちらかというとご飯が食べたい気分だったのです。

 示されたメニューに、気になるものがありました。

  •  1000円コース(3~4品)
  •  1000円定食(肉または魚、小鉢・サラダ・ご飯と味噌汁)

 なるほど、おまかせになるのね。こりゃ面白そうです。徐々にのってきました。なら料理の点数が多いほう=1000円コースを選択します。併せてエビスビール中ジョッキを選択したら、すかさずこう尋ねられました。

 「お酒のつまみみたいなものがいいですか?」

 いいえ、と答えてみます。もし、はいと答えたら何が出てくるのか想像して、さらに楽しい気分になってきます。最初に出てきたのは鶏肉と大根の煮物。続いてお魚と野菜の天ぷら。いずれもやさしい味です。このお店は当たりだ、と気をよくして楽しんでいたら、いなせな兄さんがカウンターの向こうから聞いてきました。

 「おなか、すいてますか?」

 はい!と答えます。即答で。
 直感しました。このお兄さん、プロフェッショナルです。労働者の意向を汲んで準備書面の調子が変えられるタイプの人、と言ってもよいでしょう。僕はまだこの域に達していません。この間合いには正直、憧れます。

 その後すぐにでてきた鰹のたたきはニンニクがきかせてあってこれまた素晴らしかったのですが、これは彼の仕掛けではないはずです。期待しながらさらに待っていたら…

 でてきました。サイコロステーキが。しかも定食のメインになるだけの物量で!で、これが

 おいしいですか?

 やはりカウンターの向こうから楽しげにこっちを見ている、赤いエプロンのお兄さんと目があいます。そう聞かれました。

 おいしいです!(さきほどのお兄さんに)そう伝えてください。

 昼間発揮しない力強さで応える旅行書士。そのお兄さん、このコースの締めくくりだと断ってさらに付け加えます。

 「実はあんまりおいしそうに食べてくださるんで、この人になら聞いても罰があたらないんじゃないかと…」

 ってかこの店の飯がまずい、という奴がいたら即決裁判で銃殺しても特に問題はないかと思うんですが、とまでは言いませんでしたが、これほどの物を無感動にいただくほうが僕には苦痛です。エビス中ジョッキさらに一杯追加。1000円とは思えない量と質のお料理に、一人で迷い箸を続けながらふわふわと酔いを深めていきます。向こう側のテーブル席では、どうやら宴会の中締めの様子。時間がオーバーしてるが店主の好意で延長中…だとか。なるほどなるほど。

そうしたところ、別のお兄さんがもう一品を僕のテーブルに。鳥の唐揚げにタルタルソースをつけていただけ、ということのようですが…?聞けば

 「あの赤いエプロンのひとから、プレゼントだそうです。食べてる笑顔がとてもステキだ、ということで」

 わーい♪

 と躍り上がりたい気分を数秒保留して、丁重にお礼を申し上げます。

 謹んでいただきます。と。

 揚げたての唐揚げにタルタルソース、これは実にいい!これは初めてです。お酒と料理で2000円で、文字通りお腹いっぱいに楽しんで店を出たことでありました。

 ところでこの素敵なお店の名前、確かめずに出てきてしまいました。

  •  かいちゅうしじょう、なのでしょうか?
  •  それとも、うみなかいちば?

 心あるお客さま、どなたか西戸崎まで呑みに行くことがありましたら、聞いてきていただけませんか?僕も機会があれば、また行ってみたいと思っています。きっと季節がかわるごとに、なにかおいしいコースメニューを並べてくれるに違いありません。

おいしい街、博多への次回出張は、7月6日です。

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コメント

こんな気の利いた店、いいですよねぇ。
三重にも一軒、ありますよぉw。
そこは、7月7日で14周年を迎えることができました。
また、近くに来たときは顔、だしてくださいw。

海中市場(うみなかいちばと読みます。)鶏唐にタルタルソースを付けたり、かけたりして食べるのは宮崎名物チキン南蛮です。海中市場の電話番号分かりますよ。

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